【免震重要棟建設放棄!川内原発の稼働中止と玄海原発の再稼働中止を!】

免震重要棟建設放棄で再稼働の前提が崩れた
九州電力は川内原発の稼働中止と玄海原発の再稼働中止を!

 
 昨年12月、九州電力は川内原発の免震重要棟建設を放棄することを明らかにしました。本年1月には玄海原発の免震棟建設計画も白紙に戻して「再検討」することも表明しました。  福島原発事故において、事故収束のための最前線の拠点となった重要な施設であり、九電もそれまで、国・原子力規制委員会に対しても市民に対しても「2015年度中に完成予定」だと説明していましたが、それを反故にしたのです。  規制委の田中俊一委員長は、1月6日の記者会見で「設置を前提として再稼働の許可を得ている。基本的に約束を守ってもらわないといけない」と不快感を示しました。再稼働の前提条件が崩れたのです。

●柏崎刈羽と福島の事故の教訓  免震重要棟の重要性は以下の泉田・新潟県知事、東電社長の言葉の通りです。

◆泉田裕彦・新潟県知事
「2007年の中越沖地震の時、柏崎刈羽原発の東電のサイトと連絡が取れなくなりました。ホットラインのある建物が地震で歪んでドアが開かず、入れなかったというのですが、地震の際、事故は複合で起きるわけだから、ホットラインが使えないと困ると、かなり言ったんです。もう知事、そろそろいいんじゃないかという話も多々ありましたけど、断固としてやってくれと言った。そうしたら造ってくれたのが免震重要棟なんです。あわせて、福島にも免震重要棟を造った。完成したのが、東日本大震災の8カ月前でした。だからあの時、私がひよって、言うべきことを言わなかったら、あの福島に免震重要棟はなかったんですよ。免震重要棟がなかったら、いま東京に住めないんじゃないですか。
日刊ゲンダイ2013/10/24より
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-10116.html
 
◆清水正孝・東京電力社長(当時
「あれがなかったらと思うとぞっとする」
国会福島原発事故調査委員会・第18回委員会にて
(2012年6月8日)
新潟県中越地震時、柏崎刈羽原発の緊急対策室のあった事務本館(原子力安全基盤機構の写真)
新潟県中越地震時、柏崎刈羽原発の緊急対策室のあった事務本館(原子力安全基盤機構の写真)
2011年4月1日に公開された、福島第一原発免震重要棟内(東電提供)
2011年4月1日に公開された、福島第一原発免震重要棟内(東電提供)

●免震と耐震の違い  「耐震」は地震の力に対して、主に壁の強度を上げて耐える構造で、建物が頑丈でも地震の揺れは建物に伝わります。対して「免震」は建物と基礎の間に免震装置を設置し、地盤と切り離すことで、建物に地震の揺れを直接伝えない構造になっています。専門メーカーがつくった「免震ウェブサイト」の映像をご覧いただければ、その違いが一目で分かります。  http://www.menshin.biz/?q=menshin/node/3395

 新規制基準においても以下のように規定されました。
 
◆基準規則第六十一条
「重大事故等に対処するために必要な指示を行う要員がとどまることができる」こと
◆基準規則第六十一条解釈
「基準地震動による地震力に対し、免震機能等により、緊急時対策所の機能を喪失しないようにする」こと
 九電もこれを受けて、免震機能を持った免震重要棟をつくり、その中に司令塔となる「緊急時対策所」を置くこととしていたのです。
 九電が規制委に提出した「川内原子力発電所 1 号炉,2 号炉審査資料」(平成26年6月17日)には、免震構造のメリットが詳細に書かれ、免震機能のない「代替緊急時対策所」(現在使用中)については「その機能に係る設備を含め、緊急時対策所(免震重要棟内)の設置をもって廃止する」とまで明記されているのです。

●九電「早くつくりたい」連発
 私達は1月20日に九電本店に対して、免震重要棟建設放棄を抗議し、川内原発の稼働中止と玄海原発の再稼働の中止を求めました。九電の言い分は以下のとおりでした。
・免震がすぐれていて、耐震が劣るということではなく、同じ機能である。
・免震機能のない現在の代替緊急時対策所でも規制要求に十分こたえる機能はあるが、免震棟は安全性をより向上させるためのもの。
・原発は一般の建物と違って、厳しい規制要求事項があり、基準地震動に耐えられるものでなければならならず、他の原発では審査を通っていない。※
・耐震は技術的に経験があるので早くつくれる。
・早期に緊急時対策所の運用を開始したいことから、規制要求に入っていない“免震”構造はやめて、耐震構造の耐震支援棟をつくることに変更した。
※伊方原発は、3.11前の基準地震動473ガルに対応した設計で、審査申請時にはすでに免震棟を建設していたが、審査過程で基準地震動が620ガルに引き上げらたことで基準に適合できなくなった。それに対応する施設をつくればよい話であり、免震機能自体の問題ではない。伊方の例を挙げて免震重要棟がダメだというのは的外れです。
九電:早くつくりたい…早くつくりたい
私達:『早く』よりも『安全』が大事だ。免震棟のメリットも機能も、九電資料でよくわかった。再稼働をいったん止めて、時間かけてつくればいいではないか。
九電:(免震ではない)耐震支援棟をつくることで安全性が高まる。支援棟なら早くできるからだ。
...堂々めぐりの回答でした。

私達:「2015年度内に建設予定」としていた玄海の設計・工事はどこまで進んだのか。コスト・予算は?
九電:予算は決まっていなかった。そもそも仕様も決まっていなかった。
 免震棟の仕様も予算も具体的には何も決められてなかったことが明らかになりました。
 九電は免震機能のない代替緊急時対策所を継続して使用し、隣接地に「耐震支援棟」をつくり休憩室や医務室をつくるといいますが、これでは、重大事故時の対策拠点となりえません。  免震構造は一般的にコストがかなりかかると言われています。九電は安全よりも経営を重視しているとしか思えません。

●規制委は「設置を前提として許可」
 1月21日、全国の市民団体とともに、原子力規制庁との交渉にのぞみました。
 田中委員長が言うように、免震重要棟の「設置を前提として再稼働の許可を得ている」わけですから、行政手続きの上からも再稼働の前提が崩れたわけです。
 しかしながら、トップの田中委員長の発言を無視するかのように規制庁官僚は、「特段、免震が必要だとかそういうわけではない」と言い放ちました。電力事業者を監視すべき規制庁が、九電から約束を破られたにもかかわらず、九電をまったく批判せず、それどころか、九電の不合理を擁護、代弁したのです。 「現在の耐震の代替施設も審査に合格しており、免震でも耐震でも安全性が満たされていればいい」「九電が変更申請を出してきたので、それを審査するだけ」という姿勢に終始しました。
 それでも、市民の理詰めの交渉で、「九電に免震重要棟を明記した書面を提出させ、それを規制庁が許可をした」、つまり、「免震重要棟は許可されたもの」という点だけは認めさせることができました。

●知事「やるといったものはやるべきだ」
 私達が九電交渉を行っていた20日、山口祥義・佐賀県知事は定例記者会見で、免震重要棟建設について「やるといったものはやるべきだ。信頼関係の問題だ」と九電を批判しました。  就任当初から再稼働を容認してきた山口知事は、原発のことはいつも国と九電の言うことを丸呑みにしてきましたが、今回の発言は筋が通っています。信頼関係やプロセスを踏まえるのは当然のことです。知事や県議会にも、その上で内容に立ち入って吟味してほしいと思います。

★暴挙を許さない!市民が声をあげる時!
 免震重要棟建設の放棄は、住民をだまし、規制委員会との約束すら破り、何よりも福島の犠牲と教訓を無視する暴挙です。
 再稼働の前提条件も崩れました。川内原発の稼働中止と玄海原発の再稼働の中止させましょう。
 そのためには、私達自身が学習し、行動して、県や市町村や議会を動かしていくしかありません!

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