病院・福祉施設の避難計画の調査・面談を始めました

 玄海原発避難計画について、30キロ圏内の病院・福祉施設(佐賀県内、合計241施設、8028人)を対象にアンケート調査・面談を、8月11日から始めました。保育園・幼稚園についても、また、福岡県、長崎県についても、調査していく予定です。

 これらの施設は、施設長の責任において避難計画をつくるよう佐賀県から強制されていましたが、7月8日、県は「すべての施設について避難先が決まり、避難計画が策定されました」と発表しました。

 私達は、市町の避難計画を調査し、これらが数合わせの机上の空論であることををすでに明らかにしましたが、この計画が福島原発事故の際にも一番犠牲を強いられた要援護者の方々の命を守るものになっているのか、強い危惧の念を感じており、今回、現場に行って検証にすることにしたのです。

 予想通りというか、予想以上に酷い実態がありました。

施設担当者の声

「佐賀県が避難計画“ひな型”をつくってくれて助かった。県に連絡すれば、移送の車の手配から何から全部やってくれる。やってくれなきゃ困る」(病院)

 

「移動手段と受入先の確保が難しい問題だ。病院はそもそも車を持っていない。とりあえず必要な台数を県に言ってくれとなっている。4割が担架でなければ運べないが。また、移動させた後、ちゃんと医療ができるかどうかだ。機材は持って行けないし。私達からどうこう言えないが」(病院)

 

「避難計画ができたというのは、あくまで人員、車両、物資が整い、受入期間1-2週間という大前提での話だ。これからの調整がまだ課題として残っている。その先については1年かけてつくることになっている」「移送の車両は足りないから折り返し運転させる...、それも難しいので現実的には、建物の一部に防御エリアをつくって、寝たきりの人はそこに入っていただく」(原発から5キロの特養)

 

「車イスが運べる車は1台。県からは事故時に用意すると言われている。寝たきりの人が3割いるし、経管栄養で移動がきついので、屋内退避していただくことになろう、しかし5キロ圏外だから補助金もなく、特別な放射線防護の工事はしていない」(原発から6キロの特養)

まだ始めたばかりですが、明らかになったことは

■施設ごとの計画策定がなかなか進まないので、佐賀県が計画のマニュアルと“ひな型”を示して、数だけはわりふった。移送先や車両等を具体的に示せない部分について「県がなんとかするから」と引き取ったものの、車両は圧倒的に足りず、受入先は場所が決まっただけ、どれをとっても具体的に決まっていない。県は中身がなくとも、形だけでも「できた」と発表を急いだフシがある。

 

■受入先に対しては、避難期間、1-2週間ということで、説得しているようだ。その先は1年かけて決めるという。

 

■病院は重篤患者以外は、いったんすべて県内3か所の救護所に運んでトリアージ(重症度判定)して、振り分けるというのが県の方針だが、そのことさえ知らない病院担当者がいたり、「ケースバイケースだ」と言われたり、(無理のある)方針が周知徹底されていない。県からは「非常時に連絡をすれば、県が車を用意する、移送先を調整するから」とだけ言われているようだ。現時点で避難先との協議などしようがない。非常時に医療機材も運べず、いざ事故が起きた時に大混乱は必至である。

 

■5キロ圏内の福祉施設には屋内退避用に放射線防御工事を国・県が交付金を出して進めているが、5キロ圏外では、交付金対象とならず、放射線工事を行えない。しかし、「寝たきりの方は避難できないから、屋内退避させる」ことに。まさに見殺しである。

 

■「管理者の責任で計画をつくるとなっているが、何かあったらどうなるか」と聞くと「今のところ、触れられていない..。生死にかかわることになったら、家族からしたら私達ということになる。だからできるだけリスクのないことをしないといけない」と。この国や県にこの問題を曖昧にさせてはいけない!

 

■「車両、人員、物資が確保されるという大前提があるなら、計画として成り立つ」「形だけ計画は立てたが、問題は山積みで、挙げたらキリがない」など、誰もが実効性ある計画とは思っていないことも明らかに。

 

「避難計画」では命を守れないことを、事実でもって明らかに!

 また、「原発があるからしょうがない」「原発がなければ地域が廃れるという複雑な事情があるから難しい」といった声もありました。命を預かる仕事に就く人々がこうした言葉を吐くのは非常に残念なこと。しかし、彼らも難問を押し付けられているのです。いざ事故となったら、最前線で患者・入所者の世話をするという職務と、自身や家族を守ることとの間で、苦しい選択を迫られるのです。

 彼らからも、せめて「入所者、患者の命が守られる避難計画ができるまでは、再稼働はしないでくれ」と、国や自治体に対して声をあげられるように、市民がこの問題に関心を寄せ、1つ1つの事実をあきらかにして、国や自治体に声を挙げて、世論をつくっていくことが、今、緊急に必要です!

 

 川内も玄海も再稼働が迫っています。

 避難弱者を犠牲にする避難計画など意味がありません。

 そもそも原発などなければ、こんな無意味なことをする必要性がありません。

このことを、事実でもって明らかにしていくこと。

 デモや集会と違って、地道な活動ですが、これらの積み重ねが、再稼働を止める大きなチカラになっていくことと確信しています。

 避難弱者の現場に行って声を聞けば、怒りもさらに湧いてきます。怒りは行動へのエネルギーになります。

 今回、福岡や鳥栖の仲間もかけつけて同行してくれましたが、最低でも2人そろえば調査活動を継続していきますので、一緒に行けるという方、ぜひ連絡ください!