九州電力は"安全神話"リーフレットを更田規制委員長の指摘と佐賀県知事からの申し入れを受けて「撤回」しましたが、それだけでは済まされないとして、3月19日、佐賀県知事と九電社長宛に要請してきました。
私達は、
1.リーフレットに記載された「2000分の1」という数字が「水素爆発は起きない」「水蒸気爆発は起きない」「格納容器は壊れない」などの甘い条件の下で出された1つのケースの数字に過ぎないのに、「万が一に場合においても・・・2000分の1であると確認された」というのは、まさに安全神話である。
2.この問題に限らず、火山や地震、テロ対策施設建設5年間猶予、避難計画等々、多くの問題で九電も国も佐賀県も安全神話の世界にどっぷり浸かっている。
・・・ことを具体的に指摘(要請質問書に22項目列挙)の上、
3.九電には住民に謝罪の上、リーフレットのどこがどう安全神話だったのか、最悪のケースでどれほどの放射能被害となるかを説明しなおすこと。佐賀県知事には再稼働同意を撤回し、住民説明会をやり直すことを求めました。
最初に訪ねた佐賀県に対しては、リーフの何が「安全神話」だったのかをまず尋ねました。
原子力安全対策課担当者は「数字が安全神話ということではなく、すべて規制委から認められている数字だ。しかし、安全神話だという誤解を与えかねないという指摘があったから、九電に申し入れた」と答えるだけで、甘い条件しか想定していないこと自体が"安全神話"になっていることを認めませんでした。こちらが「水素爆発の想定なし」など具体的に指摘しても「それは前提ではなく、結果であって…」等々と、はぐらかすばかり。
私達が「"誤解"した方が悪いのか。違うでしょう、安全神話そのものだと言っているんです。なぜ九電の立場でものをいうのか。県民を守る県の立場として、検証しなおすべき。住民説明会をやりなおすべきだ」と訴えても、県は「九電が広報して説明することなので、九電が頑張らなければいけないと思う」などと、他人事のような弁明を繰り返しました。
九電佐賀支社では立地コミュニケーション部長らが対応。
あまりの意識のギャップに驚くばかりでした。
部長「ごまかしという言葉で言われたが、我々は意図的にやったものではない。恥ずかしいことはしたくないし、子どもに後ろ指さされたくない。違法行為をしているわけではない」と言うので、「社長の肝いりで限られた条件の下での数字を意図的に誇張してつくったのでしょう」と指摘。「それに、リーフの冒頭にある"世界で最も厳しい水準にある新規制基準"という表現も間違いでしょう。更田委員長自身が"最高水準を目指すといっただけで、そういう言い方をしていない"と、安全神話発言と同じ日に言っている。」
九電「・・・そこは九電の言葉ではないので」
私達「でも九電として、こうやって大きく書いているではないですか」
九電「・・・」
私達「そういう間違い、誇張の説明を住民にしたわけだから、撤回したというだけで済む問題ではありません。住民に謝罪の上、説明会、公開討論会を開いてください。最悪のケースでどれほどの放射能被害となるかなどを説明しなおして、了解をとってからの話でしょう、再稼働は。」と求めました。
また、部長は「車でもエアバッグがきかないなどになれば、人命にかかわる事故になる。原子炉も格納容器が勝手に割れたとかいう想定は入っていないが、人知をこえたことはありうる」「世の中には、夫婦別姓や憲法改正など世論を二分する問題があるし、原子力もそう。しかし、原発はエネルギー政策で認められている。どこかでおりあいをつけていくしかない」などと言うので、「自動車と放射能と一緒にしてはならない」「他の問題と同列に論じないでほしい。そもそも原発はおりあいをつける問題ではない。誰一人として犠牲者が出てもいけないんです。それはあってはならないんです」と強く訴えました。
知事、九電社長ともに、再稼働前の回答を求めました。
★「起動」までまだ時間があります。
各地各人から、電話や申し入れを引き続きお願いします。
九州電力:092-761-3031
佐賀県新エネルギー課:0952-25-7380
要請・質問書
九州電力“安全神話”リーフレット 「撤回」だけでは済まされない 再稼働同意撤回と住民説明会のやり直しを求めます
2018年3月19日
佐賀県知事 山口祥義 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
玄海原発反対からつ事務所/原発を考える鳥栖の会/今を生きる会/原発知っちょる会
風ふくおかの会/戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/たんぽぽとりで
東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会/あしたの命を考える会
九州電力は昨年2月頃、玄海原発では「万が一の事故の際においても、放射性物質の放出量は福島第一原発事故時の約2000分の1の4.5テラベクレルであることが確認されました」と記載したリーフレットを原発周辺住民1万500戸(玄海町・唐津市7500戸と佐賀・長崎・福岡3県の区長3000人)に配布しました。
先月11日、原子力規制委員会の更田委員長は玄海原発周辺11自治体首長らとの意見交換会の場で「最悪でもここまでしか出しませんという言い方は、一種の神話だ」と指摘、山口・佐賀県知事も「安全神話につながるような考え方はあってはならない」と県議会で批判しました。それを受けて、九電は瓜生社長肝いりの「2000分の1」が記載されたこのリーフレットの利用を撤回・中止しました。
そもそも、福島第一原発の放射能放出量を「10000テラベクレル」としていますが、東京電力自身が「把握できない」と言っています。そのうえに、九電は
①「水素爆発は起きない」という安全神話
②「水蒸気爆発は起きない」という安全神話
③「格納容器は壊れない」という安全神話
④「60分後には電源が回復して放出はほとんど止まる」という安全神話
…など非常に甘い想定の下で、放出量が「福島事故の2000分の1」などと断定し、“安全神話”をばらまいたわけですから、撤回するのは当然のことです。
しかし、リーフレットの撤回だけで済まされる問題ではありません。
私達は九電交渉において再三にわたり「安全神話」だと指摘し、撤回を求めてきましたし、昨年県内5か所で開かれた説明会にもおいても、「4.5テラベクレル」だとする根拠や、その際の健康被害についての質問がありましたが、具体的な中身のある回答はほとんどありませんでした。また、この超過小評価を前提にした原発の安全性や避難計画などについてのこれまでの説明は、前提条件が崩れたことになります。
九電は原発を動かす前に、リーフレットのどこがどう“安全神話”にあたるのかを明確にしたうえで、住民に対して事故時の放射能被害を正しく説明し、了解を得る必要があります。
さらに、「安全神話」は「2000分の1」問題だけにとどまりません。
⑤火山の破局的噴火は「予測できない」という火山専門家の総意を無視して、「起きない」とする安全神話
⑥「破局的噴火の数十年前に前兆をとらえることができる」という安全神話
⑦過小評価だとの警告を無視して「現行の基準地震動の枠内でしか地震は起きない」という安全神話
⑧「熊本地震のような二連続大地震は起きない」という安全神話
⑨テロ対策施設、フィルター付ベント装置の建設は5年間猶予(3号機:2022年8月まで、4号機同9月まで)。「それまでテロや事故は起きない」という安全神話。
⑩神戸製鋼所が組織ぐるみでデータ不正を行っても、不正企業による「1年分の自主点検」だけで問題なしとする安全神話
⑪米国で激しい応力腐食割れが発生した原子炉上蓋について、3号機の交換計画を放棄したままでも問題なしとする安全神話
住民避難計画においても
⑫「原子力災害は想定外の事象が起こった場合に発生するもの」(2016年2月3日付知事回答)とする安全神話
⑬「30キロ圏外は避難する必要がないから避難計画をつくらなくてよい」という安全神話
⑭木造家屋での屋内退避は「外部被ばくを10%減らす、内部被ばくを4分の1に減らす」、つまり被ばく必至なのに、「屋内にいることが安全への第一歩」とする安全神話
⑮渋滞や土砂災害等による通行止めなどを十分考慮せずに、安全に避難できるという安全神話
⑯放射能は風向きによって汚染の広がり方が違うのに、避難場所が1つだけでよしとする安全神話
⑰要援護者は事故時に一人では動けません。個別避難計画ができていないのによしとする安全神話
⑱子どもや妊婦は被ばくの被害を受けやすいのに、被ばく前提の避難計画でよしとする安全神話
⑲離島住民は悪天候の時は島外へ避難できず、蛇腹式テントなどを住民自身で組み立て、何日も閉じこもることになる。それでよしとする安全神話
⑳安定ヨウ素剤は放射能到達前に服用しなければ効果がほとんどないが、事前配布は5キロ圏(5キロ圏外には条件付きで限定的な配布)だけでよしとする安全神話
㉑放射能汚染検査は、車両が基準値以下なら乗っている住民は検査なしでOK、車両が基準値以上でも住民の代表者一人を検査して基準値以下なら全員OKとする安全神話。しかも基準値は放射線管理区域の持ち出し基準の30倍という高い数値。
㉒避難業務に従事する自治体職員の被ばく限度は年間50ミリシーベルトでも、健康に問題なしとする安全神話。
・・・等々、九電も、それを追認する国も知事も3.11前の「安全神話」の世界にどっぷり浸ったままだと言わざるを得ません。
九電は23日にも玄海3号機を起動すると言われていますが、再稼働どころではありません。ただちに中止し、原発事故の被害を受ける可能性のある全住民への説明のやり直しが必要です。
そもそも原子力災害は電力会社の事故により住民が被害を受けるものです。加害者九州電力と再稼働を容認している国と県からの説明は当然のことです。
以下、要請と質問をします。要請と質問それぞれについて、再稼働前の回答を求めます。
【要請事項】
1.玄海再稼働同意を撤回し、県として全市町において住民説明会のやり直し開催をすること
昨年の説明会は問題だらけでした。開催するにあたっては、以下の点を求めます。
a.質問を1人1分1問などと制限して、不安や疑問を表明しようとする住民に圧力をかけないこと。
b.当日突然、専門的資料を渡されても住民は分かるはずがありません。周知期間を十分とり、回覧板をまわすなど、全世帯に行き届くようにすること。
c.子育て中の人、放射線の影響が大きい子ども達、離島の住民などが参加しやすいよう、平日夜の開催だけでなく、週末や昼間の時間帯での開催も行うこと。
d.要援護者は説明会場に行くのさえ困難です。個別に説明の場を持つこと。
e.説明会の場において慎重・反対の立場の専門家にも登壇してもらい説明と討論に加わってもらうこと。
f.説明者が延々と同じことを繰り返したり、回答をはぐらかしたりするのをやめさせること。
g.特に避難計画については、県の責任を明確にした上で細やかな説明をすること。
2.休会したままになっている「再稼働に関して広く意見を聴く委員会」を早急に開催すること
3.休会したままになっている「原子力安全専門部会」に、原発に慎重な立場の専門家も入れて、県として独自の検証の場をもつこと
2016年12月27日の「第一回佐賀県原子力安全専門部会」でも「2000分の1」は九電から説明されましたが、問題視されず、放置されました。こうした問題をきちんと検証できる専門家が絶対に必要です。
【質問事項】
1.甚大な被害をもたらした3.11東京電力福島第一原発事故から7年が経ちました。最大の教訓は何だったのでしょうか。
2.上記①~㉒のすべての項目について、知事の考える「最大の教訓」と照らして、安全神話だと考えるか否か、またその理由について一つ一つにお答えください。
<九電社長宛は「要請事項」以外は知事宛と同文です>
要請・質問書
九州電力“安全神話”リーフレット 「撤回」だけでは済まされない 住民に謝罪の上 公開討論会の開催を求めます
2018年3月19日
(株)九州電力 代表取締役社長 瓜生道明 様
【要請事項】
1.玄海原発3・4号機の再稼働を中止し、九州電力主催で、原発に慎重な立場の専門家も入れた再稼働についての公開討論会を開催すること
2.リーフレットを配布した1万500戸の住民に対して、謝罪の上、説明をしなおすこと
【質問事項】
1.甚大な被害をもたらした3.11東京電力福島第一原発事故から7年が経ちました。最大の教訓は何だったのでしょうか。
2.上記①~㉒のすべての項目について、社長の考える「最大の教訓」と照らして、安全神話だと考えるか否か、またその理由について一つ一つにお答えください。