【佐賀県議会「住民の不安を切り捨てないで」請願否決】

九州電力が玄海3号機再稼働を強行した3月23日、佐賀県議会では「住民の理解は得られていません 玄海原発の再稼働を認めないことを求める請願書」が否決されました。 

↑ 佐賀県議会 平成30年2月定例県議会請願採決一覧

http://www.pref.saga.lg.jp/gikai/kiji00360956/index.html

 請願では、離島や原発30キロ圏の各地を戸別訪問しながら「原発、怖かよ」「逃げられん、逃げらるんもんね」「事故になったらどがんもされん」「金も農地も故郷も失ってしまう」「偉い人の言う通りにしかならん」など住民から直接聞いてきた不安の声を列挙し、「住民の不安を切り捨てず、議会として再稼働を認めないこと」を求めました。武藤明美県議と井上祐輔県議に紹介議員になっていただき、3月6日に提出しました。

https://saga-genkai.jimdo.com/2018/03/07/a/

 

23日の本会議(最終日)は午前11時に始まりました。

武藤県議は予算案討論に立った冒頭、「今まさに11時に再稼働するということだが、県民の怒りが高まっている中、再稼働を強行する安倍政権と同意した知事に怒りをもって抗議する」と表明しました。

請願の採決では井上県議が賛成討論に立ち、「九電のリーフレットでは安全神話が書かれていた。原発の安全も地震も火山も避難計画もすべて安全神話に上に成り立っている。説明会もやり直すべきだ。『やむを得ず』動かすことは、住民の不安を切り捨てることになる。請願への議員の賛同を求めたい」と訴えました。

起動抗議で県議会傍聴席には数人の市民しかいない中、真正面から力いっぱい大きな拍手を送りました。

採決では、武藤県議、井上県議に加えて、徳光清孝県議と内川修治県議が賛成してくれました。

反対討論は誰からもなく、「反対」の起立表明もなく、請願は否決されました。

圧倒的多くの県議達が、無言のまま、住民の不安の声をまたも葬り去った瞬間でした。

起動のまさにその日に、佐賀県議会がとった態度は恥ずべき歴史的事実として、議事録の中に残されていくでしょう。

このことを私達の脳裏に刻みつけ、次の行動へと歩みを進めていきましょう。

請願も続けていきたいと思います。 

 

 


◆毎日新聞2018年3月24日 地方版

https://mainichi.jp/articles/20180324/ddl/k41/040/306000c

・・・この日、最終日となった県議会では、脱原発を訴える市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)が提出した玄海原発3、4号機の再稼働同意の撤回を山口知事に求める請願を賛成少数で不採択とした。 

 請願は「玄海原発で重大事故が起きれば、九電のために住民はいやおうなしに被害だけを負わされる、理不尽極まりない悲劇が起きる」と指摘。昨年、県内5カ所で開いた県民説明会について「参加者からは『再稼働反対』や『慎重に』という意見が相次いだ。知事は県民の真の声を聞くべきだ」などとした。 

 

 審議では反対討論はなかった。請願の紹介議員として賛成討論に臨んだ武藤県議は「県民の声が否決されてしまった。否決した人たちは何の表明もしないまま否決した」と不快感をあらわにした。 


住民の理解は得られていません

玄海原発の再稼働を認めないことを求める請願書

2018年3月6日

佐賀県議会議長  石倉秀郷様

(提出者)玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 代表 石丸初美

プルサーマルと佐賀県の100年を考える会 共同世話人 野中宏樹

玄海原発反対からつ事務所 代表 北川浩一

 

【請願の趣旨】

九州電力は去る220日、玄海原発3号機の核燃料装填を終了、報道によると今月323日にも再稼働かと言われています。山口祥義佐賀県知事は「住民の理解が得られた場合には、再稼働はやむを得ない」と発言してきました。その住民の理解はどうやって得られたのでしょうか。

私たちは、2006年から玄海町はじめ各地の住民へ広報活動をしています。「これまで九電からの説明やチラシしかなかった」と、私たちの情報を知り、初めて知る事実に驚く住民が多くいて、原発再稼働に理解・納得していない県民がたくさんいることを確信しました。また、私たちも県民として、「東京電力福島第一原発事故を学ぶべきだ」「重大事故が再び起きる可能性が少しでもあれば、それが国策であろうと住民を守るために原発は止めてください」と、原発を憂慮する専門家の根拠も提示して知事や佐賀県議会に対してこれまで幾度となく要請してきましたが、県議会は2017413日「再稼働容認決議」を可決、知事は2017年4月24日「県議会決議を極めて重く受け止める」として住民の理解は得られないまま再稼働に同意しました。これは、住民の意見を無視する人権蹂躙というほかありません。

以下、各地を訪問して住民から聞いた話の一部を述べます。

 

①唐津市肥前町(2018年1月31日)

「原発、怖かよ」「事故になったら戻ってこれんもんね」「原発の方から風が吹いてくる。事故になったらひとたまりもなか」「怖いのは分かっとるさい、上が認めたからしょうがなか~」この日も不安の声ばかりでした。

「原発はいらん!」「ここは原発からたった10キロもなか。事故が起きたらもう逃げられん」「自然がやられるけん、第一次産業はもうだめんなる。子どものことが心配」。農道で出会った80代のお婆さんは「逃げんよ、逃げらるんもんね、こげな道ば・・・そこん丘に上がってみんね。あっちからいつでん風の吹いてきようと・・・癌の多かとも知っとうくさ」。

 

②唐津市内(2017122)

中学生「この唐津を無茶苦茶にしないでほしい。原発反対です」。

 

③馬渡島(2017326)

島の人たちはチラシを喜んで受け取ってくれました。「原発は反対。こんな遠くまで来てくれてありがとう」「原発はなか方がよかさい」「時間があったらもっと話聞きたか~」。また、「避難訓練はあっとるが、坂ばかりで避難場所ていうても行かれん」「事故はいつ起こるかわからんやろ。夜は漁に出て元気な男はおらんよ」「避難は、定期船でピストン輸送と聞いとるが、本当に事故になったら、みんな自分の船で逃げるさ。でも問題は唐津の港に船をつなぎとめる"もやい"が足りん。上陸でくんもんね」「避難先の江北町までバスで避難訓練したことはあるが、一番問題は島を出ることができるかどうかさい」。高齢者が多い離島の深刻な問題である要援護者問題について聞いてみると「具体的な話は全くきてない」。

 

④神集島(2017529日)

「電気は足りとるし、事故が起きれば逃げられん、どがんもされん、10分で放射能が来る」「原発に賛成する人はおらんが、(悩んだ顔して)反対ばかりも出来んさ…」と、みなさん原発の被害を受けるのは自分たちだということをしっかり分かっておられました。 しかし、島民の中には玄海原発の下請け会社に勤めている人もいて、「原発いらんとは言われん」「島の人と原発の話はしない」と話せないようでした。声なき反対の声はいたる所で感じました。原発を生活圏の中に感じながら暮らす住民の声でした。

「先日、50年ぶりの大火事があり、住民でつくる消防団で消火活動にあたった。風が強くて、隣の家まで焼けた。朝で、男達が漁に出る前で、人がいたからまだよかった。火事があっても消防車があっても若いもんがおらん。消火活動が出来んのよ」「原発事故が起きても、市職員さえいない島では、すべて島民自身がやらなければならない」。

 

⑤伊万里市(20167~9月)

漁業者「事故になったら全部だめになる」。話題が福島の帰還政策のことになると 「この国の官僚や議員たちの半分でも福島で暮らしてみろ!と言いたい」「ドイツも福島後に原発をやめた。日本も当然そうすべきだ。他のエネルギーをどんどん進めればいい」「事故は誰も責任とってないし、終わってないもんね」。

 

⑥玄海町(2012428日~2013223)

「福島の犠牲を見てやっと解った。今となっては反対」「原発の事は話したくない。そんな事話したらおおごと(一大事)になる。孫たちもいるからないほうがいい」「電気が足りれば原発無い方が良い」「福島のような事故が玄海で起きたら、私たちはもう逃げられん。福岡に出た息子や孫にここに帰ってこいとはいえない」「この地区では、本音で言う事はできない」「とにかく偉い人の言う通りにしかならん」「国が大丈夫と言うなら、避難道路なんていらないはず!国や行政は矛盾している」「フクシマの放置された牛の映像を見た。自分も牛を飼っている。なんとも腹立たしい」「放射能は目に見えん、感じらん。逃げられん、事故があったら金も農地も故郷も失ってしまう。何にもならん」「今日は避難訓練しとるがバカげている。事故の訓練をしてどうするんだ」「町民会館が出来るまでは、カブトガニがぞろぞろいた。あさり、ホージャもいっぱい採れていた。なんもかんもおかしい」。

 

これらは、ほんの一部です。

このほか加唐島、長崎県鷹島、糸島市、佐賀市内など、これまでいろんなところで戸別訪問をしながら住民の話を聞いてきました。これが、住民の生の声です。原発のことについて県民の理解は得られていません。事実を知らされてさえいないのが現実です。玄海原発で重大事故が起きれば、九電のために住民は否応なしに被害だけを負わされる理不尽極まりない悲劇が起きます。被害は地元・玄海町にとどまらず佐賀県内はもとより世界中に被害が拡大することでしょう。今を生きる大人の判断が問われています。

原子力規制委員会の更田豊志委員長は安全性について、「リスクゼロを保証するものではない」と答えています。原発は事故大前提なのです。「国の審査を通っているから安全だ」という山口知事の判断は、佐賀県民を安心させるものではありません。私たち県民は原発事故で放射能被害に遭ってもいいとは言っていません。知事は公式サイトの中で『山口よしのりの考え』として「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を掲げています。世界に誇れる佐賀、それは大自然を残すということです。原発事故は、何ものにも代えがたい自然を壊すものだと東京電力福島第一原発事故が教えてくれたのではないですか。7年経った今も核燃料がどのようになっているかさえ検証できず、ロボットさえ使えない状況です。今も原子力緊急事態宣言発令中です。

知事は玄海原発の再稼働問題に関し「広く県民の声を聴く」として、昨年「広く意見を聴く委員会」を3回、県内5か所での「県民説明会」を開催しましたが、参加者からは「再稼働反対」や「慎重に」という意見が相次ぎました。知事は九電に対し「うそをつかない」と約束を交わしています。このことは知事自身が県民に対しても守ることであり、県民の真の声を聞くべきです。守るのは九電や国ではないはずです。

2017413日の県議会決議文に「玄海原子力発電所の再稼働を求める声を多く耳にし、再稼働やむなしということについての県民理解は、進んでいると考えるものの、安全性への不安の声や再稼働に否定的な声など、様々な意見があることは十分に認識しており、これを重く受け止める」とありますが、「やむを得ず再稼働」ということは、上記に述べている人々の不安は切り捨てられたことになります。

住民の命と暮らしと安心を守っていくのが政治でなければならないはずです。県議会の責任も重大です。

これらの趣旨から、以下のことを請願します。住民の気持ちに立って受け止めていただくようお願いいたします。

【請願事項】

1.原発に対する住民の不安を切り捨てないこと

2.県議会として、山口県知事の玄海原発3・4号機再稼働同意の撤回を求め、再稼働を認め

 

ないこと


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20180306再稼働認めないで県議会請願●配布.pdf
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20180323県議会請願不採択通知.pdf
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