【国が地震動データ改ざん 3重のウソ・ゴマカシ】

【国が地震動データ改ざん 3重のウソ・ゴマカシ】

※『玄海プルサーマル裁判ニュース』第25号より

 

<国が数値を勝手に書き換え>

 神戸製鋼データ不正問題の影響で、玄海再稼働の時期が2か月延期されることとなりましたが、12月1日の行政訴訟第15回口頭弁論では、最大の争点、基準地震動過小評価問題で国による地震動データ改ざんが明らかとなりました(行政被告第13準備書面)。

 国が証拠として出した図表上の数値を原告が実際に読み取ってみると、引用元の宮腰ら論文とまったく違った数字になっていたのです。私たちの命の安全に関わる重大な問題で改ざんを行うなど、断じて許されません。釈明を求めました。

 また、地震のエネルギーの大きさを求める経験式について、国や電力会社が金科玉条のように扱う「入倉三宅式」がいかに根拠薄弱なものかを、具体的な検証に基づいて行政原告準備書面(12)で指摘し、法廷でも鋭く追及しました。

 

■データ改ざんのからくり

●基準地震動とは

 基準地震動とは、原発周辺において発生する可能性がある最大の地震の揺れの強さのことで、原発ごとに策定します。「断層モデル」という手法では、入倉・三宅式という経験式が用いられています。過去に各地で起きた地震の断層面積と、地震の規模(地震モーメント)とをグラフ上に点として落とし、その関係から平均式(グラフ上の直線)を編み出します。その際、世界の地震の平均をしたのが入倉・三宅式、日本の地震の平均をしたのが武村式です。

 同じ断層面積から、地震モーメントを算出すると、武村式は入倉・三宅式の4.7倍にもなります。つまり入倉・三宅式では過小評価となり、基準地震動が小さくなってしまうことから、より安全側に「武村式を使うべき」というのが、原告の従来からの主張です。

 

●国の証拠の元データに改ざんの疑い

 被告・国は、入倉・三宅式で問題ないとする主張の根拠として「図2」(=Aとします)を示しました。図2は「宮腰ほか(2015)」という論文の「表6」(=B)というデータを基に、国が作成したものです。

 しかし、Bをよく見てみると、その元文献(=C)の数値から大きく書き換えられているものがありました。

 ・1948年福井地震の断層面積が300→600と2倍に。

 ・1945年三河地震は300→750と2.5倍に。

入倉・三宅式の妥当性を主張する方向への変更であり、「宮腰ほか」らによる意図的な改ざんが疑われます。

 

●国自身がさらに数値を置き換え

 さらに、原告がAのグラフ上にある断層面積の数値を測って読み取ってみると、国はBを基にしてAを作成したというのに、Bとは別の値に置き換えているということが分かりました。

 ・福井地震で600→300  ・三河地震で750→375

 国自身が「宮腰ほか(2015)」のデータが信頼できないものであると認め、こっそり再修正したのです。

 

●置き換えた数値の根拠は「不明」

 宮腰氏らは5月30日付で該当箇所について、「論文のデータに誤りがあった。お詫びして、訂正する」と発表しました。しかし、単なる誤記とは考え難いです。

 また、国が置き換えたデータについても、元文献をたどると「出所不明」と注意書きがありました。

 これらの3重のデータ改ざんや、根拠のない置き換えについて、国に対して釈明を求めました。

 

●なぜこのようなことをしたのか?

 数値を置き換えることで、地震データのうち断層面積はより大きく、地震モーメントはより小さく評価することで、武村式を否定して、入倉・三宅式の正当性を主張したかったとしか思えません。

 

※参考:解説記事

 地震動の過小評価を合理化しようとする「宮腰・入倉・釜江(2015)」による断層面積のデータ改ざん(10月23日、美浜の会)

http://www.jca.apc.org/mihama/saikado/datakaizan171023.pdf

 


ダウンロード
原告 準備書面12
2017年11月24日 原告提出
20171124行政原告準備書面(12)●.pdf
PDFファイル 2.2 MB