2006年3月26日、佐賀県の古川知事の「プルサーマル計画の事前了解」に対する抗議以来、佐賀県や九州電力、国に対しての要望、質問、抗議、また広く市民に向けた広報、啓発活動を行って来ました。その数は100を超えます。
これほどの活動をしても、佐賀県や九州電力や国は、プルサーマルに対する私たちの不安を取り除いてはくれませんでした。
これは、私たちが裁判という手段に辿り着いた、これまでの活動の記録です。
(2010.3.3)
現在、稼働中の玄海3号機で使われているMOX燃料についてその安全性を問う裁判をスタートさせようという集会が、2月21日佐賀市の教育会館で開かれ約80人が参加しました。
裁判の争点は科学的には大きく2点。1つ目は「現在、玄海原発で使用しているMOX燃料が粗悪品なため燃料を覆っている被覆管に損傷を起こし、結果、住民に被害をもたらす」
2つ目は「使用済みMOX燃料の行き場がないため、玄海原発の敷地内に半永久的に据え置かれる可能性がある」ということです。
美浜の会の小山英之さんのより詳しい説明によると、「MOX燃料の焼結過程で、蒸発性不純物を追い出しきれていない」ことにより、「運転中に被覆管とペレットの間が空くギャップ再開が起こる」その結果、「熱によりさらにガスが放出され、間隔が広がるサーマルフィードバックが起こる」というシナリオが考えられるようです。
これらを裏付ける証拠として、公開されている文書から「ウラン燃料の基準より蒸発性不純物が多く含まれていること」「燃料を製造するメロックス社の要望で基準が決まっていること」「国には制限値がないこと」などが数字を含めて、挙げられました。
裁判では九電は、このシナリオを反証しなければならず、黒塗り、白抜きの文書に何が書かれてあるのか、見所の一つかと思われます。
法的には、この裁判を担当する冠木弁護士が、「人格権を争う裁判であること」を宣言。燃料の持つ危険性が周囲の住民に被害を及ぼすことが、争点の一つあると話しました。さらに原発の多重防護の脆弱さにも言及し「5重の壁というが、被覆管が破れてしまえば、水蒸気爆発を起こす可能性もある」と指摘しました。さらに私たちの子どもや孫にも使用済みMOXという負の遺産を残すことも、法廷で争う構えです。
訴えは3月末に行われます。「原告団」と「支援する会」をつくりました。どうか、私たちに手を貸してください。(T)
「普通の暮らしがしたいだけです」。この日、原告団の団長に就任した石丸初美さんの声に会場の多くの人たちがうなずいた。
当日は、九州各地から、また同じプルサーマルの問題を抱える愛媛、新規立地にゆれる上関からゲストが集まった。
「米軍基地問題と本質は同じ」(佐賀、徳永さん)、「経済から自然へ」(福岡、荒川さん)、
などのほか、「プルトニウム爆弾の被爆地として許し難い」(長崎、川原さん)といったエールが送られた。
原発現地である鹿児島の向原さんは3年間の海水温度測定や県の資料を元に、「九州電力のやっていることは嘘ばかり」と報告した。同じく県議会でねばり強くこの問題に取り組んできた愛媛の阿部さんも「耐震基準で擬そうがあるにもかかわらず、国、県が強行し、議会制民主主義が崩壊した」と述べた。
上関原発に反対し、シーカヤックで海上から抗議していた岡田さんが「中部電力から4800万円の損害賠償請求を受けている」と報告すると、会場から「それはひどい」の声が上がった。また京都のアイリーンさんからは海外からのメールが紹介され、「アレバ社の問題を暴露することは国際的に重要」と改めて問題の大きさを確認させられた。
当日は全国から23通の激励メールも寄せられ、佐賀がまさに「フロント」にあることを実感。締めは「支える会」の会長を快く引き受けていただいた高知県東洋町長の澤山さんが「町が高レベル廃棄物の捨て場になりかけたが、(選挙で勝って)防いだ。町の条例に基づいて、全国の原発現地を回っている。一円でも多く裁判費用を集めたい」と結んだ。(T)
コラム
「玄海原発プルサーマル裁判2・21集会」「裁判」の2文字に緊張感が漂っているだろうと重い足取りで入った会場。しかし、不思議となぜか和やかだった。
受付の女性たちも始終笑顔が絶えない・・・
聞く耳を持たない国や行政、電力会社に対しての最後の手段に挑むにしてはこの温かい空気は何故だろう。
正面に飾られてる折鶴の束。レジメの中にも折り紙とお願い文が入っていた。
1月29日7時7分。川内原発での火災(感電)事故。死亡1名、全身火傷の重症者2名、軽度火傷4名。折り鶴はこの事故の犠牲者に対するものだった。意識は戻ったもののまだICUから出られない作業員とその家族の希望のために!と回復を祈りながら折り鶴を折る人の姿があった。
壁には裁判に立ち上がった勇気ある行動に激励のメッセージが全国各地から届いていた。
会場の至るところには「カンパ箱」。書いてあるメッセージに思わず唸ってしまう。『不信MAX いらんMOX 募金BOX』
そして片隅に寄せ書きバナーが置いてある。
上関で新規に原発建設の話がある。その抗議行動の中で、怪我をして救急車で運ばれ5日間の入院治療したと言う若者岡田和樹さん(23歳)と仲間や作業員計4名が中電から4800万円の損害賠償を請求されている。被害者が被告人扱いと言う理不尽さに苛立ちは膨らむ。25日から一週間、中電前でテントを張って抗議する岡田さんにエールを贈る寄せ書きバナー。
いよいよ九州各地からのアピールに続いて小山氏の裁判に訴える為の争点についての説明。専門的なことは難しいが今日も懸命に説明される姿に感動、そして感謝感激である。今回で佐賀に出向くことなんと10回。大阪からである。並大抵なことではない。
同じく京都グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん。ともに献身的な行動には頭が下がる。佐賀県庁・九電本社に対する抗議行動でも共に闘い支えてくださる姿にはいつも言葉に出来ないほどの感謝だった。そんな彼女の姿に憧れている女性は少なくない。
支える会の会長はあの高知県東洋町の澤山保太郎町長である。江藤新平のことをずっと心に留めて、「今こそ佐賀を守りたい」と熱い想いが伝わってくる。
佐賀に続くプルサーマル予定の愛媛県伊方原発の地元で反対している阿部悦子議員と支援者大野恭子さんが駆け付けてくれたのも初めてではない。
原告団団長は佐賀での中心になってこれまで粘り強く闘って来た石丸初美さん。彼女を支え、ともに闘ってきたメンバー「がばいおばちゃんパワー」も揃っていた。
佐賀県知事と九電本社そして経産省、原子力保安院どこへ行っても不信感は募るばかり・・・数え切れないほどの挫折感と屈辱感そしてイヤと言うほどの理不尽さを味わいながら闘って来た。
しかし、今日の石丸さんにはあの苦しかった時の表情は消えていた。忙しく立ち振る舞っているが希望に満ちた溢れんばかりの笑みが印象的だった。正に「腹をくくった者」の余裕の笑みである。それは闘い抜いた結果の余裕である。
美浜の会代表小山氏、高知県東洋町長の澤山町長そして冠木克彦弁護士。熱い信頼を寄せている3人が見事に勢ぞろいした。
新たなスタートとなるこの会場の空気が清々しく温かい彼女の溢れる笑みの源はそんなところからだろう。今後一人でも多くの人が自分の問題として考えて欲しい。
更に石丸団長に続くべく、この裁判闘争に腹をくくる勇気ある「あなた」と共感して支えようと立ち上がるそんな「あなた」に期待したい。(K)
(2010.2.23)