9月14日、福岡県糸島市長に対して、玄海原発の地元同意権を求める要請を行ってきました。
糸島は自然が豊かで、移住者も多い地域です。しかし、原発からは30分で放射能を帯びた風が、遮るもののない海をわたって吹いてきます。
「糸島市は年間100日は玄海原発の方向から西風が吹いている。30キロ圏はもちろん市内全域が西風の影響により放射性物質の深刻な影響を受ける恐れがある。10万市民の安全安心を守るために、立地自治体と同等の安全協定を結び、事前了解の権限を得る」よう求めました。
しかし、市の姿勢は情けないものでした。対応した危機管理課長は「茨城では地域性というか、核となる立地自治体が呼び掛けて、まわりを巻き込んでという話だったが、玄海では周辺自治体がそれぞれ意識が違うので、同じようなことにはなかなかならない。玄海では音頭をとる人がいない」と。
一方で「事故や異常のたびに九電幹部が来るが、市長はその都度、市民の意見を代弁してものを言っている」などと述べました。
事故が起きたらどのぐらいで放射能が糸島に到達するのか尋ねると、「30分」だと。
こちらから、「30分!逃げられますか?住民説明会で出された意見はすべて再稼働反対だった。2月に更田委員長が来た時には、副市長が会合に出席したのに何も意見を出さなかった。九電や国に対して、言うべきことを言っていない。市民の代弁をしていないではないか。住民の命を守るのが自治体の最大の役割であり、その先頭に立ってほしい。同意権の獲得、安全協定の見直し(意見の申出、立入調査権など)、避難計画の見直しなどを、福岡県の中で糸島が率先してやってほしい。行政も住民もそれぞれの立場でできることをやっていこう」と強く要望しました。
問題だらけの避難計画の中で、避難経路のことを聞きました。糸島市に隣接する佐賀県唐津市の一部地域の住民が、糸島市を通って佐賀県鳥栖市へ避難することになっています。しかし、糸島市は「糸島市内の道路が渋滞するようであれば、道路を止めて、唐津市民には福岡県を通ってもらわないようにする、交差点では警察が誘導する」とのことでした。唐津市民にそのことは伝わっているのでしょうか。いざという時に混乱や大渋滞が発生するのは必至です。
課長は最後に「自分も地域に帰れば、一住民だ。みなさんの思いはわかる。行政として難しいところもあるが、できることはやっていきたい」と述べました。
今後も継続的に働きかけていこうと思います。
要請書
玄海原発安全協定に事前了解の権限など
立地自治体と同等の権限を求めます
2018年9月14日
糸島市長 月形 祐二 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
玄海原発反対からつ事務所
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会
【要請事項】
玄海原発に関する九州電力との安全協定において、「事前了解の権限」など立地自治体と同等の権限を求めてください。
【要請の趣旨】
東京電力福島第一原発事故は大量の放射能を放出し、立地自治体をはるかに超えて甚大な被害を住民にもたらしました。事故から7年半経った今も数万人もの人たちが故郷へ帰れないままです。福島の帰還困難区域は原発30キロ圏を超えて広がり、玄海原発30キロ圏に位置する糸島市はすっぽり入ってしまいます。また、“復興”の掛け声のもと、賠償は次々と打ち切られ、放射能で汚染された地域への帰還政策が進められています。様々な健康被害が報告されても因果関係は分からないとされ、事故による被害の全貌が今なお明らかになっていません。
こうした中、九州電力は玄海原発3・4号機を再稼働しました。「絶対に事故は起きない」とは言えない原発です。福島の現実を見るならば、玄海原発で同じような事故が起きれば、放射能は偏西風に乗って、九州はおろか西日本全域に拡散し、壊滅的な被害をもたらすことは明らかです。
原発30キロ圏(UPZ)自治体に避難計画作成が義務付けられましたが、実効性ある計画となっていません。「事故が起きたらもう逃げられん」という声を多く聞きます。とりわけ離島住民や要援護者など社会的に弱い立場の方たちの命は守られるのでしょうか。
昨年3月に本市で開催された住民説明会では、住民からあがった声はほとんどが再稼働に不安と反対の声でした。こうした住民の声を置き去りにして、玄海町と佐賀県の同意だけで再稼働が強行されました。住民に何の発言権もなく、一方的に犠牲を受けるだけの現状は理不尽極まりありません。
本市は2012年に九州電力との間に安全協定を締結しましたが、施設変更時には事前了解の権限がなく、「情報提供」されるだけです。また、事故時の立入調査の権限もありません。玄海3・4号機が営業運転を再開した今、危険性はそれだけ増えました。また、使用済み核燃料プールは今後5年から7年で満杯になると言われる中、リラッキングや乾式貯蔵施設建設、2号機の運転延長問題、4号機でのプルサーマル実施など、問題が山積しています。これらに対して、「情報提供」だけでなく、事前了解の権限がなければ市民の命を守ることはできません。
一方、日本原子力発電(株)は今年3月29日、東海第二原発の再稼働・40 年超えの運転延長に際し、立地自治体の東海村に加え、水戸市などUPZ5市にも「実質的な事前了解権」を認めるとする新たな安全協定を結びました。UPZ自治体に事前了解の権限が認められたのは、初めてのことです。
本市においては、年間100日は玄海原発の方向から西風が吹いてきます。30キロ圏はもちろん市内全域が西風の影響により放射性物質の深刻な影響を受ける恐れがあります。10万市民の安全安心を守るために、立地自治体と同等の安全協定を結び、稼働、運転延長、施設変更等に対する事前了解の権限を得る必要があります。
今、日本列島は集中豪雨、台風、酷暑、地震、火山など、これまでの常識を超えた自然災害が相次いで発生しています。原発事故との複合災害となれば、私たちは身動きできず、とりかえしのつかないことになるのは必至です。
以上の理由から、玄海原発に関する九州電力との安全協定において、住民の命の安全を守る責任がある市長は先頭に立って、「事前了解の権限」など立地自治体と同等の権限を求めるよう要請いたします。
本要請に対して、どのように対応されるのか、2週間以内の文書回答を求めます。