【佐賀県「私たちには分からない。仮定の話には答えられない」!?  玄海4号機一次系ポンプ事故:知事要請】

 

玄海原発4号機一次系冷却材ポンプ事故について、5月9日の九州電力本店への抗議に続き、10日、佐賀県知事への申し入れを行い、県として県民に説明すること、再稼働同意を撤回することなどを求めました。

事故が起きてしまった中、県は今回も「要請文を受け取って、話は聞くが、回答は後日文書で」といつもののらりくらりの対応でした。

私たちは要請書を提出の上、特に情報連絡体制の不備などについていくつか事実確認をしました。

 

佐賀県ホームページで公開された情報はこれだけ
佐賀県ホームページで公開された情報はこれだけ

事故から今日で1週間経ちますが、佐賀県は事故情報としてわずか4行の文章をホームページに掲載しただけ。九電からどういう説明があっているのかを聴くと、「原因は調査中ということだが、九電からは日々のやり取りの中で、話を聴いている」と。「それをなぜ県民に知らせないのか。ポンプがどういうものかなど、愛媛県のように出せる情報を県民にもっと開示すべきだ」と求めました。

私たちは「今回は一次系の事故。“異常”が放射能放出につながる可能性があるんですよね?」という当たり前のことを確認のために尋ねました。県担当者は「私たちには分からない。仮定の話には答えられない。九電に聞いてください」などと開き直りの回答。唖然としました。

愛媛県のように「異常事態とは、正常状態以外すべての事態が発生したとき」と明確に規定して、何かあったら住民にすぐに伝える情報連絡体制を整え、避難に備えるべきです。原発事故は放射能の問題であり、住民の命にかかわる問題だからです。

取り返しのつかない事故を絶対に起こしてはなりません。

 

自治体が住民の命を守る立場に立つよう、声を出し続けていきましょう。

そして、再稼働をなんとしても中止させましょう!

 

◆九電や佐賀県への抗議・要請をぜひ!

九州電力本店エネルギー広報課:092-726-1585

 佐賀県原子力安全対策課:0952-25-7081


 要請書 

玄海3号機蒸気漏れ事故に続く 4号機一次系冷却材ポンプ事故

大事故の警告と受け止めよ

再稼働同意撤回を求める

2018510

佐賀県知事 山口祥義 様

 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/プルサーマルと佐賀県の100年を考える会

玄海原発反対からつ事務所/原発を考える鳥栖の会/今を生きる会/原発知っちょる会

風ふくおかの会/戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/たんぽぽとりで

東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会/あしたの命を考える会

 

52日、再稼働へ向け試運転中の玄海原発4号機で、放射性物質を含む一次系冷却水を循環させるポンプ2台で、流入防止用の水の流量が通常の2倍にも増える異常が見つかったと、53日夜に報道があった。

1か月前の330日には再稼働直後の3号機で蒸気漏れ事故を起こしたにもかかわらず、原子炉を止めず、配管の総点検もしないで417日に発電再開を強行した直後の今回の事故に、私たちの不安と怒りは増大するばかりだ。

九州電力に対して強く抗議するとともに、知事に対して34号機の再稼働同意撤回を求める。

 

今回異常が発生した2台のポンプの「シール部」は今年1~3月に新品に換えたばかりだったというが、なぜ事故は起きたのか。点検で見落としがあったのではないか。部品交換だけで済まされるのか。残りの2台は分解点検しないのか。同じ部品を使っている3号機も運転を止めて点検しなおすべきではないのか。構造的欠陥があるのではないか。

4号機は20111225日以来64か月停止しているが、長期停止の影響はないのか。

ポンプが破損し、冷却材喪失、放射能放出につながる事故に発展していた可能性はなかったのか。

九電は事故についてこれまでに公開したのは概略図1枚だけであり、どのような事故であったのかほとんど分からない。同意した知事の責任において、事故原因などを県民に対して丁寧に説明する責任がある。

 

自治体・住民への通報連絡体制も問題だ。216時に「異常」が発生したが、自治体への最初の通報は、「再稼働工程に影響する可能性が出てきた」翌311時だった。異常発生から19時間も経ってからの連絡だった。

佐賀県の副島副知事は蒸気漏れ事故の際に「空振りでも結構なので、日頃と違う状況がある段階で本県に連絡を」と九電・山元取締役に要請した。九電は今回「今までなら分解点検が決まった段階(31310分)で連絡するので、早く対応した」という。しかし、事故進展が早ければ、報告すべき案件か判断している間に遅れるということがありうる。「異常発生」後ただちに通報しなければ、住民は放射能から逃れることが困難になりかねない。

四国電力伊方原発3号機が20167月に同様のポンプ事故を起こした際に、愛媛県は四電からの第一報を受け取った時に9ページの資料をホームページに公開したが、佐賀県はホームページで4行の「お知らせ」を掲示しただけである(1週間経った今もそのまま)。九州電力と締結した安全協定に明記されている「立入調査」も行わず、蒸気漏れ事故時に設置した情報連絡室(翌日閉鎖)を今回は設置さえしなかった。

知事は「玄海原発については、とにかく安全第一で、慎重にも、慎重にも慎重を尽くしてくれということが基本だ」(419日記者会見)などと言うが、知事自身が「基本」をまったく守っていない。放射能事故から住民を守らなければならないという危機意識が欠如していると言わざるを得ない。

 

一次系冷却材ポンプの事故は、玄海原発1号機で19991月に通常運転中にも起きて原子炉を停止したほか、200510月の関西電力美浜原発1号機、20167月の四国電力伊方原発3号機(上述)など、全国の原発で相次いできた。

異常のあった一次冷却材ポンプのシール部は、圧力に耐えている部品同士が相対的に移動しあっており、内部から液体が漏れるのを防ぐのは至難だと言われている。元東芝の技術者・小倉志郎さんは伊方の事故後、「一次系冷却材ポンプのシール部は、原発のアキレス腱だ。恐ろしいのはこの構造的欠陥、ポンプの軸受け部のシール技術の未確立から繰り返されてきた水漏れ故障事故が、冷却材喪失事故に直結する可能性があること」だと指摘している。

 

ひとたび大事故が起きれば、佐賀・九州はもちろん、地球上のすべてのいきものたちが放射能による犠牲を強いられ、取返しのつかないことになる。

県民の命とくらしを第一と思うならば、今回の玄海3号機蒸気漏れ事故と4号機一次系冷却材ポンプ事故を警告として重く受け止めるべきだ。再稼働など言語道断である。

以下、要請と質問をする。どのように対応されるのか、2週間以内の文書回答ならびに直接面談の場を求める。 

【 要請事項 】

 

(1)知事が言う「やむを得ず再稼働」ということに、私たちは理解などしていない。玄海原発34号機の再稼働同意を撤回すること

(2)34号機の事故の原因、経過、対策、影響などについて、県として立ち入り調査もした上で、県民に対して説明すること

(3)事故・トラブル時の通報連絡体制について、愛媛県の対応に倣って「正常状態以外のすべての事態」の報告を九電に対して義務づけるようにすること

現行の通報連絡体制や 「情報連絡室」の設置基準も明らかにすること

(4)県民に対する情報伝達の遅れは県民の判断の自由を奪うことになる。どんな小さな事故・トラブルでも事実をただちに知らせ、避難する/しないの判断を住民に委ねること

(5)県として原発に慎重な立場の専門家の意見も聴取し、それを踏まえた対策を九電に求めること 

 

【 質問事項 】

 

●玄海3号機蒸気漏れ事故時の専門家意見聴取について

<経緯>

45日、副島副知事は九電・山元取締役に対して「専門家の意見を踏まえた対応」を求めた。県は「原子力安全専門部会」の委員のみを想定。

6日、私たちは「原発に慎重な立場の専門家(201612月に市民が要望した8人ら)からの意見聴取」を県に要請。元東芝の原子炉設計者の後藤政志氏が20日に佐賀に来られるということで、具体的に要望。

10日、県から「後藤氏から意見聴取を行う」と回答。

13日、県が「専門部会委員」意見聴取会開催。

17日、九州電力が県に最終報告書を提出。県は発電再開容認。

18日、発電再開。

20日、県が後藤氏を意見聴取。

<質問>

①後藤政志氏からは元原子炉設計者という立場からの貴重な意見を聴けることが分かっていたのにもかかわらず、県は当初から「専門部会委員の意見とは別扱い」「再稼働の判断には含まない」などと発言していた。さらに20日に聴く前の17日には発電再開を容認した。なぜこのような失礼な扱いをし、話を聴く前に容認したのか。

②後藤氏の意見について、九電に伝えるなり、ホームページに載せて広く県民に知らせるなり、県としてどのように扱ったのか。

 

③他の慎重な立場の専門家の意見聴取については、具体的に何をどう検討し、実施したのか。

 

ダウンロード
2018年5月10日 佐賀県知事宛4号機一次系冷却材ポンプ事故 要請質問書
玄海3号機蒸気漏れ事故に続く 4号機一次系冷却材ポンプ事故/大事故の警告と受け止めよ/再稼働同意撤回を求める
201805010知事ポンプ要請●.pdf
PDFファイル 319.0 KB
ダウンロード
2018年7月10日 玄海4号機一次系ポンプ事故に関する要請質問書 佐賀県知事からの回答
佐賀県知事宛要請質問書(2018年5月10日)に対する回答
20180710知事回答ポンプ.pdf
PDFファイル 756.9 KB

■報道


■報道

◆佐賀新聞


◆西日本新聞


【参考リンク】
<九電と佐賀県からの情報は発生直後から1週間後経っても、下記だけ>
◆平成30年5月3日 九州電力株式会社
 玄海原子力発電所4号機の1次冷却材ポンプシール部の点検を行います
 http://www.kyuden.co.jp/press_h180503-1.html
◆佐賀県2018年5月3日
九州電力から、玄海原子力発電所4号機の1次冷却材ポンプを点検するとの連絡がありました
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00361483/index.html

 

<伊方原発3号機事故での愛媛県の対応>
2016年7月に四国電力伊方原発3号機でも同じ「一次冷却材ポンプのシール部の流量増加」事故が発生。愛媛県は四国電力から直後から詳細な情報を受け、県として公表。立入検査も行った。
◆伊方3号機1次冷却材ポンプ3B軸封部の第3シール部の流量の増加について(第1報)2016年7月17日
https://www.pref.ehime.jp/h99901/kouhyou/kouhyou280717.html
◆伊方3号機1次冷却材ポンプ3B軸封部の第3シール部の流量の増加について(第2報)2016年7月25日
https://www.pref.ehime.jp/h99901/kouhyou/kouhyou280725.html
◆伊方3号機1次冷却材ポンプ3B軸封部の第3シール部の流量の増加について(第3報)2016年8月1日
https://www.pref.ehime.jp/h99901/kouhyou/kouhyou280801.html

 

<一次系冷却材ポンプ事故の深刻さ>
◆明日に向けて(1299)守田敏也さんブログ 2016年09月01日
一次冷却材ポンプ、再循環ポンプは原発のアキレス腱!川内、伊方原発をただちに停止すべきだ!
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/15be99138463055eb10641f091bb8341