九州電力が川内原発に続き、玄海原発の免震重要棟の建設計画を撤回すると表明したことに対して、5月25日、私達5つの市民団体は18人で九州電力本店に行き、「地域住民や自治体との約束を破り、命の安全よりも経済性を優先する暴挙」だと抗議の申し入れを行いました。
全国から67団体の賛同いただいた抗議文書を提出の上、担当のエネルギー広報課長に私達の怒りを伝えました。
九電が5月17日に佐賀県と玄海町に説明した時の資料では、「耐震であれば免震よりも工期を2年短縮できる」ということを主な理由とし、「安全性が高まる」と言いながらその具体的な中身がまったく記されていませんでした。
今日のやりとりでは、こうした九電の姿勢を糺しました。
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●「命より工期短縮」
市民「なぜ早くつくる必要があるのか。」
九電「工事計画について詳細設計する中で、課題がでてきた。支援機能を早くつくっておきたかったから。」
市民「工期よりも命を優先させるべきだ。免震のメリットを認識していたのだから、免震で進めるべきだ。」
九電「そういうご意見もあるということで承ります。」
●「免震は成熟した技術」という国の指摘さえも否定
市民「免震のメリットを九電自身も認識していたし、国の原子力安全基盤機構(JNES)(現在、原子力規制委員会に統合)さえも『免震技術は原子力分野や非原子力分野において、凡そ30年以上の有用な研究実績や施工実績があり、成熟した技術と認知されている』と2014年1月の資料で詳細に指摘している。これらをすべて否定するのか。」
九電「原子力分野『や』ということだから、原子力に限定していない。」
市民「それは国語の問題としておかしい。無茶苦茶だ!」
●いつ「つくらない」と決めたのか。住民をだましてたのではないか。
市民「2012年に免震の方針を打ち出し、2013年に規制委に申請してからも3年経つが、その間に何をしていたのか。経緯の説明をしてほしい。」
九電「2013年の新規制基準制定の後に、基準地震動が確定し、その後に免震棟の工事計画認可を出した。免震棟予定地の敷地の掘削工事はやったが、本体着工は工事計画を出して認可をもらってからでないと工事にかかれない。工事認可について詳細設計しているうちに時間がかかった。自治体などにもっとはやく知らせるべきだったかと思うが、検討をいろいろしていたので...」
市民「時間がかかるのははじめからわかっていたこと。時間かけてでも約束を守って、より安全な免震で工事を進めたらいいではないか。」
九電「・・・ご意見として承ります。」
市民「佐賀県議会などでも何度も説明してきたし、新聞テレビでも2015年度に完成だとずっと言ってきたのに、実は早い段階から免震棟をつくらない方針を決めていたのではと私達は疑っている。当初からだましていたのではないか!」
●コストの詳細を説明せず
市民「コストはいくらか。」
九電「コストに関係なく、安全優先でやっている。」
「川内では3月に規制委に再申請した時に、免震の予算は190億円、耐震棟と同じ額だとして報告した。」
市民「190億円の詳細を教えてほしい。」
九電「コストは公表できない。」
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約束違反が平気でまかり通るようなことは、普通の企業でありえません。免震以外の問題でも、約束違反の見切り発車で、スルッと再稼働が進められていくことを私達は絶対許しません。
九電の回答、姿勢がどんなに「のれんに腕押し」「ぬかに釘」のごとく酷くても、私たちの命にかかわることなので、何度でもあきらめずに、生活者としてどんどん追及していきたいと思います。
免震重要棟問題だけでも今日で3回目の九電への申し入れ(1月20日、3月31日)となりましたが、他にも地震への備え、重大事故対策、避難計画、核のゴミetc...問題が山のようにあります。今日は30分という時間制限もあり、充分突っ込んで聞けませんので、あらためて時間をかけての交渉の場を要請しました。
再稼働をなんとしても止めましょう!
九州電力(株)代表取締役社長 瓜生道明 様
戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/東区から玄海原発の廃炉を考える会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
九州電力は5月17日、川内原発に続き、玄海原発の重大事故時の対応拠点施設について、免震重要棟の建設計画を撤回し、耐震構造の緊急時対策棟を新設すると佐賀県と玄海町に伝えました。
地域住民や自治体との約束を破り、命の安全よりも経済性を優先する暴挙です。
九州電力は極めて公共性の高い企業です。だからこそ、住民の安全を最優先しなければならないはずです。この度の問題は、最低限の企業責任さえ放棄したことにほかなりません。
免震重要棟は、福島第一原発事故では対応拠点として極めて重要な役割を果たしました。3.11当時の清水正孝・東京電力社長は、「あれ(免震重要棟)がなかったらと思うとぞっとする」と国会事故調査委員会で発言したほどです。フクシマでは免震であったからこそ司令塔が辛うじて機能したのです。
九電は当初、免震装置は地震の揺れを大幅に低減する構造であると明確に認識し、耐震では難しいものであっても、免震なら「安全性が向上する」と原子力規制委員会への提出文書の中で自ら評価していました。
にもかかわらず、「耐震であれば免震よりも工期を2年短縮できる」ことだけを理由に撤回したのです。また「免震棟は原子力施設としてのデータが少なく、実際に揺らす試験などが必要なこと」や、「維持管理、品質保証が難しいこと」ことも理由としていますが、当初から分かっていたことではありませんか。
命と工期を天秤にかけ、工期短縮が人の命より優先すること自体、許せません。理由にならないような理由を「説明」さえすれば済むような話ではないのです。
九電は過酷事故時に耐震構造物で対処した事例を示さず、また対処可能であることの説明を何もしていません。最前線で収束作業に従事する九電社員や下請け労働者のみなさんの命も被ばくから守らなければならないはずです。
福島第一原発事故で明らかになったように、原発事故は他の事故や災害とは全く異なり、いったん事故を起せば生活圏に放射能をまき散らし、何十年と、元には戻らない環境になってしまうのです。被害は立地住民に止まらないばかりか、世界中の空気や海や大地など生き物全ての命と故郷を奪うのです。このことを真摯に受け止めるべきです。
私たちがこうして貴社の原発に関する取り組みに何度も異議を申し上げるのも、玄海原発の事故は私たち自身の日常生活に否応なしに深くかかわってくるからです。
私たちは、熊本地震で地震の恐怖を身をもって体験しました。熊本の知人が地震当時のことを教えてくれました。ドッドーンと来た後に「緊急地震速報」が流れた、直下型は突然やってくると言いました。日本中どこで地震が起きてもおかしくない状況になりつつあると専門家さえ危惧しています。 「原発で想定外の地震は起きない」と誰が断言できるのでしょうか。
原発事故は人災です。人災は人の力で止められます。
貴社が強行しようとしている約束違反の見切り発車で再稼働できるという前例を、私たちは決して許しません。
重大事故時の最低限の備えである免震重要棟建設の約束さえ破り、住民の命より利潤追求にひた走る九州電力に抗議するとともに、玄海原発を再稼働しないよう求めます。
<参考資料>
※玄海原子力発電所 緊急時対策所の整備計画について(九州電力 2016年5月17日)
http://www.kyuden.co.jp/nuclear_notice_160517.html
※「川内原子力発電所1号炉及び2号炉重大事故等対処施設のうち緊急時対策所(免震重要棟内)の耐震設計の基本方針」(九州電力、2014年6月17日、23ページ)
https://www.nsr.go.jp/data/000041886.pdf
※「免震構造の試評価例及び試設計例」(JNES、2014年1月、174ページ)
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000126724.pdf
賛同団体一覧
賛同団体、「グリーンコープ生協ふくおか」からも九電への抗議メッセージが届きました。
「九州電力の玄海原発免震重要棟建設撤回方針と、安全をないがしろにしてそのような方針を出す企業姿勢に強く抗議します」 グリーンコープは、福島の原発事故の収束も原因究明も、ましてや反省も全く不十分なまま、 川内原発に続いて玄海原発も再稼動させようとする動きには、そもそも大きな怒りを持っています。 それに加えて、玄海原発の免震重要棟建設の撤回方針はますます私たちの怒りを増すものでしかありません。 免震重要棟は重大事故時の拠点となる施設で、福島の事故の際に、その重要性が広く認識されています。 九電は「免震重要棟に替えて耐震構造のものを作る」「同等に安全で工期も短い」と言っています。 しかし、重大事故時に保たれているべきは、建物だけでなく、建物とその機能です。 地震の揺れを吸収して内部構造が壊れにくく、余震時でも人が落ち着いて作業できる免震重要棟の建設を、 どうして九電は撤回するのか、全く理解できません。 もっとも大切な安全以外の「何か」を重要視している九電の企業姿勢に強く抗議します。