2014年3月13日、MOX裁判について「裁判所による被告・原告間の争点整理のため質疑会合」が行われました。昨年11月、今年1月に続く3回目の今回で最終回となりました。非公開のやりとりは通算約10時間に及びました。
この会合では、裁判官の質問に対して原告・被告双方が回答プレゼンを行い、基本的には「裁判官と原告」および「裁判官と被告」が質疑応答をする場であり、原告と被告が互いに反論をしたり意見のやり取りすることはできないことになっています。それでも、両者の直接的やりとりが自然と起こる場面が何度かありました。
13時30分、今回も被告九電に対する質問への回答から始まりました。説明回答者は前回同様に、九電本部の技術担当課長級の方でした。全員に資料を配布して、且つ、それをスクリーンにも投映しながら説明を続けるのですが、28ページに及ぶ資料「原子燃料の安全性について」を裁判所から指示された図やデータ表などを交えて説明されました。しかし、説明というものの資料に書いてある文をほとんどその通りに、ときに執拗に同じ言葉を繰り返し使い(資料がそのように意識してか書かれている)読み上げていくものでした。
また、MOX燃料は何といっても最初から安全に作ってあるので、原告が言うような「ギャップ再開⇒メルトダウン⇒蒸気爆発(原子炉容器破壊)⇒被覆管及び燃料溶融⇒水素爆発(格納容器破壊)⇒メルトスルー⇒放射能大量放出」など絶対ありえないと言い切るモノでした。言い換えると、「それは最初から燃料は事故を起こさないように設計し製造しているし、国の厳しい審査をくぐり抜けてきたから証明もされた、この安全性は信じてもらうしかない」と、ただ叫んでいるだけなのです。これまで、その設計と製造と審査(自主検査も含め)の内容を明らかにしろ!と再三再四質問要請されてきたにもかかわらず、相変わらずの回答姿勢が最後まで変わることがなかったのです。裁判官3名もそれが分かっていないはずはないと思いますが、表情や態度は平然としたもので掴むことは出来ませんでした。とにかく、この長い九電の説明は、約75分でした。
ここで休憩10分を挟んで、次は原告の説明の番で原告補佐人・小山英之さんが、約50分で説明しました。裁判所の双方への質問の要点を示しますと以下の通りです。
1)ギャップ再開が起こると、燃料が溶融し蒸気爆発する危険がある、また燃料が大量に溶けると原子炉容器が破壊、燃料被覆管も溶けて格納容器も水素爆発破壊となる、この過程を説明せよ。(双方に)
2)設置変更許可申請書および輸入燃料体検査申請書において行った燃料棒内圧評価と出力履歴について説明せよ。(被告に)
3)燃料集合体が同時に溶ければ、原子炉容器が確実に破壊される機械エネルギーが生まれるという原告、対して歪エネルギーの値を超えても変形が進むだけで、原子炉容器が破損するわけではないという被告。それぞれ説明せよ。(双方に)
4)MOX燃料の設計製造の安全性について確認十分されているので、ギャップ再開は起こらないというのか?(被告に)
5)使用済み燃料ピットの安全性から、燃料落下や臨界の保全を説明せよ。(被告に)
6)「MOXは使用してはならない」という裁判の中で、使用済み燃料の処分方法・廃棄方法が無いことがどういう位置付けになるのか?説明を。(原告に)
小山さんの説明は、言葉を分かりやすく挟みながら、裁判官が本当に訊きたい個所とその質問の意味を十分に理解しつつ、その資料から要点を引き出し回答されていました。被告の自分勝手なプレゼンとは全く違って、3回の会合を通じて、決してひいき目ではなく、解りやすさで輝いていました。事実を究明したい、事実を知りたい、また立証したいと願う私たちの姿勢を十分に表して伝えて戴いたのです。小山さんと弁護団の皆さんに感謝の気持ちで一杯です。
両者の説明が終わってからそれらを対比させて、裁判官から再質問がありました。ここが両者のプレゼンを聴いてどう思ったのかを窺がい知る一番大事なところでしたが、質問は穏やかながら多くの疑問点は被告に向いていたように感じました。
これらをまとめると、次の一点に行き着きます。
★MOXとウランは、本当に同じ挙動するのか?<原告は「両者には違いがあるのでギャップ再開という危険があるし、炉心溶融事故が起こりうる」と言い、対して被告は「同等であるから、ウランのデータで十分だし、事故はギャップ再開も起きない」と主張している>
☆では、「安全に設計され製造されたという玄海3号MOX燃料の実測データは、ないのですか?」との裁判官の素直な質問に対して⇒被告は「玄海3号のMOXの実測データは、存在しない!」⇒MOXとウランは同等だから、適切なる予測のFINEコードによって検証しているという。
★裁判官の姿勢が端的に出たのが内圧評価値のデータ問題です。本来なら輸入燃料体検査申請書で評価された内圧挙動を用いてギャップ再開を論じるべきところ、その内圧挙動グラフは完全白紙にされています。そのため原告はやむなく、そのことを断った上で設置変更許可申請書のグラフを使わざるを得なかったのです。ところが被告は最新の準備書面13でそのことを批判してきました。今回、裁判官はそこを捉えて、被告がそのように言うのであれば、輸入燃料体検査申請書の内圧グラフを公開できませんか、と尋ねました。被告は数名で長らく鳩首会談をしたあげく、それは企業秘密ですといったんは答え、その後再度鳩首会談をしてようやく「検討させてください」と答えたのです。
争点整理会合後、佐賀県庁記者室で記者会見を行いましたが、原告弁護団は、3回を終えた感想として、裁判官がプレゼンを取り入れたことなどを評価した上で、以下の三点を挙げました。
1)裁判所は、記録をよく読み込んでいた。
2)事案(訴状)の本質を理解した。
3)異例の非公開〜争点整理手続き会合を開催したこと
<★原告としては、裁判所が「輸入燃料体検査申請書にある内圧評価置の挙動データに十分な関心を持った」上で、会合の中で「商業秘密とする被告データを求めた」ことを成果と考えている>
私たちも原告席から、毎回準備書面のやり取りを聴いてきましたが(途中に裁判所の人事異動で裁判官が交代もありました)、原告弁護団の本気度が伝播して、当初からみると司法側に何か一段の進歩のようなものを感じられるのは、ただ気のせいではないと思うのです。
次の4月18日は、いよいよ争点と論点の最終整理に入り、付け加える意見があればまたここで提出となります。5月30日までに公判で述べる証人を最終決定して申告します。
そして、7月18日の証人尋問という最後の舞台を迎えることになり、特に何もなければ9月19日で結審になるでしょう。
みなさま、これからもご支援ご協力をどうぞよろしくお願いします。