改正災害対策基本法が今年4月に施行されたことに伴い、原子力災害対策特別措置法においても「危険区域に避難施設を設定してはならない」とされました。避難施設とは、避難元自治体の一時集合場所(緊急避難場所)と、避難先自治体の避難所です。
福井の原発群を抱える関西の市民が関西一円に広がる避難所の全調査を丹念に行ってきましたが、川内原発を抱える鹿児島県 でも問題となっています。薩摩川内市なども担当者が、避難施設が危険区域にあることを認識しており、「法に違反している」と自ら述べたそうです。
10月24日の政府交渉でも、内閣府原子力防災担当は、原子力災害時の避難所は「土砂災害等の危険区域以外(安全区域)からまず選び、そのあとから30キロ圏外に指定する」ことを認めました。
佐賀県内で避難受入先となる17市町にアンケートで確認したところ、8市町で65か所の避難所が危険区域にあることが判明しました。たとえば、伊万里市民の受入先である太良町では12か所中5か所(42%)、唐津市民の受け入れ先である佐賀市では89か所中24か所(27%)にもなります。
このことを自治体議員とも連携して12月議会本会議の一般質問で質疑を行って もらったところ、伊万里市総務部長は「佐賀県に尋ねたら『問題ない』とのことだが、市としては法律上の問題は無いにしても、避難する側にとっては心情的な不安もあると思うので、避難先との協議の議題に上げ、避難所の安全を確認したい」と答弁。唐津市総務部長は「法令違反ではないが、避難所は安全な区域にあるのが大原則。そういう場所があれば、県と協議しながら見直しに努めなければならない」と踏み込んだ答弁をしました。
「違法ということではなく、法律に適合していない、ということだ」と言い訳する担当者もいましたが、住民の安全な避難を考えるなら、法改正の趣旨にのっとって、避難計画自体を根本から見直さなければいけないでしょう。それがまさに「大原則」です。自治体 はなかなか自ら調査・公表しません。住民サイドから声をあげていくしかありません。
現在、避難元の玄海町、唐津市、伊万里市の「一時集合場所」が危険区域にないのかも調査しています。また、佐賀県だけでなく、同じように玄海原発事故による避難計画をつくることとされている長崎県、福岡県でも、各地の市民団体と連携して、調査を進めていますが、集計できしだい、あらためて公表することにしています。
避難計画の問題点は山積しており、これを明らかにすることは再稼働を遅らす大きな材料です。問題点を引き続き1つ1つ具体的に検証していきましょう。
佐賀新聞報道
佐賀新聞2014年12月17日付「=一般質問ピックアップ= 唐津市議会」より
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10105/136868
●原発事故避難所見直しも
唐津市議会の一般質問前半が12、15日にあり、9議員が原子力災害時の避難計画や、唐津競艇のアミューズメント構想などについて質問した。
【原発事故の避難計画】原子力災害時の30キロ圏内の一時避難所や30キロ圏外の避難先について、議員が「津波や高潮、土砂災害など自然災害による危険区域に含まれる避難所もあるのではないか」と質問した。
岡本憲幸総務部長は「現在、調査を進めているが、法令に違反しているわけではない」と説明しつつ、「避難所は安全な区域にあるのが大原則。そういう場所があれば、県と協議しながら見直しに努めなければならない」と答弁した 。