【1/19佐賀県原子力安全専門部会第3回会合傍聴記】

【1/19佐賀県原子力安全専門部会第3回会合傍聴メモ】

佐賀県「玄海原発再稼働に関して広く意見を聴く委員会 原子力安全専門部会」第3回会合を傍聴してきました。

傍聴者は10人でした。

12月27日の第1回会合はプラント関係の説明と質疑、第2回は昨日、現地視察が行われ、3回目の今日は地震・津波などの説明と質疑でした。

 

※前回「玄海原発再稼働に関して広く意見を聴く委員会&原子力安全専門部会」初会合傍聴記

https://saga-genkai.jimdo.com/2016/12/26/a/

 

今回は地震学が専門の二人の委員から、九電の説明に対して質問がたくさん出されました。原子力業界と縁の深い原子力工学系の他の委員とは少し雰囲気が違うようでした。

 

以下、専門的内容は十分理解しておらず、ポイントを突いた報告をできませんが、雰囲気だけでも分かってもらえればとメモを記します。

 

●地震について:井嶋克志・佐賀大学教授(地震工学)

井嶋氏「城山南断層が唐津湾の端で終わっているが、その先にリニアメント(直線的地形)があると補足資料にある。心配だ」と質しました。

九電が「詳細に調査したが、活動性のある断層ではないと判断した」と答えると、この質問はあっさり終わってしまいました。

井嶋「構造物の地盤の安定性はどこかで説明があるのか」

九電「それは...」

佐賀県「次回以降説明させていただきます」と助け船。

井嶋「安全率はどれぐらいか」

九電「安全率としては2を考えている」

井嶋「構造物では3だが。まあ、分かりました」と、これ以上は突っ込みませんでした。

他にも、井嶋氏は配管の規定、波及的影響による検討事象など事実確認の質問をしていました。

 

●地震について:竹中博士・岡山大学教授(地震学)

竹中氏「壱岐北東断層群と警固断層は連動した場合を想定しているが、水縄断層と佐賀平野北縁断層帯とが連動した場合は想定していないのか」と質すと、

九電「計算していない。敷地との距離等から、警固断層のケースで代表して行ったものだ」

竹中氏「警固断層は方位が違う。アスペリティの位置、サイズによっては、大きなパルスが出るのが予想される。もし連動想定されるのであれば、警固断層は参考にはならない。」

九電「ご指摘はその通りかと思う。敷地との距離等の関係で申し上げた。長周期であれば膨らんでくると思うが、敷地に影響を与える度合いとしては警固断層の方が大きいと考えている」

竹中「それは全然違う、そうはならないと思う。アスペリティも違うし。全然違う結果になる」

九電「発電所は固い岩盤の上に立っているので、注目すべきは短周期になる。それで基準地震動を策定している。しかし、重要構造物以外も視野に入れると、先生のご指摘はごもっともだと思う。重要なポイントと思うので、さらなる安全性を高める観点で、スタディはやってみたい」

・・・などと、専門家と九電の見解がまったく違うことが明らかになりましたが、九電は見解は変えないままに、「スタディしていく」というだけ。スタディを尽くしもせずの再稼働など許されません。

さらに、長周期地震動の問題、地盤増幅率の問題、せん断波速度の問題、微小地震の分布状況、要素地震の選定など、かなり多数の疑問点が出されました。

九電の回答は次回に持ち越されたものもありますが、竹中氏は納得していないように見えました。

専門家には、ぜひ引き下がらないでいただきたいと思います。

 

●火山について

(九電は火山について敷地に影響を与えるとして考慮しているのは九重山だけで、火山灰の層厚2.2センチと想定しています。その九重山からの「月別の火山灰シミュレーション」というのが資料で出されましたが、全月とも「偏西風の影響で、年間を通じて東方向に伸びる傾向」となっています。火山でやるぐらいなら、玄海原発自体の事故時の放射能シミュレーションを同じように月ごとに図示したらどうでしょう。毎月、必ず福岡方面へ流れていきますよと。)

 

竹中氏がここでも質問「モニタリングは具体的にどうしているのか。どういう膨張が起きるか、定性的なシミュレーションはしているのか。活動的な火山を九電はちゃんと把握できるのか。気象庁などが判断を出す前に、九電がどうモニタリングして分かるのか」と次々と質しました。

九電は「我々が対象にしているのは破局的噴火で100年ぐらいのスパンで日々監視している」などと答えました。

部会長の工藤和彦氏(「経済やエネルギーのためには安全上のリスクを含むものでも使う必要がある」発言=2012年3月14日朝日新聞)が、時間を気にしながら、「規制庁が考えることなので、次回聞いてみたい」と引き取りました。

 

●免震重要棟について

前回会合で、「緊急時対策所の完成時期はいつか」の質問に対して、九電は「再起動後に工事計画書を出すので数年はかかる」と平然と答えましたが、質疑はそれで終しまいでした。免震重要棟建設を放棄したことはまったく触れられませんでした。

今回は、最後に前日の視察を踏まえての意見がいくつか出る中で、井嶋氏が免震のことを取り上げました。

「阪神大震災で壊滅的になったことで、免震装置のよさが認識された。私も土木の人間だから分かる。構造の揺れも低減されるし、建物中も加速度が下がり、非常に安全。なおかつ、免震装置が壊れたら、それだということで対処できる。免震装置がでてきたのは、耐震設計では限度があるからだ。70年代から耐震をやってきたが、加速度がどんどんあがってきて、最初は200とか300とかだったのが、1000ガルとかになった。それに耐えられる構造物をつくらなければいけない。想定外の揺れがきたらどこが壊れるか分からない。何が原因で免震が採用されないのか聞きたい」と質しました。最後に「世の中いったいどうなっているのかと思う」とまで言いました。

九電は「免震できない理由は、2つある。1つは想定以上に水平レベルの地震が大きいということ。長周期80が普通だが、200が求められる。大きな水平方向の地震になる。もう1つは、上下方向の地震で免震は増幅されて、建物が浮き上がってしまう状態になってしまう、これでは審査がパスできない。」と答えました。

それでは足りないと思ったのか、別の九電社員が「壊れたら取り換えればいいが、原発の許認可では、免震装置まで健全でなければいけないというのがある。原子力特有の事情があって、難しいところがあるが、努力は続けていく。原子力における設計のプライオリティを考えると、困難である。」と続けました。

さらに別の九電社員が「悩ましい。全部、剛でつくってきた経験しかない。機能を要求されるので、強度だけじゃなくて、遮蔽とかも考えると、今の規制の中で免震にチャレンジするのは、いろいろ厳しい、変遷して、できるだけはやくつくっていこうということでございます」と答えたところで、工藤部会長が「規制庁とも意見交換をお願いしたいと思う」と質疑を終わらせました。

「安全な技術」よりも「早期再稼働」に優先順位があるという、これまで同様の言い訳を繰り返す九電でした。

 

玄海原発の地元、佐賀大学に免震構造について専門的に話せる人がいたのを初めて知りました。なぜ今まで声を上げてくれなかったのでしょうか。事がここまで及んで、遅きに失している感じもします。

この後、どうされるのでしょうか。簡単に引き下がらないでいただきたい。

「世の中いったいどうなっているのか」と感じるのなら、これから、一緒に声をあげてくれませんか!

 

●2/2次回専門部会の傍聴を!

今日は9時半から13時40分まで、間に5分休憩1回だけの計4時間の会合でした。質疑があれほど出るとは県も想定外だったのでしょう。それでも、このような議論の場と時間が圧倒的に足りていません。

全国の原発で大問題となっている基準地震動過小評価や、熊本地震のような連続大地震に機器が耐えられるのかなどの問題は、まったく触れられもしませんでした。最近の原子炉容器の強度不足の問題をはじめ、重大な影響を及ぼす安全性の問題が山積しています。「専門家」会合なら、本来ここで時間をかけてきちんと議論して、その中身を県民に示さなければならないはずです。

 

この専門部会は何の責任も持たされておらず、単に「知事にアドバイスする」だけの部会とされています。しかも、部会長は推進派学者で、再稼働容認が規定路線です。もう、どうにもならないでしょうか...

いや、ここで何が話され、専門家が何を言い、九電や国がどうこたえ、県がどのようにふるまうのか、市民として監視し、みんなに知らせていかなければなりません。「この場で、こんな酷いことが進められてますよ!」「こんな問題点に、九電は何も答えてませんよ!」と。

 

「広く聴く委員会」委員への働きかけ、市町や議員への働きかけ、知事への要請、そして裁判etc…、再稼働止めるためにやっていかなければならないことが山のようにたくさんありますが、専門部会傍聴についても、みなさん、ぜひお願いします。特に技術に強い方!再稼働を止めるための材料の1つになりますので、力を貸してください。よろしくお願いします。

議事録も出されるはずので、ぜひ検討して、次の行動に活かしましょう。

 

次回第4回専門部会は2月2日(木)(時間未定)です。原子力規制庁が説明に来るようです。

傍聴をよろしくお願いします。