1月24日(金)、佐賀地裁において、裁判の会の提訴した4つの裁判の公判などが行われました。
地震動評価の「武村式」を訴状に盛り込んだ「行政訴訟」初公判、裁判官が科学的問題に立ち入って質疑応答する「MOX弁論」など、非常に中身の濃い1日となりました。
裁判に際して、応援メッセージをいただいたみなさま、ありがとうございました。
みなさんとのつながりの中で、私達はここまで歩んでこれました。
また、私達の裁判は、いつも大阪からはるばる佐賀までお来しいただいている冠木克彦弁護士、武村二三夫弁護士、大橋さゆり弁護士、谷次郎弁護士の4人の弁護団、そして、裁判特別補佐人、われらが小山英之さん(美浜の会代表)という最強チームのご尽力があったからこそ、ここまで闘ってこれました。あらためて感謝申し上げます。
以下、報告します。
裁判所前アピール
この日、傍聴には、佐賀、福岡のみならず、大分、長崎、熊本、高知からも仲間がかけつけてくれました。
裁判所前でのアピールでは、新旧様々な横断幕が掲げられました。
「怒」一文字の横断幕は一際目立っていました。私達に今、必要なのは、「怒る」こと。
「愛を込めた怒り」です!
また、福島と全国各地の仲間から寄せられた応援メッセージもボードにして掲げられました。
玄海行政訴訟初公判
まずは、原発政策の本丸、国・原子力規制委員会に対して玄海原発の運転停止命令を出せと訴える行政訴訟の第1回口頭弁論。
佐賀地裁に集まった仲間は、全国36都道府県と韓国から384名の原告の気持ちとともに原告席に着きました。
11月13日に提訴した訴状(44ページ)のポイントは主に2つ。
「福島の放射能汚染水のように、重大事故時に放射性物質の放出を防ぐ措置がまったく不十分であること」
「基準地震動の設定が二重基準によって過小評価されている。現行の入倉式ではなく別の武村式という計算式では現行の4.7倍の大きさになり、機器・施設の耐震安全性がまったく成り立たないこと」
裁判の冒頭、冠木弁護士は、地震動の問題について、土木学会でも用いられている武村式では4.7倍になることを指摘したうえで、「地震は平均値で起きない。一番でかいやつがくるのを想定しなければならない。規制委員会でもようやく議論されたが、無視されようとしている。また、まだ審査が終わっていないのに、規制委員が『夏までに稼働できる』などと言うのはおかしい。これらに大きな危惧をもって、今回提訴としたところである」とピシャリと指摘しました。
被告・国は、1月10日付の答弁書で「原告の請求を棄却することを求める」とだけ回答してきました。
法廷では、弁護士ではなく、福岡法務局訟務部の職員ら9人が被告席に着き、
「訴状はたくさんの専門的内容があるので、反論する準備書面は3か月後ぐらいにしてほしい」と述べました。
提訴から2か月経って、さらに3か月後に反論してくるとは!
時間稼ぎ作戦は権力側の常とう手段ですね。
そして、石丸初美・原告団長が意見陳述に立ちました。
「私たちが訴えているのは、特別な問題ではありません。人間として生まれ、大自然の営みに囲まれて、成長し、子どもを生み育て、日々の暮らしを繰り返し、初詣には『どうか家族元気に過ごせますように』と普通の生活を守るための訴えです。ただそれだけです。」
「今を生きる大人の責務としてこの国の不条理を正し、私達自身が再び原発加害者とならないように裁判に訴えました。」
プルサーマル以来8年間、地べたを這うように行動して感じてきた思いを、また、原発のない社会を願うみんなの思いを、涙をこらえながら、しっかりと陳述しました。
第7回玄海「全基運転停止」公判、第11回玄海2・3号機「仮処分」審尋
お昼は、裁判所近くの事務所で、みんなでおにぎりを食べて腹ごしらえ。初めて来られる方も多く、事務所はプチ交流会の場となりました。
そして、午後は2つの裁判がありました。
九州電力を被告とする全基公判、仮処分審尋ともに、具体的危険性として、3号機ではすでにMOX裁判でMOX燃料の危険性を取り扱っていますが、1号機の脆性破壊、2号機の配管損傷問題を論点としてあげています。また、3.4号機の危険性は行政訴訟でも指摘した内容がこちらの裁判でも連動してくることになります。
九電も反論してきていますが、特に1号機について専門家の証人調べになるかどうか注視していきたいと思います。
いずれも、ひとたび動かしたら、とんでもない大事故になりかねません。
具体的危険性があるので、玄海原発を絶対動かしてはなりません!
MOX裁判第2回弁論準備手続
そして、最後に、九州電力を被告とする玄海3号機プルサーマル裁判の争点整理のための「弁論準備手続」という、裁判官が原告被告双方に対して質疑を行う「学習会」のような会合の2回目が2時間半、行われました。前回同様、九電側は技術社員が、原告側は小山さんがパワーポイントで説明した後、質疑となりました。
前回の手続きの後、裁判官が計算式の根拠や具体的数値などの質問を再度ぶつけてきました。その質問に答える形で、九電は三菱重工製のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料のあるデータについて、これまで秘密にしていたものを、少しだけ出してきました。一歩前進です。
しかし、このデータについて、九電は「閲覧制限」の申し立てを同時にしてきたので、ここで詳しく示すことができません。
安全にかかる情報をなぜひたすら隠すのか、腹立たしい限りです。
法廷闘争、法廷外の運動のチカラで、命を危険にさらす「秘密主義」を突破しなければなりません。
また、こんなやりとりもありました。
九電が出してきた限られたデータを、原告は物差しで測って読み取り、統計的な傾向をつかみ、それを基にMOX燃料の「ギャップ再開」(=燃料棒溶融が始まる)の危険性を指摘しています。
すると、九電は「それは単なる傾向だから、細かい話に使うのは無理だ」などと言ってきました。
燃料棒被覆管にかかる圧力の0.1単位の違いなど、非常に微細な問題が大事故になるからこそ、安全の確認のためには、具体的なデータの開示が必要なのです。九電は「安全」というなら、データをすべて公開して「安全」を証明しなければいけないはずです。まったくナンセンスな態度です。
原発裁判で、こうした専門的なやりとりが交わされるのは「もんじゅ」裁判以来だそうです。
裁判官が書面をじっくり読み込み、自身の判断をしっかり下そうとしているようにも見えます。
あと1回、こうした場が持たれますが、裁判官が市民目線で良識ある判断を下すよう、しっかり見届けたいと思います。
MOX 年内結審へ!
そして、MOX裁判の9月結審までの日程が決まりました。
3月13日(木) 13時30分~MOX第3回弁論準備手続
4月18日(金) 13時30分~行政訴訟
14時~ 全基公判
14時30分~仮処分審尋
15時~ MOX弁論準備(証人申請など確認)
5月30日(金) 14~15時 MOX証人申請
7月18日(金) 10~16時 MOX証人尋問
9月19日(金) 14時 MOX最終準備書面陳述、結審。
7月18日に5時間かけて行われる「証人尋問」が大きなヤマ場になりそうです。これは公開の場で行われるはずですから、ぜひとも傍聴におこしください!
核燃料サイクルのつなぎとしての危険なプルサーマルは、佐賀の地で、日本で最初に始められてしまいました。
私達は、やむにやまれず裁判を始めざるをえませんでしたが、3.11福島大事故も経て、なんとしても、裁判で勝利しなければなりません。
「再稼働」へ向けた急展開が予想される中での、4つの裁判闘争です。
法廷の外でも運動を強め、全国のみなさんといっそう連携を深めていきたいと思います。
「普通の生活」を守るために!
よろしくお願いいたします!
テレビ報道
意見陳述した石丸初美団長の思いを字幕付きでしっかりと伝えてくれました。(ニュース前半は「佐賀県議会、原発推進派・奈良林直氏招致」のニュースです)
STS↓
NHK↓
石丸団長の意見陳述
裁判書類はこちらです
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