4月11日から佐賀県議会臨時議会が招集され、自民党から玄海再稼働容認決議をあげる動きがあるなど、情勢が緊迫しています。
そうした中、今日4月3日、「説明会などで九電・国・県からは真摯に回答がなく、県民の不安と不信はまったく消えていない」として、山口祥義知事と中倉政義県議会議長に対して、再稼働に同意・容認しないよう求める要請を行いました。
先日訪問した馬渡島で実感した、離島住民を置き去りにするような避難計画の実効性のなさや、知事の無責任な発言の数々も指摘し、「命のことを最優先に考えてください」と訴えました。
今年に入ってから私達が知事宛に要請質問書を提出するのは他団体共同も含めて5度目。質問項目は89項目にもなりますが、いまだに1つも回答がありません。私達の質問や、説明会や専門家意見書などで出されている質問・指摘に対して何も答えないままに、知事が「判断」するのは独裁ではないかと、回答と説明の場を求めました。
今日の要請行動には、これまで座談会などで一緒に学んできた育児中のママ達もお子さん連れで多数参加。ママの一人は「命の危機を脅かすものだけはやめてほしい」と訴えました。
県担当者はいつも同様「知事に伝えます」というだけでしたが、こうした県の姿勢を変えさせるために、とにかく世論をつくっていくしかありません。
同意権限を持つ佐賀県知事に対して、ひきつづき各地各団体各立場から連日のようにどんどん要請行動を起こしていきましょう!
なお、「脱原発佐賀ネットワーク」9団体連名でも、知事に対して「公開討論会の開催を求める要請」と、議長に対して早急な議決をしないよう求める要請を行いました。
要 請 書
再稼働に対して県民の不安と不信は消えていません
玄海原発3・4号機再稼働に同意しないよう求めます
2017年4月3日
佐賀県知事 山口祥義 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
玄海原発反対からつ事務所
(1)
玄海原発3・4号機の再稼働へ向けて、県民説明会、広く意見を聴く委員会、GM21ミーティング、議会審議などの「地元同意手続き」が大変な勢いで進められてきました。しかし、これまでのプロセスを見ると、九州電力と国という推進・容認する側からの一方的な説明があっただけで、県民に公平な判断材料は示されませんでした。
①審査書案に寄せられたパブリックコメント4200件に対して、原子力規制委員会は一括回答しただけ。
②県民説明会では、九電と国は長々とした説明や同じ内容の繰り返しばかり。県民の質問・意見はすべて再稼働に反対・慎重の立場からだったが、真摯な回答はなかった。
③広く意見を聴く委員会では「原発事故が起きたら、日本の農産物は食べられなくなる」(農協組合長)、「人の命を救わなければいけないという職業倫理がある。福島ではふるさとに戻れない現実がある」(看護協会会長)、「避難計画は机上の計画」(介護老人保健施設協会会長)など、再稼働に反対の声が7人から出された。
④市民が推薦した原発に慎重・反対の立場の専門家を県は原子力安全専門部会に採用せず、意見聴取だけ行った。しかし、ホームページに公開するだけで、指摘された内容に対して県は何も対応していない。部会は再稼働を前提として審査書に限定した指摘に終始し、原発を心配する市民や専門家が指摘してきた安全性にかかわる重大な問題点について議論しないままに終了した。
⑤GM21では「住民の不安に寄り添うのが首長の責務」と語った伊万里市長をはじめ、神埼市長、嬉野市長の3人が再稼働反対を明言。他の首長からも安全性に対する懸念、福島原発事故が収束していないこと、避難計画の不備、使用済み核燃料の処分方法未解決などへの指摘があった。
⑥「ご意見メール」「ご意見箱」に寄せられている意見は、再稼働に反対が大多数である。
⑦これまで私達が提出している以下の要請質問書への回答をまだ受けていない。
・1月12日提出要請・質問書「国の原子力災害対策指針は被ばく計画/原子力避難訓練は住民が放射能から逃げる訓練/県民に放射能被ばくを強要しないでください」(質問60項目)
・2月27日提出要請書・付属質問書「同意権すら放棄したのは無責任/県民の生命と財産を守るのが知事の最大の責務/玄海原発再稼働に同意しないでください」(質問5項目)
・3月9日提出要請書(佐賀9団体)「"命のことを考えてください"/5回の再稼働説明会は周知徹底されていなかった/全市町で公平な住民説明会と公開討論会の開催を求めます」(質問24項目)
これだけの不安や不信の声が住民や首長からあがっても、九電と国はフクシマの犠牲などなかったかのように、経済やエネルギーを優先して再稼働を強引に進めようとしているのです。
知事は九電と国の「説明」の場を設定しただけ、「県民から意見を聴きました」というだけで終わりにせず、これまでに様々な場で出されてきた数々の質問や要請一つ一つに対して「真摯に、愚直に、真っ直ぐに向き合って」答える責任が知事にはあります。
回答・説明の場を必ず設けてください。
原発に慎重・反対の立場の専門家も入れた公開討論会も開いてください。
また、事故時に困難な状況を強制される要援護者の方達、放射線の影響を受けやすい子ども達、育児中のママやパパ達、離島住民などは県民説明会にどれだけ参加できたでしょうか。こういう人達にこそ、一人ひとりに丁寧に説明する必要があるのではないですか。
(2)
住民にとって最も切実な問題が、襲ってくる放射能からどうやって逃げるかです。
私達は先日、玄海原発から9キロに位置する唐津市の離島、馬渡島を訪れ、一軒一軒まわって住民からお話を伺ってきました。その時、見聞きしたことは――
・原発事故時に悪天候なら船で避難できない。定期船でピストン往復では間に合わない。自分の船で逃げても、唐津の港に船をつなぎとめる「もやい」が足りなくなる。普段は長崎方面に漁に出ていることが多いから、船がない。原発へ向かって避難することになる。避難できても放射能が追っかけてくる。船は放射線防護対策されていない。
・屋内退避施設は狭い空間に住民を閉じ込める計画。簡易トイレの密封パックは1人3回分。
・市職員が島に常駐しておらず、事故が起きれば消防団と住民で避難誘導や蛇腹式テントの設置を行う。
・安定ヨウ素剤は事前配布されず、診療所に備蓄されているだけ。配布方法は「検討中」。住民がそのことを知らない。ヨウ素剤配布時にそこにいなければいけない医師が向島では2週間に1回、松島では週1回しか来ない。高島と神集島では本土から通っていて、夜間は不在――などなど。
馬渡島の人たちは、毎日目を覚ませば真正面に玄海原発がそこに見えます。
「生まれた時から原発を見てきた。いい気持ちはしない」「原発はないのがいい。しかし、我々の意見を言うところがない」「誰に言ったらいいのか分からない」と嘆きの声をたくさん聞きました。
知事は2年前に馬渡島を視察した際に「一番の心配は原発事故だ」と不安を訴える住民に対して「気持ちは分かる。そこは大丈夫」と応じたそうですが、どこが大丈夫なのですか。知事はこうした島の人たちの本音を聞いてください。玄海原発には30キロ圏内だけでも17の離島があり、19000人が暮らしています。原発事故時の避難は困難を極めます。離島をはじめ全住民の安全を保証できないような実効性なき避難計画の下での再稼働などありえません。
(3)
2月21日の唐津での県民説明会において知事は「今稼働している、していないにかかわらず、玄海原発がそこにある。・・・ここになかったらということであれば、私の判断というものは決まっている。今あそこに佐賀県が受け入れた原発があり、我々の背負った大きな課題だ」と発言しました。
原発を稼働させたら核分裂反応に伴うリスクは増大します。行き場も決まっていない核のゴミをさらに増やすことになります。「今そこにあるから、再稼働はやむを得ない」というのはあまりに無責任です。住民や未来の世代に対して、リスクを背負わせないでください。
知事は2月14日に「そもそも同意権はなかった」と発言、自らの責任をないものにしてしまいました。
3月24日には臨時県議会招集に関して 「いたずらに引き延ばすのはどうかと思う」と発言しましたが、命の安全にかかわる説明責任を果たさないままに、「いたずらに」などと発言されたことに怒りを禁じえません。
知事は県民の命の安全を背負っているという自覚をもって、真摯かつ丁寧な説明を時間かけて尽くすべきです。
佐賀は水もきれいだし空もきれい。おいしい食べ物もいっぱいあります。
ひとたび原発で重大事故が起きたら、住民は放射能被ばくの危機にさらされ、佐賀の地は放射能に汚染されて、二度と戻れなくなるかもしれません。それが不安でならないのです。
被害は玄海町、佐賀県内にとどまりません。福岡、長崎、ひいては世界中の人々の生活に影響を及ぼすことは、フクシマで明らかとなりました。その人々の命と財産に貴職の判断が大きな影響を与えるのです。
東京電力福島第一原発事故は今なお終わっていません。
命のことをどうぞ最優先に考えてください。
【 要請事項 】
知事は県民から出ている質問や不安の声への説明責任を果たしてください。
県民の命を背負っている自覚をもって、再稼働に同意しないでください。
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玄海原発 3,4 号機の再稼働については,県民の理解は得られているとは思われず,短期間の審議で再稼働の是非についての議決をされることのないよう,強く要望します。議会としても十分な調査検討と何らかの方法での県民意見の聴取を行って下さい
(「脱原発佐賀ネットワーク」9団体連名)
■報道
◆NHK(04月03日 18時26分)
【原発)再稼働不同意を要請】
https://youtu.be/rBADdW5xO5U
九州電力・玄海原子力発電所の3号機・4号機をめぐり、市民グループが再稼働に同意しないよう求める山口知事あての要請書を提出しました。
玄海原発3・4号機の再稼働をめぐっては、県民向けの説明会などが終わり、今月11日には、県議会の意見を聞く臨時議会も招集されるなど知事の最終的な判断に向けて大詰めを迎えています。
こうした中、3日、市民グループが県庁を訪れ、再稼働に同意しないよう求める知事あての要請書を提出しました。
この中では、▼県民説明会で再稼働に反対する意見への真摯な回答はなかった、▼メールなどで県へ寄せられている意見も反対が多数などとした上で、「山口知事には、こうした質問や要請に対して答える責任がある」としています。
市民グループの石丸初美代表は、「私たちの不安や不信に答え理解を得られるようにまず努力してほしい」と話しています。