【九電自身が想定している「事故から22分で炉心溶融で」は、避難は間に合わない」】
9月5日、原発避難計画質問への知事回答について記者会見を行いました。佐賀新聞が「最悪を想定していない」「県民の命を守る責任を自覚すべき」など、私達の訴えのポイントを、ばっちり報道してくれました。
しかも、具体例として触れた、九電自身が想定している「事故から22分で炉心溶融では、避難は間に合わない」という、普通の人が見たら衝撃的数字をしっかり文字にしてくれています。
この日の佐賀新聞トップニュースだった玄海5キロ圏内「ヨウ素剤配布」の9月中の開始についての、コメントも報道してくれました。
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県の避難計画「机上の空論」 反原発団体が批判
2014年09月06日 10時08分
原発事故に備えた避難計画を「机上の空論」と批判する市民団体のメンバー=県庁
玄海原発(東松浦郡玄海町)の廃炉を求めて活動している市民団体は5日、原発事故に備えた避難計画への質問に対する古川康知事の回答を公表した。要援護者の避難方法など具体的な回答がなく不誠実と指摘した上で、福島原発事故を踏まえた最悪の事態を想定していない「机上の空論」と強く批判した。
要援護者避難では、県は病院や福祉施設の計画は策定済みと回答したが、車や運転手など具体的な搬送手段が不明確と指摘した。放射性物質の拡散前に避難する原発から5キロ圏内の住民の計画も「九電は事故から22分で炉心溶融するとしており、避難は間に合わない」と問題点を挙げた。
市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表は「避難に関し、県は市町や施設を支援するとしているが、知事には県民の命を守る責任があることを自覚すべき」と県の姿勢を非難した。あらためて県に質問状を提出する。
また、県が9月中にも、事故時に甲状腺被ばくを低減する安定ヨウ素剤の配布を開始する方針を示したことについても「再稼働に向けた準備で、ちゃんと対策していますというアリバイづくり」と批判し、「ヨウ素剤だけでは、完全に被ばくを防ぐことはできない。本当に県民の健康生命を心配するなら、再稼働せず、廃炉にすべき」と主張した。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/101663
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◆知事回答は以下に掲載しています。
◆以下、記者説明資料です。
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【記者会見】
原発避難計画に関する知事からの回答について
2014年9月5日
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
私達は6月9日、古川知事あてに「原発事故時の避難計画に関する質問・要請書」を提出しました。2週間を目途に回答を要請していましたが、2か月以上経った8月14日付で文書回答が郵送されてきました。
県に対してはあらためて話しあいの場を要請するところですが、まずは、知事回答の問題点を明らかにしたいと思います。
【1】回答全体を通じて明らかになったこと
そもそも質問にきちんと答えていない回答が多いが、全体を通じて明らかになったことが、大きく3点ある。
(1)「最悪の想定」をしていない
福島原発事故で起きた現実を無視し、防災の基本である「最悪を想定すること」を意図的に怠っている。
玄海原発避難計画が実効性あるものとは到底言えず、こうした計画の下では放射能から命を守れないことが明らかになった。
(2)「汚染廃棄物の原因者は事業者(九州電力)」と明言
原発避難計画においては、住民が避難を強いられるが、そもそもの原因者であり加害者である九州電力がいつもテーブルについていない。九州電力には当事者意識がまったくといってほどに感じられない。
回答の中で、スクリーニング・除染で出た汚染水について「電力事業者(九電)において処理」と明記したことは当然であるが、こうした責任について具体的に詰めて明らかにしていくべきである。
(3)県としての責任を問うているのに、逃げている
原発事故の責任は第一に事業者電力会社であるが、慎重な立場の学者や市民からの様々な指摘を聞き入れずに原発を安全と判断し稼働に「同意」した県知事の責任も重大である。
事故の際に、県民の命を守る責任・義務が知事にはあり、そのことを問うているのに、市町、施設、住民を「支援」するという言い方で、「責任」をおしつけ、自らの責任をぼかしている。県民の命を絶対に守ろうとする姿勢が微塵も感じられない。責任を曖昧にしてはならない。
以上のように、玄海原発避難計画は、最悪を想定せず、責任の所在もあいまいなままであり、実効性あるものとはとても言えない。このような避難計画の下では放射能から住民の命を守れない。
よって、私達は玄海原発再稼働に絶対反対である。
<以下、項目ごとの問題点メモ。回答文書に一部書き込みをしている>
【2】要援護者の避難について <質問(4)>
① 7月8日に佐賀県が「30キロ圏すべての病院・福祉施設について避難計画が策定された」と発表。
病院・施設入所者8028人のうち半分以上の4462人の移送を県が責任を持つというが、具体的には決まっておらず、「責任をもって手配します」という精神論のみ。バス・タクシー協会や運転士は困惑している。
病院入院者の「トリアージ」、3か所に全員を集めるというが、現実に可能か。再移送先は具体的に決まっていないが、どうするのか。医療機材等をどう確保するのか。福祉施設、受入先が決まっただけ。
屋内退避用の備蓄はすべて3日間。放射性物質が飛び交う中、誰が迎えにいくのか。
「目安」として「8分の1方位、15キロ」というが、被害想定を矮小化し、命を見捨てるものだ。
②私達も、30キロ圏内の9施設(特養ホーム4、病院1、障がい者施設1、社協1)を訪ねたが、
「とりあえず必要台数を県に言っただけ」「あくまで人員・車両・物資が整い、受入1-2週間という大前提での話」「5キロ圏内はあくまで予防的措置で対策をしているが、福島並みの放射能が放出されたら対応は難しい」などの声が施設職員からあがっている。
③避難の責任は誰にあるのか、在宅要援護者は近隣まかせでいいのか、幼稚園・保育園の子ども達をどうするのか等、引きつづき質していきたい。
【3】スクリーニング・除染 <質問(3)>
①市町は場所、方法等をほとんど何も知らなかったが、それで現場対応できるのか。
②「5キロ圏内は放射性物質が放出される前から避難するので、スクリーニングの必要ない」
←「予防的な避難」などできるのか?被ばくしていないと言い切れるのか?
③「車で不検出ならOK」「代表者1人」←車に汚染がなかったら、人は全員汚染していないと、言えるのか?1人に汚染がなかったら、他の人は全員汚染していないと、言えるのか?代表者はどうやって選ぶのか?手抜きをするなら、放射能汚染は拡大する恐れがある。
④「拭き取り」←汚染物は誰がどう処理するのか?
⑤「汚染水は電力事業者において処理」と当然のことが記されていたが、九電は直接話を聞いていないようだった。具体的に詰めているのか。
⑥「基準値(β線:40000cpm)」←そもそも高すぎる。120Bq/cm2に相当するが、これは法令で定められている「放射線管理区域からの物の持ち出し基準」4Bq/cm2の30倍。
【4】「22分で炉心溶融」で、5キロ圏の避難は間に合わない <質問(5)>
「(5)⑤⑥」で「22分で炉心溶融のシナリオがあるが、この場合でも放射性物質の放出に至らないようにする事故対策が示されている」「格納容器が損傷に至らないようにすることを求めている」
←水蒸気爆発、水素爆発、溶融炉心・コンクリート相互作用など様々な指摘が専門家からもなされている。それらを無視して、格納容器は絶対壊れないという安全神話の中にいまだにいる。
なお、1月29日規制庁交渉において、国は【国の指針では 5キロ圏内の住民は、炉心溶融に至る前に「避難の準備」、炉心溶融が起こっているときは「避難中」】と説明した。やりとりの中では「事故後約 20 分で炉心溶融開始となっているが、電力各社は事態把握に10分は必要としている。そうすると、10分で避難が実施できるのか」について「10分での避難は簡単ではない」と答えた。
九電自身が想定した事態が起きた場合、炉心溶融前に避難はできない。
※2013年8月15日「玄海原子力発電所3号炉及び4号炉 重大事故等対策の有効性評価 成立性確認」
【5】30キロ圏、500μまで屋内退避は被ばくを強要 <質問番号(3・5・6)>
「(3)②」「(5)⑩」「(6)避難経路・手段②」
「自主避難されると本当に避難が必要な方が時間がかかってしまう」←自主避難は「本当」ではないのか。
「全域が一斉避難するのではなく、地域を特定して段階的避難」←実測値500μ/hは、「1年間の公衆の追加被ばく限度」1ミリを2時間に達してしまう極めて高い数値。499までは被ばくを強いていいのか。
大飯原発・福井地裁判決は「250キロ」が被害の及ぶ可能性があると認めた。国の指針ではそのわずか8分の1の30キロであり、それさえも難しいからと想定をさらに小さい範囲に狭めている。