11月20日、玄海原発避難計画に関して、古川康・佐賀県知事に対して再質問・要請書を提出してきました。
私達は佐賀県内全市町への質問・面談を踏まえて、6月9日、古川康佐賀県知事あてに「原発事故時の避難計画に関する質問・要請書」を提出しました。8月14日付で文書回答が郵送され、9月5日に記者会見を開きました。その後の病院・福祉施設等の実地調査や政府交渉等、また川内原発再稼働の動きもふまえての、再質問です。
11月下旬に提出する準備をしていましたが、総選挙・知事選情勢を受けて(古川知事は県議会開会日の25日辞職表明意向)、在任中に言うべきことを言っておこうと、急きょ予定を入れました。
まず緊急要請として「やらせ」の責任問題も曖昧なままに県政を放り出す古川康知事に対して、「あらためての県民への謝罪」と県民の命を守る立場から「再稼働をすべきでない」との意思表明を求めました。
対応した県消防防災課などの担当者はいつものごとく「知事には伝えます」とだけ。
私達は「回答を求めているのだから、返事をいただきたい。知事としてどう対応するのか、回答しないにしても、話を聞いたあなた達が私達に返事するのが、社会常識だろう」と糺しました。
また、「避難施設が危険区域に設置されているのは違法状態」問題をはじめ、避難計画に関する具体的な問題点13項目と要請については、知事がどうなろうと県民の命に関わる重大な問題であることから、1か月以内の回答を求めました。
担当者が唯一こちらに聞き返したのが、
「放射線管理区域以上の放射能汚染って書いてありますが、どういうことですか」と。
こちらはあ然としながら、「毎時0.6マイクロシーベルトを超えるところですよ!」と話すと、「(もう)分かりました(から、いいです、とジェスチャー)」と。
福島の実際と、放射線管理区域とを比べることすらしたことがなかったので、ピンとこなかったのでしょうか。
なお、この3年間、部屋も用意されず、県庁玄関近くの周囲の音がうるさいロビーで立ちっぱなしの対応をされ続けてきましたが、真摯な対応をするよう何度も批判し、メディアや県議会本会議でも取り上げていただいたことは、これまでレポートしたとおりです。今回、アポの電話の中で「郵送ではだめか。人数は5人以下にしてくれないか」など、おかしな注文をつけられましたが、「真摯に対応せよ」と訴え、「入札室」という狭いところでしたが、久しぶりに部屋での対応となりました。
しかし、文書を受け取るだけ。この点も、いつもそうですが「話し合いに応じよ」と要請。「知事が変わるとしたら、こういう態度が変わることを望む」とも付け加えました。
サガテレビ報道
原発避難計画で市民グループが要請書(2014/11/20 11:55)
原発事故が起きた際の避難計画について脱原発の市民グループは20日、「計画は実効性がない」として改めて知事の考えを問う要請書を提出しました。要請書を提出したのは脱原発を訴える2つの市民グループです。市民グループは、今年6月にも古川知事宛てに避難計画に関する質問・要請書を提出。県から回答はあったものの、「最悪の想定をしておらず実効性のあるものとはいえない」と不備を指摘していました。今回は要援護者や離島の避難計画、再稼働の前提となる地元同意などについて、衆院選立候補が有力視される古川知事の考え方を再確認するとともに、再稼働を認めないよう求めています。玄海原発裁判の会の石丸初美代表は「無責任なまま放り投げて国政に出るということで説明責任を県民に何も果たしていない」と訴えました。
要請書
2014年11月20日
原発事故時の避難計画に関する再質問及び要請書
佐賀県知事 古川 康 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
代表 石丸初美
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
共同世話人 野中宏樹
私たちは2014年6月9日に原発事故時の避難計画に関する質問・要請書を貴職に提出いたしました。これに対し、8月14日に貴職より回答をいただきました。しかしながら、この回答は、私たちが危惧する玄海原発の過酷事故には到底対応できるものではなく、県民への被曝強要計画であり、承伏いたしかねます。よってここに玄海原発の事故における避難計画に関する再質問及び要請書を提出いたします。
【緊急質問・要請事項】
貴職は10月22日の定例記者会見で「川内原発の再稼働については、(鹿児島県の)伊藤知事が前の選挙のマニフェストの中で、説明会を開催して判断をしていくということを表明しておられました。それをきちんと選挙のときの約束どおり果たされているなという印象を持っておりまして、一人の政治家のありようとして見たときには、非常に敬服しているところでございます」と述べておられます。
周辺自治体や住民の再稼働への不安や反対の声を無視して、再稼働に同意した伊藤知事のどの部分に敬服しておられるのですか。
私たちは貴職がやらせ行為を行ってまで、九州電力や規制当局と共にプルサーマル発電を始め、原発の再稼働を目論んだことを決して忘れておりません。このような重大な課題を全部放り投げて国政に行こうとする貴職の無責任な政治姿勢に私たちは吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)し、怒りを覚えております
責任の所在を曖昧なままにしたこれらの行為に対して、貴職が悔い改めの気持ちを持つならば、県民へのあらためての謝罪と、県民が被曝にさらされる危険がたとえわずかでもある限り、玄海原発の再稼働をすべきではないという不退転の意思を「一人の政治家として」ただちに表明されることを求めます。
【質問事項】
(1)地元同意
同じく10月22日の会見で「私が今までの鹿児島県や薩摩川内市の動きの中で、えっと思ったのは、1つは、まず市議会が先に態度を示し、それを受けて市長が態度を恐らく表明されることになるだろうという、その一連の流れでございまして、議会が先で、市長がその後に続くというやり方(中略)、そういう動きがあるんだなということを率直な感想として思ったというのが1つと、あともう1つは、臨時議会を市議会もされるかもしれないし、県議会もされるかもしれないという報道を拝見した記憶があります。このことをテーマにした臨時議会というものを開くかもしれないということについても、私どもはちょっとイメージができていなかったので、ああ、そういったこともあるんだなということを思いました」と述べておられます。
玄海原発の再稼働に関して貴職は玄海町議会及び、玄海町長、さらには県議会の同意が得られれば、それをもって住民への説明責任も果たし、県民の理解を得、再稼働への同意を表明できると考えておられるのですか。
薩摩川内市に隣接するいちき串木野市、日置市の市議会は「地元同意を広げるべき」という決議を採択しましたが、鹿児島県知事はそれを無視しました。いざ事故が生じた時、広範囲に影響が及ぶことを考えれば、県民の命を預かる知事として「地元同意を広げるべき」と声をあげないのですか。
(2)住民説明
鹿児島の住民説明会は、「公聴会」や「公開討論会」などを求める市民からの声を無視して日時場所が一方的に決められ、参加者の座席は全部指定されました(誰がどこに座っているか主催者が把握している)。説明会冒頭に「『再稼働の是非』『避難計画』に関する質問はご遠慮下さい」とアナウンスされるなど、「審査書」に限った一方的な説明で、質問時間も限られました。ほとんどの質問が再稼働への不安、反対を表明したものでしたが、国や県はまともに答えませんでした。アリバイづくりと言われても仕方ないものでした。
貴職は県内全市町、全地域で、要援護者をはじめ様々な立場の住民の声を聞く公聴会や公開説明会等を開催するつもりはないのですか。
(3)重大事故の想定
福島第一原発の事故を経験した私たちは最早「絶対安全」はないと痛感させられました。2014年11月現在も原発施設内に使用済み核燃料がある以上、事故が起きる可能性は0パーセントではありません。常に最悪の想定をしておく必要があります。前回も質問したとおり、規制委員会に提出した資料において九州電力は「20分でメルトダウン、90分でメルトスルー」という重大事故を想定していますが、この時貴職はどのような事態となることを想定しておられるのでしょうか。
(4)「8分の1方向、15キロ」という過小想定
貴職は7月8日の定例会見において「私どもは今回、福島で起きた(事故の)線量がどの方向にどれぐらい行ったのかということが大体16分の1方向だねというのと、5キロぐらいかなというのがあって、だから、16分の1と5キロというのを基本に考えたんですね。ただ、そのままだと、それは福島の事故を踏まえた計画としては十分じゃないだろうということで、16分の1の幅を2倍にして8分の1にし、そして、5キロというのを延ばして10キロにしたんですが、玄海の場合は10キロにすると唐津市の市街地が入らないんですよ。そうすると、あまりたくさんの人が避難されるという前提にならないので、それは15キロまで延ばそうということで、ある程度の人数が避難するという前提で計画をつくりましょうということでやったんですね」と述べています。
そして「実際に災害が発生した場合にはPAZ及びUPZ(半径30㎞圏内)の全域に避難指示が出されるとは考えにくい」として、要援護者の避難者数やスクリーニングの時間等をすべて過小に想定しています。
重大事故の場合、シミュレーション通りに一定方向に一定距離拡散するという根拠はどこにあるのですか。 福島原発事故における放射能の実際の拡散状況を、海も含めてお示しください。
(5)SPEEDIの利用
原子力規制委員会は10月8日に、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を避難判断に使わない方針を決めました。福島ではSPEEDIの情報が隠されたのであり、いわば、使っている"人"の問題です。これを使わないことは、福島原発事故の教訓を踏みにじり、被ばくを避ける避難を放棄するものではないでしょうか。
SPEEDIによるシミュレーションを基にした県の避難計画(過小評価していますが)とも矛盾があると考えますがこの点貴職はいかがお考えでしょうか。
(6)500μ㏜/hという実測値
貴職は重大事故が起きた場合、「PAZの住民は放射性物質放出前に予防的に避難」「UPZの住民は原則屋内待避した上で数時間以内に空間放射線量が500μ㏜/h以上の区域を特定して1日以内に避難するよう避難指示、」「1日以内に空間放射線量が20μ㏜/h以上の地域を特定し1週間以内に避難するよう避難指示が出される」と答えておられます。この場合UPZの5キロ以上30キロ圏内の住民が屋内待避をした場合の被曝線量の数字を具体的にお答え下さい。
(7)放射線防御シェルター
県内の離島においては、緊急避難シェルターの収容人数が住民の人数分ない場所があります。シェルターに入れない住民はどうすればよいのですか。前回の質問にお答えいただいておりませんが、誰がどのように選別するのですか。
(8)スクリーニング
①貴職は「PAZの住民に関しては避難者や、避難に使用する車へのスクリーニングは必要ない」と答えておられますが、避難の途中で道路の寸断、あるいは渋滞などにより、汚染される可能性は全くないと考えておられるのでしょうか。
②スクリーニングに要する時間は車1台あたり何分と想定しておられるのですか。
30キロ圏内の人と車がすべて避難を強いられる時、スクリーニング完了するまでに、何時間かかりますか。
報道では、国道323号線を避難する避難者のスクリーニング場所となる小中一貫校北山校では、避難車両24000台がすべてスクリーニングを完了するのに、1台5分、10ゲートとしても、2000時間つまり8日間かかるとの試算もありました。このような想定は無視するのですか。
③スクリーニングの結果、除染が必要とされ、除染を行った場合の放射能汚染廃棄物を九州電力は何処で、どのように処理するのか貴職は把握しておられますか。具体的にお答えください。
(9)要援護者の避難
7月8日にすべての病院・福祉施設の避難計画が策定されたと発表されましたが、全入所者8028人のうち半分以上の4462人の移送を県が責任を持つというものの、具体的には決まっていないようです。
①病院入院者の「トリアージ」では、まず3か所に全員を集めるといいますが、再移送先は具体的にどこで、どのようにして運ぶのでしょうか。医療機材等はすべて確保されていますか。
②「高齢者施設及び障害者施設の要支援者は、避難元と避難先施設の車両及び民間バスなどで30㎞圏外の同種施設や地域住民と同じ避難先に避難します」としていますが、この場合、車両やバス運転手や介助者は被曝を避けることが出来ません。被曝をするという事が前提となってこの計画が策定されているのでしょうか。また、そのような書面による協定書などは事業者や労働者と交わされているのでしょうか。
③県民は福島第一原発の事故の際、避難に著しい混乱が起き、ある病院の収容患者90名は置き去りにされ、そのうち45名が搬送途中に死亡したことなどを知っています。この「福島の事故の教訓」に基づいてUPZ圏内外を問わず、県民が一斉に避難し始め大混乱に陥ることは想定しておられませんか。
④避難計画を策定した施設に伺った時に、「計画はあくまで人員・車両・物資が整い、受入1-2週間という大前提での話」「5キロ圏内はあくまで予防的措置で対策をしているが、福島事故並みの放射能が放出されたら対応は難しい」などの声を聞きました。大前提はすべて整っていますか。福島事故並みの放射能が放出されたら、避難計画は機能しますか。
(10)避難所のスペース
前回質問において「避難受入数の避難先市町人口に対する割合が17市町中13市町で3割を超え、太良町では78%になる」「各施設に対する収容人員数の割り振り方が、およそ非現実」「市町間の協議がなされていない」ことなどを指摘しましたが、貴職は「不適切な部分があれば是正を行う」と回答されました。不適切な部分をどう認識し、どこをどう具体的に是正したのか、お答えください。
(11)危険区域にある避難施設
災害対策基本法が2014年4月に改正されたことに伴い、原子力災害対策特別措置法においても「危険区域に避難施設を設定してはならない」とされました。この法律に基づいて、避難元である自治体の一時集合場所(緊急避難場所)や、避難先の避難所の危険区域への設定は禁止されています。貴職は、避難元、避難先の全避難施設が「危険区域」に設定されていないことを確認していますか。具体的に何か所ありますか。また、違法状態について是正指導をしていますか。これらのことを住民に公表していますか。
(12)安定ヨウ素剤配布
佐賀県の地域防災計画内の原子力災害対策篇において「佐賀県では、PAZ及びUPZ(原発から30キロ圏)の全住民の3日分の安定ヨウ素剤を、30キロ圏内の市町、保健福祉事務所等に配備している」と記されています。そもそも何故UPZ圏内の住民だけが対象となっているのでしょうか。福島においては、従来100万人に一人の確率と言われていた18才未満の子どもの甲状腺ガンの発症が急増していることは事実です。この事を踏まえて全県民に安定ヨウ素剤についての説明、及び希望者への配付を行う必要があると思いますが、貴職はいかがお考えでしょうか。
(13)30キロ圏外の避難計画
橋本康志鳥栖市長は住民の質問に対して「事故の規模、状況、気象条件、時間の経過などにより国が定める放射線管理区域以上の放射能汚染にさらされる可能性はないわけではない」と答えています。管理区域には18才未満の入所禁止、標識表示義務と立ち入り制限、管理区域内での喫煙や飲食の禁止などが厳しく定められています。鳥栖市長の回答から想定しなければならないことは、県民の命、分けても子どもたちの命を守るためにも、県内全域における原子力防災計画の一日も早い策定が必要であると考えますが、貴職は如何お考えでしょうか。
8月22日の県市長会との会合で貴職は「県として30キロ圏外の計画はある」「こうなったらここに行くという具体的なところは決めていないが、必要なときに必要な方々に安全なところに避難してもらうことを絶対実現する」と発言されたと報道されていますが、精神論ではなく、具体的にお示しください。
【要請事項】
たとえどんなに経済が繁栄しても、命を損ねてしまっては何の意味もありません。命は何にも先だって優先されるべき事柄です。現在県が策定している原子力防災・避難計画ではとても県民の命を守ることが出来ず、むしろ被曝を前提としたものである事は明らかです。
県民の命を守れない避難計画のもとでは、玄海原発の再稼働を絶対に認めないでください。
以上、1か月以内の回答をお願いいたします。
要請書Wordファイル
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11月20日、原発避難計画に関する佐賀県知事への再質問・要請
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6月9日、佐賀県知事あてに玄海原発避難計画に関する質問と要請を行ってきました。