4月10日、佐賀県知事と県議会議長に対して、再稼働判断前に離島等に安定ヨウ素剤の事前配布を求める要請書を提出しました。
離島へのヨウ素剤の事前配布について、3月31日の政府交渉で内閣府原子力防災や規制庁の担当者は「自治体が必要性を判断すれば事前配布をしてもいい」「国は拒否する権限も、拒否の基準もない。協議する」「佐賀県からは、離島等への事前配布の要望は来ていない」「まずは佐賀県から国に要望してもらわないと進まない」と述べました。
長崎県松浦市鷹島においては、市から県、県から国や要望があがり、5キロ圏外であるにもかかわらず事前配布が実現しています。
なぜ7つの離島を抱える唐津市と佐賀県はやらないのか?
私たちは「命の問題なんです。どうしたら実現してくれるんですか。島の人たちが懇願してもだめなんですか」と訴えても、
医務課の担当者は「総合的にいろんな要素を勘案して対応することになると思う」
「どうするかを協議します」
「文書で回答します」
というばかりでした。
「総合的って何ですか」と質すと
「制度的なこととか...」
「国が認めると言っているではないか」
「・・・」
なぜ、国に要望しないのか、私たちは早急な回答を求めました。
ヨウ素剤のことも含め、1月12日にも避難計画・訓練についての具体的な質問60項目を佐賀県に提出していますが、3か月経った今なお回答がありません。
こんな状態のまま、再稼働の判断をするなどありえません!
※4月3日以降の1週間で裁判の会として5回目の要請書提出行動となりました(知事に再稼働不同意/知事に上蓋未交換問題/唐津市長と議長にヨウ素剤離島配布/知事と議長にヨウ素剤離島配布、佐賀ネット9団体による公開討論会要望)。
要請・質問書
避難計画に実効性もないまま 再稼働は許されない
再稼働判断前に離島等に安定ヨウ素剤の事前配布を求めます
2017年4月10日
佐賀県知事 山口祥義 様
佐賀県議会議長 中倉政義 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
玄海原発反対からつ事務所
国は原子力災害対策指針に基づいて、PAZ圏(5キロ圏)の住民に対しては、避難に際して服用が適時かつ円滑に行うことができるよう安定ヨウ素剤を事前に配布することとしています。PAZ外で唐津市には7つの離島があります。
私たちは、去る3月26日馬渡島(玄海原発から約9Km)を訪問しました。島民の方に話を聞きました。「島から唐津港までの避難は、定期船でピストン輸送と聞いているが、事故が本当に起きたらみな自分の船で逃げる。しかし、港に船をつなぎとめる"もやい"が足りないから無理です」「ふだんは長崎方面に仕事(漁)でいないことが多いから、直ぐ逃げたくても船がない。避難訓練したところで、島を出ることができるかどうかが一番の問題」「原発など要らん。でもこの不安の気持ちをどこに言うてよかかわからん」と嘆きに見えました。島の世話人の方も、ヨウ素剤を診療所に備蓄されていることは知りませんでした。
玄海原発で万一事故が起きたら、島の診療所の医師が配布するとなっていますが、常時医師がいる島ばかりではありません。島に唐津市の職員もいないと聞きました。また、山の上から降りて来なければ一時避難施設には辿り着けません。
私たちは3月31日、ヨウ素剤の事で政府交渉をしました。政府の回答は、「離島や災害等で孤立する可能性のある地域での事前配布については、自治体が必要性を判断すれば事前配布をしてもいい」と、自治体からの要請があれば基本的に認めると回答しました。玄海原発から30km圏内の鷹島(長崎県)は、避難の際に原発に近づくことになるため、長崎県から要望があり、島民に事前配布しています。松浦市は自治体として、住民の命に係わることだけに当然のことを実行しているということでした。
数多ある核種のうち唯一、放射性ヨウ素だけは安定ヨウ素剤を服用することで体内への取り込みを阻止し、甲状腺を守ることができます。これら最低限住民の身を守るための安定ヨウ素剤についてなんの準備もなく、再稼働を進めることは許されません。
県民の健康を第一に考えるなら、安定ヨウ素剤を事前配布するしかないと考えます。
以下、質問と要請をいたします。
【 質問事項 】
3月31日の安定ヨウ素剤の事前配布求める政府交渉では、以下の点を確認しました[別紙資料参照]。
①離島や自然災害で孤立する可能性のある地域では、住民に安定ヨウ素剤を事前配布することを基本的に認めています。規制庁と内閣府は、佐賀県からは要請がなく、長崎県からは要請があったため鷹島で事前配布を実施していると述べています。
<質問1> なぜ、佐賀県は要望しないのですか。
②幼稚園や保育所等での事前備蓄、幼稚園等に通っていない子どもたちへの事前配布について、規制庁と内閣府は基本的に認めています。
<質問2> 佐賀県はなぜ子どもたちへの事前配布を実施しないのですか。
【 要請事項 】
玄海原発の再稼働を認めるかどうかを判断する前に、
1.全ての離島、自然災害で孤立する恐れのある地域で、住民に対して安定ヨウ素剤を事前配布すること。
2.30キロ圏の全住民に安定ヨウ素剤を事前配布すること。加えて、30キロ圏内の学校・幼稚園・保育所、病院、福祉施設等の要援護者施設に安定ヨウ素剤を配備すること。
3.30キロ圏の3歳未満の子どもたちに、ゼリー状の安定ヨウ素剤を事前配布すること。
3月31日 安定ヨウ素剤の事前配布を求める政府交渉での確認点
3月31日、参議院議員会館にて、安定ヨウ素剤の事前配布を求める院内集会と政府交渉を行いました。以下に、佐賀県に関係の深い問題について、交渉での確認点を紹介します。
○交渉主催:鹿児島・佐賀・鳥取・福井・京都・兵庫・大阪・首都圏の市民団体
○国側の出席者:
内閣府政策統括官(原子力防災担当)付参事官(総括担当)付参事官補佐 林田浩一氏
原子力規制委員会原子力規制庁放射線防護グルーブ 原子力災害対策・核物質防護課
樋口英俊氏 防災専門職、外1名
1.離島や災害等で孤立する可能性のある地域での事前配布について
(1)離島や避難が困難な地域では「自治体が必要性を判断すれば事前配布をしてもいい」。
規制庁は、自治体が必要性を判断すれば基本的に認めると回答。
(2)このような地域に自治体が事前配布したい場合、
「国は拒否する権限も、拒否の基準もない。協議します」(内閣府)
(3)このような地域に事前配布を要望された場合
「『証拠』がないからと門前払いすることはない」(内閣府)
(4)佐賀県からは、離島等への事前配布の要望は来ていない。
「佐賀県から離島も事前配布すべきだ、議論しましょうといったことは上がってきていない」(内閣府)
(5)「まずは佐賀県から国に要望してもらわないと進まない」(内閣府)
(6)玄海原発から30km圏内の鷹島(長崎県)は、避難の際に原発に近づくことになるため、長崎県から要望があり、島民に事前配布している。(内閣府)
2.学校・幼稚園等の避難弱者の施設での備蓄について
(1)規制庁のガイドライン※1で学校・幼稚園等の要援護者施設への備蓄は「必要」「「必要性が高い」等と示していが、これらは「例示」としてあげたもの。
(※1「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」(原子力規制庁))
(2)幼稚園等を例示としてあげたのは「小さい子どもは放射線の感受性が高いから」(規制庁)
(3)学校や幼稚園での備蓄は、早く配るためには必要。
「当然できるだけ早く配ろうということであれば、そこ(幼稚園等)に置いておくということが一番の結論ではないかと考えますので、そのように自治体に説明はしていきたい」(内閣府)
(4)幼稚園・保育所等に通っていない子どもたちへの事前配布は、自治体が必要と判断すれば事前配布していい。
「はい。してはいけないと言っている訳ではなく、調整してやっていただければと思います」(規制庁)
2017年4月10日
資料 |
安定ヨウ素剤事前配布を求める活動の経過
2017年4月10日
<2015年>
●10月9日 佐賀県知事への質問書
「安定ヨウ素剤の事前戸別配布は5キロ圏内だけ。なぜ5キロ圏外の全県民に対して配布しないのか」
<2016年>
◆1月29日 知事回答
「原子力災害という非常に限定された事態」「非常に限定された条件下でのみ使用される」から、事前配布しない方がいいと回答。
●7月29日 知事への質問書
熊本地震も踏まえて、全県民への安定ヨウ素剤事前配布を要請。回答なし。
●8月5日~22日 佐賀県内全20市町へ要請・陳情
●8月15日~9月6日 福岡県内17市町へ要請・陳情(30キロ圏の糸島市と避難先16市町)
◆8月18日 知事記者会見
(5キロ圏外への事前配布について質問され)知事「闇雲にやるのはどうかなと思います」と回答。
●10月10日 原子力防災避難訓練見学
玄海町(町役場)と伊万里市(大坪公民館)の安定ヨウ素剤配布訓練見学 (※会場配布資料添付)
◆12月6日 県議会
県健康福祉部長「高齢者や要支援者などUPZにおいて緊急時に配布が困難と考えられる住民に対しては、他県の事例も参考にしながら、事前配布も含めた配布の方法について検討」
<2017年>
●1月12日 知事への避難訓練・計画に関する質問書 ※回答ないまま3か月経過
●3月31日 全国の市民団体共同の「安定ヨウ素剤事前配布を求める政府交渉」