玄海原発から30キロ圏内に全域がすっぽり入る伊万里市は、先月、原子力災害時の避難所の99%を見直しました。
それまでの佐賀県の計画が、いかに机上の空論であったかが明らかになったとも言えます。...
<「みなさんの指摘が、県を動かしました」>
「見直し」の詳細を聞きに行こうと、5月13日、伊万里市防災担当部署を訪ねました。こちらは3人、先方は担当部長以下4人が対応されました。
部長は開口一番、
「みなさん方の指摘が、調整役の県を動かしたんです。みなさんが熱心に動いてる様子はテレビ、新聞でも見ていますよ。おつかれさまです」。
と言ってくださいました。
「あなた方が指摘された、避難所面積1人あたり2㎡の中に階段部分が含まれていたり、確保すべき共有スペース(通路等)が考慮されていなかったり、という不適切な部分があった。それと、具体的な移動ルートを考えず、数合わせだけでマッチングをしたから、地区によって移動距離がまちまちだった。なので、面積を確保し、距離の問題もただすこととした。結果、182の行政区のうち181区を見直すこととなった。新聞では95%というが、99%だ。変更したことについて、先日、13の区長を集めて説明したところで、今、地区ごとに説明してもらっているだ」とのことでした。
そして、見直しとあわせて、受入市町と覚書を交わすこととして、1つ1つの避難所についての詳細情報を台帳としてつくることにしたそうで、1部、見本もいただきました(覚書全11ページのうち2ページ分を写真添付)。「通路」が「避難スペース」からちゃんと除外されていました。
私達が昨年来、自治体をまわって、1人2㎡だけのスペース=“ぎゅうぎゅう詰め”状態になっている問題など、避難計画の不備を指摘してきたことを、市町の担当者がちゃんと聞いてくれ、県に対しても改善を促し、実行されたのです。
見直しはささやかな前進ではありますが、「避難計画」の抱える問題のごく一部が見直されて、ちょっとだけマシになったにすぎません。
私達はそもそも「よりよい避難計画」をつくるために避難計画問題を取り上げて行動しているわけではありません。計画の不備を突き、「住民を被曝させない避難計画など不可能。だから、再稼働は認められない」という世論をつくる手段として、取り組んでいるだけですが、そんなふうに言っていただけたこと、聞く耳を持っていただけたことは、率直に言って、うれしいことでした。
<危険区域問題>
自然災害危険区域問題も話をしました。
伊万里市は、災害対策基本法改正の趣旨にのっとって、自然災害時の避難所・緊急避難場所はすべて、土砂・高潮津波等などの自然災害危険区域からはずすよう見直ししていました。全国どの自治体も見直し中ですが、伊万里市は完了しており、その旨をHPに掲載するなど、模範的な対応でした。
しかし、原発事故時の市内の一時集合場所については「法律上、対象とならないから」という理由で、危険区域問題を考慮せず、30キロ圏外の他市町の避難所については「把握していない」と、私達のアンケートに回答していました。私達の調査では伊万里市民の避難先のうち38か所が危険区域にあります。これについて部長は
「みなさんが最も厳しい状況を想定しているのはわかるが、法的には問題ないし、行政としては率直にいうと「キリがない」ので理解していただきたい...。もし使えなくなった場合の避難先は、県から『県の公共施設』と聞いているが、具体的にはまだわからない。相手のあることでなかなかこちらからは言えないので...」と。
佐賀県はこの問題について「法的に何ら問題がない」として、一切、対応しておらず、市町にもそのように“指導”しているのです。そこで部長に対して、
「県は私達への回答で『危険区域にあるかはどうかは別にして、避難所や避難計画の不備の指摘などがあれば、見直しは不断におこなっていく』といっているが、なぜ『別に』するのか。問題は法の解釈云々ではない。現実に危険があるなら、福島のように複合災害も想定されるわけだから、簡単ではないかもしれないが、行政の責任として取り除くよう努力すべきではないか。今度、私達、県に対しても再度要請するが、伊万里市からも危険区域問題も含めて見直しをするよう県や他市町との協議の議題にもあげてほしい」と、伝えました。すると、部長は
「今後も協議の場があるから、そのようなことは話していきたい」と答えました。
ぜひそうしてほしいものです。
<防災指針改悪問題>
国の原子力災害対策指針改定のことは、情報が伝わっているかと聞くと、「スピーディーを使わないというのを新聞で見たぐらい」だと。
そこで、スピーディーのこと、プルーム問題を削除したこと、「20μは1日そのまま待ってから、判断せよ」という問題を簡単に説明しました。30キロ圏外の避難をバッサリ切り捨て、また30キロ圏内の住民に一層の被曝を強いる大問題です。
「500μとか20μとか技術的なことを言われても分からないのだが...」と言いながら
「屋内退避といっても、心情的にみんな国や県の指示に従うだろうか」「私は伊万里の中でも、玄海原発に近い地域で、15キロ付近のところに住んでいる。事故が起きたら、ふるさとを失いかねない。原発はなければ一番いいんでしょうけど...」とも漏らしました。
指針改悪の資料を渡し、「よく検討してください。不明な点をぜひ国や県に伝えてほしい」と伝えました。
☆☆☆
危険区域問題や指針改悪問題のように他の問題も、私達市民が行動しなければ、「問題」として多くの県民や自治体に認識もされないでしょう。
しかし、今回の「避難所全面見直し」で確認できたことは、市民が問題点を1つ1つ取り上げて明らかにし、それを「命にかかる問題」だからと、正面から自治体に伝え、議員やマスコミにも伝える工夫をしていけば、1つの世論となり、自治体を動かすことできるということです。
これまで私達が何度も訪ねて「住民の命を守ってほしい」という思いを伝えてきたことで、聞く耳を持ってもらえたように感じています。放射能の怖さをリアルに感じてもらえるよう、これからも何度でも伝えに行こうと思います。そして、国や県の言うことにそのまま従うのではなく、住民に一番近いあなたたちこそが、住民の命を生活を守るために、どんどんものを言って、住民を守る砦になってほしいということを、訴え続けていこうと思います。
決め手は、私達がどう動くか、ですね!
◆これまでの避難計画に関する取組→http://u222u.info/l10e
★速報:5月22日「玄海原発避難計画と再稼働に関する佐賀県知事への質問・要請」を行います!
5月22日(金)午前9時 佐賀県庁新館3階31号室にて
( 午前8時45分 新館1階ロビー集合 )
「県民の命を預かる知事の責任」「原子力災害対策指針改訂版」「佐賀県避難計画」について質します。