玄海再稼働に向けた燃料装荷が来週16日にも迫る中、更田委員長が2月11日に原発を視察し、原発30キロ圏3県8市町(佐賀県、長崎県、福岡県、玄海町、唐津市、伊万里市、松浦市、平戸市、佐世保市、壱岐市、糸島市)の首長らと意見交換するというので、その前に全11首長に対して「更田委員長に住民の再稼働への疑念を伝えてください」と要請を緊急に行ってきました。
8日に玄海町と唐津市、9日に福岡県と糸島市と佐賀県に直接提出し、他の首長にはメールとFAXで送付しました。
玄海町では、昨年の避難訓練の課題は何だったかを問うと、管理統括官は「問題点は...特に聞いていないので」などと発言、一同唖然としました。唐津市の担当課長は「再稼働とは避難計画とは別。少しずつ改善していく」と言うばかり。
私たちは「避難計画ができていると自信を持って言えないなら、再稼働をちょっと待ってくれ、となぜ言えないのですか」
「九州電力のためになぜ被ばくをガマンしなければならないのか」
「住民の命を守る立場の自治体から、国にものを言ってください」と強く強く要望しました。
福岡県には仲間17人が集まり、それぞれ思いを述べ、大事な要請内容がきちんと知事に伝わるように重ね重ね訴えました。
糸島市では提出だけとなりましたが、緊急に集まった仲間の連帯を確認することができました。
要請書タイトルにある「やむを得ない」という言葉は佐賀県の山口知事が再稼働同意の時に放った言葉です。放射能被ばくを強いる原発を「やむを得ない」とは、私たちは納得できません。このこと浮彫にするために知事宛には再度、「なぜ九電の経営のために一方的に被ばくを受けなければいけないのか、なぜ『やむを得ない』といえるのか」と問う質問書もあわせて提出しました。再稼働されてしまう前に必ず回答することを求めました。
来週16日にも再稼働へ向けて燃料が装荷されると言われていますが、諦める訳にはいきません。
なんとしても再稼働を阻止しましょう!
九電へ抗議の電話を!→九州電力本店TEL:092-761-3031
各自治体にも住民の声を伝えましょう!
◆◆◆ 要 請 書 ◆◆◆
原発再稼働に対する住民の不安を更田委員長に伝えてください
原発は「やむを得ず」動かす施設ではありません
2018年2月8日
唐津市長 峰達郎 様
佐賀県・長崎県・福岡県の玄海原発30 キロ圏内県市町首長 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会/玄海原発反対からつ事務所/
今を生きる会/原発知っちょる会/脱原発!いとしまネットワーク/
戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/東区から玄海原発の廃炉を考える会
玄海原発3号機再稼働に向け、2月16日に核燃料が装荷されると報道されました。私たちは怒り心頭です。
3月にも再稼働かと言われている中、原子力規制委員会の更田豊志委員長が玄海原発30キロ圏の3県8市町の首長らと意見交換すると発表されました。更田委員長は、再稼働手続きとは関係ないとしながらも、目的は原発立地周辺地域の住民の意見を聴くことであると言っています。私たちは佐賀県をはじめ関係自治体や九州電力に対して、これまでも質問・要請などを幾度となく提出してきました。しかし、国の許可を得ているからという回答しかありませんでした。面談を許されている貴職に対して、再稼働に不安と疑問を持っている住民の気持ちを、この機会に直接更田委員長に伝えて頂きたく本日要請に来ました。
山口知事は就任時から、「安全性の確認と県民の理解」を条件に再稼働容認の考えを示してきました。しかし、田中俊一前規制委員長は「規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない」、そして更田委員長は1月29日の衆議院予算委員会で原発の安全性について「新規制基準への合致は100%の(原発の)安全、リスクゼロを保証するものではない」と明確に答えました。原発は事故大前提なのです。
また、山口知事は「熟慮に熟慮を重ねた結果、現状においてはやむを得ない」とも述べ、2017年4月24日同意表明しました。小川洋福岡県知事はそれを尊重すると表明、中村法道長崎県知事も「やむを得ない」と容認しました。原発は「やむを得ず」動かす施設ではありません。
原発がひとたび大事故を起せば、放射能により私たちの暮らしは足元からすべて奪われます。住民が納得いく説明もないままの再稼働同意・容認は、命と暮らしを守る立場の首長として重大な責任放棄です。私たちの出した疑問や質問には何一つ具体的な回答は出さず、「県民の代表である県議会の決議なので重く受け止める」と住民の声を無視した山口知事の判断は、議会制民主主義を楯にとった暴挙です。
私たちは活動の一つとして、玄海や唐津、糸島、離島などの個別訪問をしています。先日、唐津市肥前町を訪れたときの事です。「原発はいらん!」「原発からたった10キロも無か。事故が起きたらもう逃げられん」「自然がやられるけん、第一次産業がだめになる。子どものことが心配」などの声を聞きました。農道で出会った80代のお婆さんは「逃げんよ、逃げらるもんね、こげな道ば。…そこん丘に上がってみんね。あっちからいつでん風の吹いてきようと・・癌の多かとも知っとうくさ」と、ほとんどの人は原発に不安を抱えています。住民の本音をしっかりと受け止めてください。住民を守ってください。
経済産業省の東京電力改革・1F問題委員会は福島第一原発事故の処理に22兆円かかるとの再試算を公表しました。しかし、日本経済研究センターの試算では最終的には70兆円近くに処理費が膨らむ可能性すらあると言っています。国家予算、言い換えれば国民の税金の数分の一を一企業の原発事故処理に使わねばならないという事実を、政治家のみなさんはどうお考えになるのでしょうか。
原発は安全でもなく、安くもないと国が認めています。多くの問題点を解決しないまま、何が「やむを得ない」のか、住民は納得いきません。被害を受ける住民への透明性の高い説明を求めます。
主だった問題点について下記に述べます。よくご理解の上、更田委員長には「原発再稼働はあり得ない」という住民の意思をしっかりと伝えてください。
※本要請は佐賀県、長崎県、福岡県、玄海町、唐津市、伊万里市、松浦市、平戸市、佐世保市、壱岐市、糸島市に提出しています。
【何も解決されていない問題点】
(1)広島高裁決定を受け、阿蘇カルデラ巨大噴火の可能性について審査やりなおしが必要
昨年12月13日、広島高裁は伊方原発3号機の運転差止決定を出しました。高裁は、国のつくった火山影響評価ガイドを厳格に適用し、阿蘇カルデラから130キロの距離にある伊方原発では破局的噴火により火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価することはできないとして、伊方原発の立地は不適であると断じたのです。問題なしとした原子力規制委員会の判断を「不合理」だと認定しました。
阿蘇カルデラから同じく130キロにある玄海原発は、そのまま同じ理由で立地不適となります。現に、玄海原発30キロ圏にも9万年前の阿蘇巨大噴火の火砕流露頭が複数あり、唐津市浜玉町では層厚10メートルにも及ぶ火砕流堆積物が確認されていることを、九電は2016年9月16日の最後の審査会合で規制委に報告しています。こうしたことから、私達は九州電力・国・佐賀県に対して、再稼働を止め、審査をやり直すことを求めました。
しかし、国は「前提として阿蘇の破局的噴火は起こらない」、「九電がモニタリングを自主的にやるので、確認する必要がなくなった」として、火砕流到達可能性についての検討を何もしていないことを認めました。(1月24日政府交渉)。しかも、モニタリングによる予測の手法は確立しておらず、判断基準も決まっていないのです。
佐賀県も、火砕流到達可能性等の検討を原子力安全専門部会等で行っていないことを認めましたが、「国の確認」に追従するだけで、独自の検討、確認を放棄しています(1月12日付知事回答)。
原発の火山審査についての司法の決定は広島高裁で5例目でしたが、これで4つ立て続けに「立地に係る危険性がないとはいえない」という判断が出たことになり、これは専門家と司法の総意です。国の「民事訴訟のことなので、直接的に応えることは差し控えたい」(政府交渉)という姿勢は許されません。
九州電力と国は、高裁決定を重く受け止め、玄海原発についても再稼働準備を止め、火山審査のやり直しを行うべきです。
(2)神戸製鋼所・三菱マテリアルによるデータ不正事件の全容は未解明
昨年後半、神戸製鋼所や三菱マテリアルの原発部材の品質データ改ざん問題が発覚しました。
・神戸製鋼所の製品は玄海3・4号機において原子炉格納容器の鉄筋や溶接部材、燃料被覆管、溶接部材など幅広く使用されており、強度不足などの欠陥があれば、放射能の大量放出を含むような過酷事故にも繋がりかねません。九電は「不適切行為のあった製品は使われておらず、安全に影響を与えるものはない」と結論づけました。しかし、40年以上前から組織ぐるみで不正がなされてきた中で、神戸製鋼がこの1年間に製造された製品を「自主点検」しただけです。
・三菱マテリアルはゴム部材を原発に供給していますが、玄海3・4号機においても実際に部材の寸法や強度等のデータ改ざんが相当数見つかりました。しかし、九電は「安全上の問題はない」と結論づけました。
・事業者を厳しくチェックせず、このような状況を許してきた原子力規制委員会に、国民を守るための機関としての資格はありません。
※(1)(2)については、知事同意後、新たに浮上した問題であり、これだけでも住民の安全・安心を確保する上から、慎重な立場の専門家も入れた検証が必要です。私達は佐賀県に原子力安全専門部会での検証を求めましたが、受け入れられませんでした。
(3)住民の理解は得られていない/「再稼働反対」の民意を無視している
・玄海原発30キロ圏のうち伊万里市、壱岐市、松浦市、平戸市の4市長と、30キロ圏外でも神埼市、嬉野市の2市長、計6市長が再稼働に反対しました。壱岐市、松浦市、平戸市の各議会は全会一致で反対決議を可決しました。首長や議会の意思表明はまさに民意です。
・佐賀県、長崎県、福岡県の10か所で開かれた住民説明会では原発に対して不安と疑問の声が噴出しました。
・佐賀県民の各界で構成された「広く意見を聴く委員会」においても、農業団体、看護協会、介護施設協会、婦人会、労働組合などから再稼働反対の声が出されました。
住民の多くは再稼働に理解などしていないのです。
(4)安全性が確認されてない/専門家の警告が無視されている
・島崎邦彦・元原子力規制委員長代理をはじめ多くの専門家は、現行の基準地震動(想定する地震の最大の揺れ)は過小評価だと指摘していますが、無視されています。
・当初計画されていた免震重要棟建設は撤回されました。
・水素爆発や水蒸気爆発は「起きない」前提で審査が通るなど、「世界最高水準」とはかけ離れています。
・腐食の可能性がある加圧水型の原子炉容器上部蓋は、全国すべての加圧水型原発で改良型への取替えが進められてきましたが、玄海原発3号機だけ交換計画が放棄されたままです。
・テロ等の重大事故対処施設の建設が5年間猶予され、再稼働後、2022年までに設置すればよいとされていますが、テロや大災害はいつ起きるか分かりません。
(5)避難計画はまったくできていない/九電のために住民が被ばくを押し付けられるのは理不尽
・30キロ圏の半数の人口13万人を抱える唐津市は原発事故時の避難先やルートを記した避難マップを作製し、市民に配布するのが再稼働後となるかもしれない来年と言われています。避難計画は「実働する体制ができていない」と唐津市長も市議会で答弁しています(2017年4月6日)。
・数多ある放射能のうち唯一放射性ヨウ素から甲状腺を守ることのできる安定ヨウ素剤の事前配布は5キロ圏だけで、圏外は条件付きの希望者のみ。地震や大雪で、配布場所まで受け取りにいく間に被ばくしてしまいます。
・病院や福祉施設の患者や入所者、在宅の要援護者の多くは、どこへどのようなサポート体制で避難することになるのか具体的に決まっていません。
・離島住民は悪天候時、島外へ逃げることもできません。蛇腹式テントや屋内退避施設に何日も立てこもるのは不可能です。
・そもそも、高濃度の放射能に襲われてから「避難」することになっている避難計画では、被ばくは必至です。「被ばくしたくありません」という私達の要請に、佐賀県知事は「住民への放射線の影響を最小限に抑える」と回答、唐津市長は「『被ばくしない』という考え方をとっておりません」と、被ばくを容認しています。放射能はDNAを傷つけます。私たちは被ばくしたくありません。
(6)猛毒プルトニウムを使うプルサーマルは一層危険
玄海原発3号機はプルサーマルです。使用済みウラン燃料を再処理して取り出したプルトニウムを混ぜたMOX燃料を、ウラン用原子炉で燃やす発電です。プルトニウムは核兵器の材料であり、超危険な猛毒の放射性物質です。制御棒の効きが悪くなり、事故時の放射能被害の範囲は4倍になると言われています。使用済みMOX燃料の処理方法も未解決です。しかも、新規制基準の下で、ウラン燃料と性質の違うMOX燃料について特段の審査をおこなっていません。
今、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決定され、青森県六ケ所村の「再処理工場」の稼働も目処が立たない中、核燃料サイクル政策は破たんしています。プルトニウム利用にこだわる国が仕方なく始めた危険なプルサーマルは中止すべきです。住民は“モルモット”ではありません。
(7)次世代にこれ以上の核のゴミをおしつけてはならない
原発は「トイレなきマンション」です。原発を動かせば動かすほど、処分方法の決まっていない核のゴミが増えます。10万年もの管理が必要です。今、核廃棄物の最終処分問題がクローズアップされていますが、最優先すべきは、これ以上核のゴミを増やさないことです。それは再稼働させてはならないということです。再稼働を認めるということは、未来の世代に対しての無責任な行動と言わざるを得ません。
核のゴミの最終処分については、原発を1日でも早く止め、今を生きる大人達が叡智を結集して取り掛からなければならない難題です。
(8)原発はウラン採掘から廃炉まで、被ばく労働で命を傷つけ続ける
原発は事故が起きなくても、放射能がウラン鉱山周辺の住民、採掘現場、燃料工場、発電所等で働く労働者の命を傷つけ健康を奪います。原発はエネルギーや経済の問題の前に、命と人権の問題なのです。
原発は「やむを得ず」動かす施設ではありません
(全11首長に対して同一の要請文を提出しました)
知事回答に対する質問書
2018年2月9日
佐賀県知事 山口祥義 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
玄海原発反対からつ事務所
山口知事は、原発再稼働同意の理由に「熟慮に熟慮を重ねた結果、現状においてはやむを得ない」と発言しています。
私たちは、2017年11月9日の副知事との面談時に、「原発は命の問題。命のことなのに、なぜやむを得ないのか」と質問しました。12月25日付で回答書が来ましたが、まったく納得できるような内容ではありませんでした。
そこで、再度質問します。
回答書は4月24日の同意会見時の発言をほぼそのまま貼り付けてあるだけでした。同意前の経過について触れた上で、「・・・総合的に勘案し、今回の再稼働についてはやむを得ないと判断した」とありますが、「総合的」という抽象的な言葉では何の事か解りません。
県民はただ安心して暮らしたいだけです。原発事故は住民の命と健康と安心を奪うのだと東京電力福島第一原発事故は教えてくれたはずです。山口知事は「やむを得ず再稼働」というのなら、それは私たちのような原発に不安を抱いている県民の不安を無視し、命を踏みにじるということです。私たちは、九州電力の事故で被ばくしていいと言っていません。
なぜ九州電力の経営のために、住民が放射能被ばくを一方的に受けなければならないのか、なぜ「やむを得ない」と言えるのか、県民を守る立場の知事の回答を求めます。