2015年3月20日玄海MOX判決を前に、「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武さんに、「玄海MOX裁判・判決の意義を全国に広げよう」と題する一文を裁判ニュース16号に寄稿していただきました。
15年ほど前に最初のプルサーマル運転が問題になったときから、関電高浜原発、東電福島第一原発、東電柏崎刈羽原発、六ヶ所再処理工場、九電玄海原発…と、プルサーマルや再処理の予定が次から次へと現れるにしたがって、反対運動が繋がり、広がっていった、中心のお一人が阪上さんでした。以下、紹介します。
玄海MOX裁判・判決の意義を全国に広げよう
原子力規制を監視する市民の会 阪上 武
玄海MOX裁判の判決が3月20日に迫りました。原告・弁護団のみなさんに敬意を表するとともに、よい判決を期待したいと思います。大飯原発についての福井地裁の判決は、人の生存そのものに関わる権利を尊ぶ画期的なものでした。玄海MOX裁判では、正面切った安全論争が行われ、これに裁判所もとことん付き合いました。その上での判決は、福井地裁の判決とは全く違った意味で画期的なものとなるのではないでしょうか。
●再稼働を止めて核燃料サイクル政策の復活を止めることに繋がる
いま、原子力規制委員会による審査が進み、再稼働が近いとされる原発のうち、玄海原発、高浜原発、伊方原発についてはプルサーマル運転をいきなり行う可能性があります。福島原発と同じ型である沸騰水型原発では、東電の柏崎刈羽原発の審査が先行していますが、その3号機のプールにはやはりMOX燃料が浸かっています。
こうした炉の再稼働に際しては、国・電力会社は、プルサーマル運転を強行するのではないでしょうか。というのも、プルサーマル運転には、核燃料サイクル政策の復活、その要となる六ヶ所再処理工場の復活がかかっているからです。逆に言えば、プルサーマル運転を止めることは、主要な原発の再稼働を止め、核燃料サイクル政策の復活を止めることに繋がります。裁判の争点の一つである、使用済MOX燃料の処理ができず、超長期にわたり、玄海原発に留め置かれる問題について疑義を唱える内容の判決であればなおさらです。
●原子力規制委員会の審査のあり方について問い直される
また、この裁判の中心的な争点であるギャップ再開問題に関して、九電が主張するウラン燃料とMOX燃料の安全上の同等性について疑義を唱える内容の判決であれば、それだけでも大きな意味をもつでしょう。その影響は、玄海原発のプルサーマルの是非に留まらず、全国の原発の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に対する信頼性にまで及ぶと思われるからです。
プルサーマル運転の安全審査は、かつて、原子力安全委員会時代につくられた指針に基づいて行われました。そこでは、MOX燃料が炉心の3分の1までであれば、安全上はウラン燃料だけの炉心と同等であることが前提とされました。
福島事故後はどうなったか、炉心が溶融するような重大事故にも対策をするという新規制基準がつくられ、それに基づいた適合性審査が行われました。MOX燃料とウラン燃料では、重大事故に至る経過や条件も、その後の影響についても大きく異なるはずです。ところが、原子力規制委員会は、MOX燃料の使用については既に許可が出ているという理由で、新たな審査基準をつくりませんでした。相変わらず、MOX燃料とウラン燃料は安全上は同等であるという前提に立っているのです。
判決において、MOX燃料とウラン燃料の同等性が崩れたら、こうした審査の枠組みが崩れてしまいます。原子力規制委員会に対する信頼も失墜し、審査のあり方について根本的に問い直されることになるでしょう。その場合には、判決後すぐにでも原子力規制委員会との交渉の場をもち、多くの人と判決の持つ意義について共有できればと思います。
●判決の意義を全国に広げよう
15年ほど前に、最初のプルサーマル運転が問題になったときから、関電高浜原発、東電福島第一原発、東電柏崎刈羽原発、六ヶ所再処理工場、九電玄海原発…と、プルサーマルや再処理の予定が次から次へと現れるにしたがって、反対運動が繋がり、広がっていきました。いままた、画期的な内容が期待される玄海原発プルサーマル差止裁判の判決について、それを首都圏を含めて各地で受け止め、その影響を全国に及ぼしていくことができればと思います。