抗議声明
玄海原発3号機プルサーマル 燃料装填
住民の不安無視の再稼働に抗議する
2018年2月16日
(株)九州電力 代表取締役社長 瓜生道明 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 代表 石丸初美
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会 共同世話人 野中宏樹
玄海原発反対からつ事務所 代表 北川浩一
九州電力は本日2月16日、玄海原発3号機の核燃料装填を開始しようとしている。住民の不安や反対の声を無視した暴挙に、私たちは断固抗議する。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は「リスクはゼロではない」と繰り返してきた。壱岐市長は更田委員長に対して「リスクがゼロでないと不安なのが人間だ」(2月11日)とまで言っている。原発がひとたび大事故を起せば、放射能により私たちの暮らしは足元からすべて奪われてしまう。なぜ九州電力という一企業の起こす事故のために、私たちは被ばくを強いられなければならないのか、納得いかない。
昨年4月、山口祥義佐賀県知事は「やむを得ない」として再稼働に「同意」したが、原発は「やむを得ず」動かす施設ではない。事故大前提の再稼働だ。私たちは安心して暮らすことはできない。
多くの問題点が未解決のままの再稼働に断固反対する。その一部を以下に列挙する。
(1)猛毒プルトニウムを使うプルサーマルは一層危険
今回装填する燃料193体のうち32体は、使用済みウラン燃料を再処理して取り出したプルトニウムを混ぜたMOX燃料である。プルトニウムは核兵器の材料であり、超危険な猛毒の放射性物質だ。制御棒の効きが悪くなり、事故時の放射能被害の範囲は4倍になると言われている。使用済みMOX燃料の処理方法も未解決だ。しかし、新規制基準の下でウラン燃料と性質の違うMOX燃料について特段の審査は行われなかった。
加えて、今回の装填されるMOX32体のうち16体はワンサイクル使用したものであり、7年以上、水に浸かったままである。不純物が多く含まれ、危険性が一層増す。
核燃料サイクルが破綻する中、危険なプルサーマルは中止すべきだ。住民はモルモットではない。
(2)東京電力福島第一原子力発電所の事故原因は究明されていない
2011年3月11日以来7年を経て、今なお福島第一原子力発電所では「原子力緊急事態宣言」発令中であり、事故の原因究明はなお途上にある。事故の原因が究明できていない以上、日本全国の何処の原子力発電所においても再発の可能性がある。それにも関わらず九州電力は既に川内原子力発電所を再稼働した。東京電力の事故から九州電力は一体何を学んだのか。暴挙と言うより他はない。
(3)電気は足りている
玄海原発は2011年12月25日からすべて停止したままである。九州電力管内の全原発が停止している期間、電力不足にはならなかった。川内原発再稼働前の2015年3月期第1四半期(4-6月)、九州電力は原発が1基も稼働していなかったにも関わらず、連結経常損益が211億円の黒字だった。この事実と、「原発が稼働していなければ電力不足になり、経営を圧迫する」と言ってきた説明との整合性がつかない。九州電力には原発を再稼働させなければならない理由はない。
(4)万が一の事故の場合、私たちにどのような影響を及ぼすか九州電力は説明していない
昨年2月末から3月上旬に開かれた県民説明会において、九州電力は万が一の事故の際に4.5テラベクレルという途方もない量の放射性物質の漏洩を想定している事が明らかとなった。この4.5テラベクレルの放射性物質の漏洩が、私たちの命や環境にどれほどの影響を及ぼすのか、質問に対して九州電力は説明できなかった。原発の運転はそのまま私たちの命と暮らしの問題だ。今なお福島において、多くの人々が不安の中にあって通常あり得ないほどの被曝を強いられている現状を鑑みるとき、私たちは再稼働を容認することは出来ない。
また、一昨年の熊本地震など、今までの経験則をはるかに越えた自然現象も頻発している。昨年12月20日、広島高等裁判所は、阿蘇山の破局的なカルデラ噴火の影響が130キロも離れた伊方原発にでさえ火砕流が押し寄せる可能性を認め、運転の差し止めを命じた。私たちの人知をはるかに越える自然災害は今までもそうであったように、これからも十分起こりえる。九州電力の依って立つ基準地震動などの計測は、あくまでもこれまでの経験則に基づくものでしかない。ましてや巨大なカルデラ噴火などは専門家でも予測のつかない事態だ。もっと人間は謙虚になるべきだ。九州電力の姿勢は傲慢としか言いようがない。事故が起きてから「想定外であった」は最早通用しない。最大の安全対策は原発を再稼働させないことだ。
(5)使用済み核燃料は増える一方であり、無責任極まりない
原発を運転すれば使用済み核燃料は貯まっていく。国策としてすすめてきた「核燃料サイクル」も、高速増殖炉計画の失敗、六カ所再処理工場の度重なる完成延期などで、まったく見通しは立たず、頓挫したままである。加えて高レベル廃棄物の具体的処分方策もない。九州電力は使用済み核燃料の、サイト内での「乾式貯蔵」を検討しているが、半永久的に玄海町が核のゴミ捨て場となっていきかねない。これら核のゴミは、次の世代への巨大な「負の遺産」となる。もうこれ以上、処分のできない使用済み核燃料を増やすべきではない。
(6)原子力避難計画は“絵に描いた餅”
原子力防災・避難計画作成を義務付けられている自治体は30キロ圏内に留まっている。しかし、それは机上の空論、実効性のない“絵に描いた餅”である。実測値で高線量に被ばくしてから避難するという、被ばく前提の計画になっている。放射能から私たちの命を守る“計画”ではない。
玄海原発から60キロ以上も離れている鳥栖市の橋本康志市長は、私たちの質問に対して2014年3月19日に「(原発事故時に)国が定める放射線管理区域以上の被曝環境に晒される可能性はないわけではない」と答えている。これは福島の事故によって、60キロ以上も離れた人口密集地帯の福島市や郡山市で起きた事実を見ても明らかだ。つまり30キロ圏外の自治体であっても市民の命を守るためには避難計画が必要である。それが全くない現状での再稼働を、私たちは到底容認できない。九州電力は事故の加害当事者として、被害の及ぶ想定範囲全域の完全なる避難計画を策定しなければならない。
(7)九州電力には「安全第一」という文化などなく、信用できない
一昨年4月14日、16日にそれぞれ震度7の揺れを観測するという観測史上例を見ない大震災が熊本地方を襲った。高速道路は寸断され、新幹線も止まった。この時、九州電力は川内原発を緊急停止しなかった。もしも、同じような大きな揺れが原発を襲い、事故が起きていれば、住民は避難する術を全く失い、手の打ちようがなくなっていただろう。このような緊急事態下にあって、平然と原発の運転を続ける事の出来る九州電力に「安全第一」という文化などないのだと私たちは思い知らされた。同じ事が玄海で起きないと誰が言えよう。明日は我が身となぜ学ばないのか。
2005年の唐津でのプルサーマル公開討論会仕込み質問事件、2011年6月の“ぶんぶんテレビ”での県民説明番組やらせメール事件は、九州電力がウソをつき、住民をだます会社であることが白日の下に晒された。先日2月11日にも、山口知事は瓜生社長に対して「ウソをつかないこと」「風通しのいい組織」「想像力を働かすこと」という3つの原則で釘を刺した。あれから7年経ってもう「みそぎ」は終わったとでも考えているのか。騙された私たちはこのことを決して忘れていない。
昨年後半には神戸製鋼所や三菱マテリアルの品質データの改ざんが発覚し、玄海原発3・4号基の原子炉格納容器の部材や燃料集合体等に同社製品が使用されていることが明らかになった。九州電力は「安全に影響を与えるものはない」と結論づけたが、神戸製鋼はこの1年間に製造された製品を「自主点検」しただけだ。40年以上前から改ざんが行われてきた中で、改ざんの全貌は未解明のままだ。住民の安全を守るために第三者機関に委ねるなどして徹底的に調査し、公表すべきだ。
なりふり構わない経済優先、安全軽視、消費者軽視の企業体質の九州電力に原子力発電所を運転する資格はない。九州電力は、心から「ずっと先まで明るくしたい」と願っているのであれば、原発を稼働させないという最善の道をとるべきである。