「みなさんはメーカーを信用しないで車を買うんですか?
非破壊検査も破壊検査もやるつもりはありません」
~12/14九州電力本店交渉 玄海原発強度不足問題のやりとり報告~
フランスでは調査対象を拡大し、原発を止めて現物検査まで行ったのに対して、日本の原子力規制委員会は同じメーカーの部材などについて、書類の確認だけで済まそうとしている問題です。
要請質問書
玄海原発3・4号機の再稼働に反対します
原発事故の加害当事者になるという重大な責任を自覚してください
2016年12月14日
九州電力(株)代表取締役社長 瓜生道明 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
玄海原発反対からつ事務所/プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
原発を考える鳥栖の会/今を生きる会/風ふくおかの会
原発知っちょる会/戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会
たんぽぽとりで/東区から玄海原発の廃炉を考える会
福岡で福島を考える会/あしたの命を考える会
2011年12月25日に玄海原発がすべて停止して5年が経とうとしています。
そうした中、11月9日に国は玄海3・4号機の再稼働の審査書案を了承しました。これは次々と出てくる重大事項の問題点には蓋をし、国民を再び原発事故の恐怖に陥れるものでしかありません。
玄海原発で事故が起きれば否応なしに放射能の被害を受けるのは私たち住民です。風下に位置する佐賀、福岡、長崎はもちろんのこと全九州の被害は甚大となり、偏西風により日本中の国土を放射能汚染で失うことになると、東京電力福島原発事故が教えてくれたのです。九州電力は原発事故の加害当事者になるという重大な責任を自覚し、真摯に受け止めてください。
福島第一原発は、5年9ヶ月を経過した今でも、各原子炉の内部に近づくこともできず、何が主因かも全く検証されていません。その検証なくして再稼働などありえません。
私たちは、フクシマの悲劇を二度と繰り返さないために命の問題だからこそ、黙っているわけにはいかずこうして何度も要請に来ているのです。
以下の事項について具体的な対応と回答を求めます。
【 要請事項 】
玄海原発3・4号機を再稼働させないでください。
【 質問事項 】
(1)3 号機プルサーマル 10 月17 日にプルサーマルからの撤退を求める申し入れの際にも質問したことへの回答を求める。
①MOX燃料装荷予定量。
②最初に16本にしたのはなぜか。
③MOX燃料を増やすことについて、関係自治体に事前了解、事前説明が必要ではないか。
④MOX燃料を倍増することによる危険性を回避するために何かの措置を講じたか。
⑤輸入した MOX燃料納品後の九電自主検査の内容を示してほしい。
(2)使用済み燃料のリラッキング
<使用済み燃料プ-ルはあと、4から5回運転でいっぱいになる。3号機使用済み燃料プールのリラッキングにつ いての国の審査は中断中。乾式貯蔵施設の技術的な検討を進めている>ということだが、
①現在の新燃料と使用済み燃料、ウラン、MOXそれぞれについて、どこにどのように保管しているのか。
②使用済み燃料は、ウラン、MOXそれぞれどこに何年保管し、いつどこへ搬出することにしているのか。
③リラッキングは、使用済み核燃料の間隔を8.3㎝狭め、貯蔵容量を2倍に増やす計画と聞くが、過密化することによる発熱量の変化や、事故時のシミュレーションをどう描いているのかを教えてほしい。
④ラックの間隔を狭めリラッキングにより高まる危険(再臨界など)を回避するために何か措置を講じたか。
⑤福島第一原発はリラッキングをすでに行っていたが、その検証、分析はされたのか。3号機燃料プールでとんでもない位置に燃料がぶっ飛んでいたという。
(3)中間貯蔵
①乾式貯蔵施設では何年貯蔵することになるのか。そのあと、どこへ搬出するのか。
②どこに建設するつもりか。原発施設内か外か、予定しているところはあるか。
③設置する場所の選定基準、施設の安全設計の基準は何か、金属キャスクの耐用年数は何年か。
④使用済み燃料を中間貯蔵する法的根拠は何か。
(4)原子炉等の強度不足
フランスで原発の原子炉容器や蒸気発生器の「強度不足」問題が発覚した。 玄海原発3・4号機の原子炉容器の上蓋と胴部、2号機の上蓋が日本鋳鍛鋼製の鍛造によるものだった。 10月31日付の九電調査報告では玄海、川内ともに「炭素偏析部の除去を実施する要領となっていることが確認できたこと」、「規格要求を十分満たす製造手順書に従い製造されたことが確認できたこと」から「評価対象全てにつ いて炭素偏析部残存の可能性はないことが確認できた」とされた。
①確認したのは製造手順書だけ、ということか。他に、製造メーカーに対し何を要求したか。
②フランスでは非破壊検査を経て初めて発見された。すべての部材について非破壊検査をしないのか。
(5)熊本地震・基準地震動
<原子力規制委員会田中委員長の本年4月18,20日の記者会見及び九電作成の議員(唐津市、玄海町、佐賀県議会)への説明書について>
①熊本地震級の地震が玄海原発を直撃した場合、原発は耐えられるか
②M7クラスの巨大地震が連発して原発直下で起こった場合、機器類の累積疲労係数はどうなるのか
<基準地震動について>
③規制委員会の規則では地震動の評価は日本で起こる3つのタイプの地震(プレート間、スラブ内、内陸活断層) についてそれぞれ計算するようになっている。九電の説明書などではそのうち内陸活断層で起こる地震しか算定していない。これは規則違反ではないか。あと二つの地震型での評価を出すべきだ。
④九電は内陸型では3つの地震動でそれぞれ地震加速度を出している。そのうち地域を特定しないものとして留 萌支庁沖を選んでいるが、なぜか。例えば、2007年の新潟中越沖地震(M6・8)など原発を実際に直撃した地震をなぜ取り上げないのか。
⑤基準地震動の策定に関して、熊本地震を踏まえ、元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は「入倉・三宅式を用いてはならない」として、別の式で再評価するよう提言した。原子力規制庁は実際に入倉・三宅式に代え て武村式を用いた試算を行ったが、試算をなかったこととし、それ以上の検討を放棄した。しかし、規制庁は「入倉・三宅式が他の関係式に比べて、同じ断層長さに対する地震モーメントを小さく算出する可能性を有していることにも留意」(「大飯発電所の地震動に係る試算の過程等について」平成28年7月27日、原子力規制庁)と、過小評価を認めている。入倉・三宅式では過小評価になると認めるか。
(6)免震重要棟建設撤回
①撤回は国民との約束違反である。当初の申請通り、免震重要棟の建設を求める。
②5月17 日付の九電資料「玄海原子力発電所における緊急時対策所の整備計画について」の中で、耐震構造と した理由について、下記部分のみを太字にして強調している。「(原子力発電所の重要な施設で既に実績のある 耐震構造であれば、)速やかに工事計画の審査対応を進めることが可能であり、更なる遅延を回避できる 」。また、 「耐震構造なら免震構造より2 年早くできる」とも繰り返し説明されてきた。 安全よりも工期短縮等コストを優先するのが貴社の姿勢なのか。
(7)安全対策
①水素爆発
過酷事故(LOCA喪失、ECCS機能喪失)が起こった場合格納容器での水素爆発の可能性があるのではないか。 九電の資料では原子炉容器破損による水素濃度上昇が格納容器特定部位で限度の13%を超え15%の値が示されているという。(雑誌「科学」March2014 0337 頁)
②海水取水口の防護
冷却用海水の取水口を防護する防波堤がなく、また貯留堰も設けられていないが大丈夫か。海水取水口及び取 水ポンプが津波(引き潮を含む)、高波などで破壊または機能を喪失した場合、冷却材のオルターナティブは確 保されているのか。温排水口の防護施設も存在していない。押し寄せる泥や砂利の津波によって温排水が逆流したり、排水口そのものが塞がる可能性が高い。温排水が不能となると取水も不能となり、冷却材喪失となる恐れが高いのではないか。
③重大事故時の放射能放出量
玄海原発の重大事故時の放射能放出量の想定について前回質したところ「4.5テラベクレル。詳細は後で知らせる」ということだったが、回答いただいていない。電源確保や格納容器の破損状況など、その計算根拠と条件はどのようなものか。
④特定重大事故等対処施設のさらなる設置期限延長
テロ対策施設やフィルターベントなどの特定重大事故対処施設の設置期限について、そもそも猶予されていたが、規制委員会は昨年11月にさらなる延長を決めた。玄海原発の同施設についての現在の建設状況と申請状況はどうなっているか。
⑤送電鉄塔の点検
福島第一原発で外部電源を引き入れている送電線の末端にある鉄塔「引留鉄構」が1978年から未点検だったことが発覚、規制委は本年11月2日、保安規定違反にあたると判断した。玄海原発の鉄塔は、これまでいつどのような点検を行ったのか。
⑥東電ケーブル火災事故
10月12日に発生した東京電力の地下送電ケーブル火災事故は、ケーブルの経年劣化による絶縁低下が原因で あったと推測されている。ケーブルは 35 年間使用し、年に 1 回の目視点検だけだった。玄海原発のケーブルはどの程度の点検を行っているのか。ケーブルの絶縁低下は起こらないといえるのか。
⑦過酷事故時の運転操作手順書(AOP,EOP,SOP)の開示を求める。
(8)再稼働地元同意と住民説明
9月28日の佐賀県議会原子力特別委員会において、再稼働の地元同意に関する質疑の中で、山元取締役は「九州全体が地元」だと発言した。
①地元である九州全域の住民の理解と同意をどのように得るのか。
②地元同意については唐津市を玄海町と同等の原発立地自治体という立場で扱う必要がある。原発5キロ圏内人 口では8割が唐津市民である。
③伊万里市長、神埼市長が再稼働反対を表明している。これらを踏まえて再稼働をやめるべきではないか。
④佐賀県と玄海町と締結している安全協定について、住民の安全の担保のために「運転停止を含む適切な措置 を講ずるよう求められた時にこれに応じること」を明記すべきではないか。
(9)原子力防災・避難計画
①事故を前提とした原発のために住民は避難を強いられる。加害当事者として10月10日の原子力防災訓練における住民避難について、どのように総括しているのか。
②佐賀県地域防災計画では佐賀平野北縁断層帯や唐津市を横切る城山南断層などで震度7の地震が想定されている。そうした自然災害と原発事故との複合災害について、九電としてどのような具体的な想定をし、避難計画に関与しているのか。
③九電の「緊急時の原子力防災要員」とは、通常、組織的にはどの部署から何名の社員が配置されるように計画されているのか。
④県や自治体が行う原子力事故避難訓練に原子力防災要員を派遣し、原子力防災資機材の貸与その他必要な措置を実施するとあるが、今年度は何をし、どんな協力をしたのか。
⑤緊急事態応急対策等を実施するために、関係機関への原子力防災要員派遣する、原子力災害事後対策として、地域復旧のための関係機関への原子力防災要員派遣を実施するとあるが、その関係機関の要請を待つだけでなく、自主的にはどんなことを考えてどんな派遣人員を準備しているのか。
(10)玄海町、唐津市民の白血病罹患率の高さ
①玄海原発はトリチウムの放出量が突出して大きい。どこかが破損して漏洩しているのではないか。
②玄海町、唐津市民の白血病罹患率の高さは著しく、脅威を感ずる。トリチウムの異常放出量が原因と考えられる。 通常運転で放出する放射能で周辺住民の体に深刻な病変を与える原発は欠陥原発として廃炉にするべきではないか。
③玄海原発周辺で行われた「北部地区住民健診」(1973 年~2010 年)の報告書が玄海町によって破棄されていたことが発覚した。同調査には九電もオブザーバーとして加わっている。調査報告の公開を求める。