5月19日(月)、玄海原発避難計画、避難先の市町の『過密状態』について、記者会見を行いました。
以下、発表用レジュメです。
発表用レジュメ
2014年5月19日
【記者会見】 玄海原発避難計画、避難先の市町の「過密状態」について
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
避難先は1人あたり2㎡のぎゅうぎゅう詰め。
避難先人口の3割4割、多い所で8割(太良町)の市町も。
玄海原発避難計画は机上の空 論、数字合わせ。
"ワーク"(古川知事)しません!
最悪を想定した、住民を被曝から守る実効性のある避難計画がなければ、再稼働はありえません!
●1.はじめに
玄海原発事故時の「避難計画」では玄海原発30キロ圏内の佐賀県19万人、長崎県51000人、福岡県15000人の合計約26万人がいっせいに避難することになります。
佐賀県内では唐津市約12万9000人、伊万里市約57000人、玄海町約6300人の3市町19万人が、県内の他の17市町に避難するというのが佐賀県の方針です。
避難は受入先があって初めて成り立つものですが、実際の状況を知るために、避難先となる17市町と、避難元の3市町に対して、4月14日の佐賀市を皮切りに質問と要請を行ってきました。
文書回答もいただきはじめ、集計 作業をしているところです。
質問に際しての面談などで、すでに多くの問題点が判明してきましたが、今日は、避難先が市町全体としても、1つ1つの避難場所としても、過密状態になる問題について、ご報告いたします。
なお、全市町からの文書回答を受けての最終的な報告は後日あらためてさせていただきます。
●2.集計方法
お手元に避難人数の一覧表をお配りしました。
唐津市の避難計画は2013年4月1日付、伊万里市の避難計画は2012年4月30日付のものを取り寄せて、避難先市町別に人数を確認しました。それを避難先の人口で割って、比率を出してみました。
また、各施設ごとに収容可能人員が出ているのですが、これも足し合わせて、避難人数を収容可能人員で割って比率 を出してみました。
なお、玄海町はすべて小城市に避難することになっています。
●3.受入先人口に対する比率
30~40%あたりが多いですが、これは大変な数字です。
特に酷いのが太良町。人口の8割もの人が伊万里から避難してくることになります。1万人の町に8000人!
太良町の担当者「人口10000人の町に8000人が避難してくる?・・・知りませんでした。数百人と思ってました。物理的に無理ですよ。認識が浅くて、すみません」。
私達は数字にびっくりしましたが、原子力防災担当者が数を知らないことにさらにびっくりしました。
こうしたこともあり、一覧をつくってみようとなったのです。
以下、市町の担当者の声です
「県から防災担当者会議で『あなたの町はこの 人数をよろしく』と打ち合わせもなく言われた。事前に受け入れ可能人数を聞かれていたかと思うが、通知をもらって、終わっている。具体的に何を準備するとか、そういう話はない。避難元とも話は何もない。」(太良町)
「大雑把も大雑把な数字しかわからないが1万を超えない。数千人だ」(佐賀市、4月14日の口頭回答ではこう答えたが、実は44000人を受け入れることになっている)
「人の振り分けを佐賀県がしただけなので」
私達は福岡の仲間と、糸島市の避難者を受け入れる福岡市にも質問に行きましたが、福岡市は福岡県から「15000人を受け入れてくれ」と言われて「それは無茶だ」と突き返し、周辺市町にも分担してもらって9500人になったそうです。人口150万の福岡市が、です。避難者の暮 らしを預かることは大きな責任が生じるので、まっとうな反応です。佐賀県内の市町でそういうことを県に言った自治体はありません。
●4.収容可能人員
1つ1つの避難場所がどういう状態になるか見てみようと、避難者数を「収容可能人員」で割ってみました。
平均で95%、鍋島公民館は125パーセントにもなりました。
「収容可能人数」をどうやって出しているのかを確かめると、どの自治体も1人あたり2㎡で計算したとのことでした。畳1畳分です!文字通りぎゅうぎゅう詰め状態です。
受入れ市町に、建物の中のどの部分を計算に入れているのかたずねてみたところ――
「公民館、体育館などの平面になっている部分を計算。教室は入れていない。」(佐賀市)
「はんぎ ーホールのフロアのイスはとりはずす」(神埼市)
「調理室、事務室も入っている」(吉野ヶ里町)
「トイレとかはのぞいているが、詳しく分からない。今、毎日忙しいので、5月いっぱいはお答えできません」(小城市)
「1人2㎡で計算。要援護者、福祉避難所は4平米ということで、県の会議で一定の基準みたいな話があった。事務所とか調理室はいれていない」(多久市)
また、いざ避難所となった場合に、通路など共有スペースを確保しなければなりませんが、どの市町も計上していませんでした。県内にすべて「収容できる」ように無理やり数を合わせたと言えるのではないでしょうか。
●5.避難期間
過密状態の避難がどれ位の期間続くことになるのか、市町に尋ねる とほとんどは「想定していない」と回答しました。
「まずは一時避難しか想定できない。長期避難は検討している。現在進行形です」(佐賀市)
「期間の想定はしていない。県からはとにかく数字を出せと。とりあえず30キロから外に出そうということ」(武雄市)
「避難受け入れ期間について、現時点での想定はなく、状況によって長期化すれば、町と国及び県、唐津市で協議」(吉野ヶ里文書回答)
「佐賀県原子力災害暫定行動計画においては、避難受け入れ期間は、一週間程度を想定しております。長期化すれば、神埼市と国及び県、唐津市で協議を行い対応することになります。」(神埼市文書回答)
「県の暫定対応行動計画に1週間と書いてあるが、1週間で終わるとは誰も思っていない。県 、国、唐津とで、事故が起きてから協議になるのだろう」(神埼市)
福島の実例を見ても短期間で終わっていません。避難期間の具体的な想定をしていないで、責任を持って受け入れることができるでしょうか。そんないい加減なやり方で市町に押し付ける国や県は無責任ではないでしょうか。
●6.まとめ
佐賀県の避難計画は、避難を強いられる人々の実際の暮らしをまったく無視して、机上の空論で、数字合わせで、佐賀県内の市町に押し込んだのです。
九電は、20分でメルトダウンするような過酷事故を想定して、再稼働申請しています。
国・原子力規制委員会「安全基準」と言わず「規制基準」と言う、つまり、安全を保障しないのです。
規制庁課長補佐は昨年11月 、佐賀県議会で「原発に絶対安全は永久にこない」と証言しました。
佐賀県副知事は11月30日の避難訓練の場で「福島のような事故はまた起きる」と発言しました。
事故は起きるということを、九電も国も県も言っているのです。
ならば防災・避難計画が必要であり、最悪を想定するのが防災の基本です。「想定外」は許されないというのが、福島の最大の教訓です。
規制委員会の田中委員長は規制基準適合性審査と防災計画は「車の両輪」とも述べています。
最悪を想定した、住民を被曝から守る実効性のある避難計画をつくらなければなりません。
古川知事は「(避難計画は)ワークするだろう。できていないということではない」(4月1日、定例記者会見)と発言しました。
知事がどう 言おうと、避難計画は避難する側と受け入れ側の具体的な計画があって、初めて成り立つものですが、市町の担当者は「ワークするか」と質問すると、みな困惑していました。
この過密問題1つとっても、佐賀県の避難計画は実効性ある計画とはとてもいえません。「ワーク」しない、机上の空論、数合わせにすぎません。そうした下で、原発再稼働などありえません!
※他の問題については、別途報告します。
●スクリーニング(汚染検査)の場所が決まっていない。場所や方法を市町はほとんど知らない。
●要援護者の避難について、具体的に決まっていない。市町は把握していない。
●受入れどころか、自分達の市町の住民避難が必要になることもあるが、具体的対策は何もなく、国・県 の指示待ち。
●佐賀県の「避難時間シミュレーション」は、条件設定が甘すぎるきれいごと。 etc…
避難元自治体は
佐賀県の30キロ圏内で避難元となるのは玄海町、唐津市、伊万里市の3市町。
避難受入先は
避難受入先は佐賀県内の他の全自治体17市町。
※下の図をご覧ください!