【事故が起きても何もしない規制庁:玄海原発蒸気漏れ事故政府交渉報告】

4月9日、全国の市民団体と連携して、蒸気漏れ事故について緊急院内集会と政府交渉に取り組みました。

原子力規制庁は事故の状況について十分把握しないままに、「事業者が決めること」「事業者の責任」「事業者が考えること」と、何度も「事業者が」を連発し、九電にすべての責任を負わせようという姿勢でした。住民の暮らしの安全・安心を一体だれが守ってくれるのか、私たちの不安と不信と怒りは高まるばかりです。

今回の事故は単なる二次系のトラブルではなく、大事故につながりかねない警告だと、九電も国も受け止め、原子炉の停止と配管の総点検をただちに実施すべきです。そのためには、市民が声をあげ行動していくしかありません!

次は4月12日(木)10時~九電本店交渉に取り組みます。4月2日と4月6日に提出した質問への回答と交渉の場を持ちます。


 

<政府交渉報告>玄海原発3号機蒸気噴出/九電任せで何もしない規制庁

http://kiseikanshi.main.jp/2018/04/10/11242/

(原子力規制を監視する市民の会より転載します。)

 

院内集会には、緊急ながら40名ほどが参集しました。佐賀から、玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会の石丸初美さんと永野浩二さん、鳥栖市議の牧瀬昭子さん他が参加され、九電や県への申し入れなどこの間の取り組みや九電の対応のひどさについてお話がありました。関西からも駆け付けました。

元原発技術者の後藤政志さんも見えてコメントをいただきました。

 

◎事故を起こし原子炉を止めない九電任せで何もしない規制庁

交渉の冒頭で緊急署名を提出しました。短期間に1,317筆が集まりました。ご協力ありがとうございました。同じ文面で九電にも提出する予定です。

交渉には、規制庁検査課の二名が対応。福島みずほ議員も参加されました。規制庁は「事業者が決めること」「事業者の責任」「事業者が考えること」と、何度も「事業者が」を連発し、九電にすべての責任を負わせようという姿勢でした。

 

◆原子炉を止めず二次系を動かしたまま作業

原子炉を止めない件について、まず二次系の現状について聞きました。原子炉は低出力で運転中で熱が発生し、一次系の熱を取るために蒸気発生器を動かしている。二次系も動いている。タービンはバイパスして蒸気を直接復水器に流していると説明しました。今回事故が発生した脱気器は、復水器の下流にあります。脱気器を含め二次系の給水ラインは止めていないことが明らかになりました。

規制庁は、脱気器の温度は90度で蒸気は発生していないので、動いていても作業は可能だろうと説明していましたが、原子炉を止めずに点検や交換を行うことの安全性については、九電が安全だと言っている、何か問題が起きているわけではないので安全だというというだけで、規制庁が直接確認したわけではありませんでした。また、九電が原子炉を止めない理由を聞いたのかと聞きましたが、規制庁は聞いておらずわからないと回答しました。

市民側は、原子炉が動いている状況で、点検や交換を行うのは信じがたい。低出力運転で何か起きたら事故につながりかねないとし、直ちに停止させるよう要求しました。規制庁は止めるか止めないかは事業者の判断と繰り返すだけでした。

 

◆事故があった直管部で保温材を剥がした検査は全く行っていなかった

事故があった配管は11年前の2007年2月に保温材をはがし、配管の厚みを測り、あと47年もつとの評価を行ったことが報道されています。規制庁からは、11年前の検査は、事故を起こした配管近傍の曲がり部の代表部位についての検査結果で、今回蒸気が噴き出た直管部分は保温材を剥がさない外観検査しかしていないとの回答がありました。穴のあいた配管は、運転開始以来一度も保温材を剥がしたことはなく、事故がなければ廃炉までそうであったとのことです。ずさんな検査の実態が明らかになりました。

また2007年の検査で厚みがどうであったのかと聞きましたが、具体的な状況は聞いていないとの回答でした。検査のあり方が問題になっているのに、状況把握すらしていませんでした。

 

◆「著しいさび」を見つけていたのに再稼働を強行した

九電は再稼働前の外観検査で「著しいさび」を発見していたとの報道については、その事実を認めました。九電は、穴の兆候であるさびを外から見つけていたにも関わらず、止めて保温材を剥がして調べることをせず、再稼働を強行して事故をひきおこしたのです。

九電が再稼働を強行したことが、結果的に誤っていたことについて、規制庁はしぶしぶ認めました。そのような九電が安全だといっても信頼できないではないかと問い質しましたが、ここでも「停止の判断は事業者」を繰り返すだけでした。

 

◆漏れた蒸気の量すらわからない

九電は今回の事故を「微小な漏れ」と表現しています。規制庁に対し、微小とはどういうことか、漏れた蒸気の量は把握しているのかと聞くと、わからないとの回答でした。この表現をすぐに撤回させるよう求めました。

 

◆長期間の停止が引き起こした事故

事故の原因について、規制委の更田委員長は、長期間の停止が引き起こす問題を指摘しています。長期間停止した原発について、追加の点検について聞きました。1年以上停止していた原子炉は特別な保全計画で必要で、これに従い、当該配管については、内部を窒素で満たして腐食を防ぐ措置を取っていた、特別な保全計画は規制庁も確認していたと回答がありました。

しかしそれでは内部からの腐食防止にしかなりません。今回あったような外部からの腐食については想定されておらず、保全計画は不備であり、それをよしとした規制庁にも責任があるはずです。規制庁はあくまで事業者の問題だとまたまた事業者を連発し、責任を逃れようとしていました。

 

◆立ち入り調査すらしない

事故を起こした配管の点検について、規制庁が立ち会ったのかと聞くと、九電が行う点検であり、立ち会っていないと回答しました。起こってからはどうかと聞くと、立会検査は行っていないし、今後行うつもりもないと。佐賀の石丸さんからも福島議員からも、せめて立会検査くらい行うべきだ、と再三要請しましたが、規制庁は拒否の姿勢でした。

 

◆水平展開も事業者の判断

他の原発で同種の配管に問題がないかを調べる水平展開についても聞きましたが、これも事業者の判断だと。外観検査の見直しについて、今後は保温材を剥がしての検査を行うことになることを確認しようとしましたが、可能性は認めながら、ここでも事業者の判断だと。本当にそれでいいのでしょうか。

「事業者が」の連発は、いま規制庁が行っている検査制度の見直しとも関係していると思われます。事業者任せのやり方は保安院時代よりもひどくなっているのではないでしょうか。

 

終了後、佐賀から、九電は規制庁が確認したから大丈夫だと連呼している、その規制庁がこのように事業者任せだと一体だれが責任をとるのか。無責任体制ではないか、地元でもこの実態を広く知らせていきたいと話されました。

原子力規制を監視する市民の会  阪上 武

 

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2018年4月9日 政府交渉資料全体
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