★県「見直していない。国から言われて、必要であれば検討したい」
★私達「命と生活が奪われる。なぜ県民を命を守る知事として率先してやらないのか!」
7月29日、私たちは山口祥義佐賀県知事に対して、「熊本地震の教訓を踏まえて、玄海原発事故時の避難計画を全面的に見直すこと」「県民の命の絶対安全が確認されない限り、再稼働を認めないこと」を求めて要請質問書を提出してきました。
地震に原発事故が重なれば、道路の寸断により避難もできず、建物倒壊の危険から「屋内退避」もできなくなることが熊本地震でも明らかになりました。地震と事故が起きてからの安定ヨウ素剤の配布も不可能です。
さらに、佐賀県地域防災計画(地震津波編)では被害想定の基本的考え方として「あらゆる可能性を考慮して起こり得る最大クラスの地震・津波を想定する」とし、震度7の大地震が起きた時の被害想定を具体的に記述していますが、原子力災害との複合災害については記載がありません。そもそも県地域防災計画(原子力編)では、被害想定について具体的な記述が何もありません。
知事は前回、「原子力災害は想定外の事象が起こった場合に発生するものであり、最悪の想定について具体的な想定ができるものではない」と回答されました。「想定外ではすまされない」ということが3.11の甚大な犠牲から学ぶべき教訓のはずではなかったのでしょうか。
熊本地震が起きてしまった今こそ、避難計画を全面的に見直すべきではないでしょうか。
私たちが問い質すと、県の消防防災課の担当者は
「今のところ、見直していない。国でも見直しをやっているだろうから、必要であれば見直しを検討したい」と回答。
私たち:「今まで通りで、特に何もしていないということが分かった。しかし、熊本地震が起きたのに、どうしてまったく対応しないのかが分からない!」
県:「そういう言われ方をしても困る。文書で回答するといっているのだから」と開き直りました。
私たち:「問題は放射能だ。命と生活が奪われる。だから、こうやって声をあげている。不安な気持ちを受け止めてほしい」「国が国がという前に、県民の命を守る知事として、どうして率先して見直しをしてくれないのか。知事に私たちの声を伝え、迅速な対応をお願いしたい」と締めくくりました。
なお、山口知事が就任してから1年半。この期間の知事との質問・回答のやりとりは4回ありましたが、回答期間が3~4か月もかかっていました。あの古川康前知事時代でも回答期間は「1か月以内」でした。「県民に寄り添う」「県民との生のやりとり」との山口知事のスローガンと裏腹な実態です。ズルズル後回しにされて、再稼働させてから回答されても困るのです。こうしたことから「文書回答の迅速化と話し合いの場を求める」要請書もあわせて提出しました。
県民の命を守るために、玄海原発事故時の避難計画の全面的見直しを!
そして、「住民の安全・安心」のための最善策は、原発をなくすことです。
再稼働させてはなりません!
■要請全文
代表 石丸初美
4月14・16日、熊本・九州を震度7の大地震が連続して襲いました。
前震・本震、震源の移動など、これまでの「想定」を超える動き方をしました。余震は続き、今も全国各地で地震が頻発しています。
前震では倒壊を免れた建物が本震によって倒壊するなど、被害が拡大しました。倒壊への恐怖から多くの住民が屋内に留まれず、庭や避難所の外にテントを張って過ごさざるを得ませんでした。また、地震により道路は陥没、橋は崩落、道路網はズタズタに寸断されました。新幹線も脱線し、交通機関はマヒしました。
震源となった活断層の延長線上には川内原発があります。もしも原発事故も重なったら、放射能から逃げることも、国から指示される「屋内退避」も困難な事態に陥ってしまいかねませんでした。
東日本大震災では、助けを求める声を聞きながら原発事故のために救助を断念せざるを得ず、餓死や凍死された被災者もいました。同じことを繰り返してはならないと、全国から多くの市民が地震直後から「川内原発をただちに止めてほしい!」と署名など様々な形で声をあげました。
しかし、九電は通常運転を継続、一瞬たりとも原発を止めませんでした。田中俊一原子力規制委員会委員長は「安全上の問題は起きない。科学的根拠がなければ、国民や政治家が止めてほしいと言ってもそうするつもりはない」とまで述べました。事態を過小評価し、万が一の危険を想定して防ごうとしない政府と九電の傲慢な態度に私達は怒りを禁じ得ません。
次にいつどこでどれだけ巨大な災害が起こるか、誰にも分かりません。しかし、自然災害は止められませんが、原発災害だけは人の手で止められるのです。
全国の原発の再稼働の動きを中止し、原発・地震複合災害対策を全面的に見直しすべきです。
日頃から知事は「住民の安全・安心」をモットーとされていますが、福島第一原発事故は原発がもたらしたものです。私たちは原発の無い社会こそ安全・安心の生活が叶うものと思っています。
県民の命を預かる知事に対して、以下、要請と質問をいたします。1か月以内の回答を求めます。
【要請事項】
(1)熊本地震の教訓を踏まえて、玄海原発事故時の避難計画を全面的に見直すこと。
(2)全県民に対して、安定ヨウ素剤を事前配布すること。
原発から60キロ離れた鳥栖市においても、事故が起きたら放射線管理区域以上の被曝環境に晒されることを鳥栖市長は認めています。佐賀県全域が放射能に汚染される危険性があるのです。
数ある放射性物質のうち唯一、放射性ヨウ素だけは安定ヨウ素剤を服用することで体内への取り込みを阻止し、甲状腺を守ることができます。効果は24時間前後しかないので、手元に持って放射能到達前に飲む必要があります。避難計画では5キロ圏外は、事故が起きてから自治体職員が配布することになっていますが、複合災害時の配布は困難で、とても間に合いません。
(3)被害者となる地域住民の不安の声を無視し続ける九州電力に対して、県民を代表して以下を求めること
・震度7クラスの地震が連続して襲う場合も想定して、玄海原発の施設や配管を総点検すること。
・想定する地震の最大の揺れ(基準地震動)が過小評価だとの島崎邦彦・元原子力規制委員長代理の提言も踏まえて、玄海原発の基準地震動の評価をやり直し、対策を講じること。
(4)県民の命の絶対安全が確認されない限り、再稼働を認めないこと。
【質問事項】
(1)屋内退避について
現在の原発事故時の避難計画では屋内退避が基本とされています。しかし、熊本地震に原発事故が重なって起きていたら、「屋内退避」は不可能でした。複合災害となった時に避難もできないし、屋内退避もできないような事態となってしまうことを私たちは恐れています。この矛盾を県民にどのように説明しますか。また、どうしたら複合災害から命を守ることができますか。
(2)大地震との複合災害で原発事故が起きる想定について
「佐賀県地域防災計画(第3編 地震・津波災害対策)」は、被害想定の基本的考え方として「あらゆる可能性を考慮して起こり得る最大クラスの地震・津波を想定する」とし、県内で起こり得る「地震・津波の被害の程度を明確化」して具体的に記述しています。たとえば「佐賀平野北縁断層帯」でマグニチュード7.5(最大震度7)の地震が起きた場合、最悪で死者4300人という想定がされています。同断層や唐津市内を走る城山南断層、伊万里市内を走る楠久断層などを震源として大地震が発生した時に、玄海原発が事故となる想定は、県原子力防災計画・避難計画においてどのようになされているでしょうか。
(3)「最悪の想定」について
一方で「佐賀県地域防災計画(第4編 原子力災害対策)」では「被害想定」についての記述は、「県は、原子力災害に関し必要な対策を講じるため、原子力災害の特性を把握し、国の指導、助言及び原子力事業者の支援を得ながら災害想定の検討に努める」として具体的な記述がありません。原子力災害について「起こり得る最大の想定」はどのようなものですか。
知事は、私たちの質問書への回答(本年2月2日付)の中で「原子力災害は想定外の事象が起こった場合に発生するものであり、最悪の想定について具体的な想定ができるものではない」と回答されました。「想定外ではすまされない」ということが3.11の甚大な犠牲から学ぶべき教訓のはずです。知事のこのような姿勢は許されません。「最悪の想定をしない」という回答を撤回すべきではありませんか。
(4)土砂災害等危険区域内にある避難所と孤立集落について
原発事故時の避難所は県内で538か所ありますが、そのうち76か所(14%)が土砂災害等危険区域にあることが本会の調査で分かりました(2015年2月25日知事宛質問書)。私たちは見直しを求めましたが、知事は「見直しが必要とは考えていない」と回答されました(同9月24日付回答)。
また、複合災害時に孤立する集落の問題が報道され、県内の原発30キロ圏に孤立集落が29集落あることを私たちは指摘しました(2015年10月9日付知事宛質問書)が、知事は何の対応もされませんでした(2016年2月2日付回答)。