佐賀県が来年度から玄海原発の使用済み核燃料への課税を始めるにあたり9月県議会に提出した条例案に対して、九州電力は原子力安全対策の「財政需要の拡大抑制に努めろ」「積極的な広報を」と要求を意見書にして提出してきました(佐賀新聞9月12日)。筋違い甚だしいものです。
本日9月18日、私たちは県議会に対して、九電の傲慢な姿勢を糾すとともに、そもそもなぜ使用済み核燃料が行き場もないままに佐賀の地にとどめ置かれようとしているのか、破綻している「核燃料サイクル」の実態を明らかにして住民に説明することを求めて、要請書を緊急提出しました。
核燃料サイクルからの撤退を!事あるごとに、世論を巻き起こしていきましょう。
要請書
核燃料サイクルは破綻している
九州電力「核燃料税条例案に関する意見書」は筋違い
2018年9月18日
佐賀県議会議長 石倉秀郷 様
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会 代表 石丸初美
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会 共同世話人 野中宏樹
玄海原発反対からつ事務所 代表 北川浩一
佐賀県が来年度から玄海原発の使用済み核燃料への課税を始めるにあたり9月県議会に提出された条例案に対して、「地方税法に基づく意見」として九州電力は意見書を提出しました。その中で、九電は県に対して、「財政需要の拡大抑制に努めて」「県民の皆様に積極的な広報を」と求めてきました。
核燃料税は放射能を取り扱う危険な原発の安全対策や防災・避難対策など、「原発がなければ生じない財政需要」(県税政課)です。
安全対策や防災対策に加えて、事故時の賠償費用、10万年の管理が必要な核のごみの処理費用等の負担、そして、放射能被ばくという犠牲を一方的に住民に押し付ける加害当事者が、被害当事者に対してこのように言うのは筋違い甚だしいものであり、私たちは怒りを禁じえません。
問われるべきは九電の姿勢だけではありません。今、立ち止まって考えなければいけないのは、なぜ使用済み核燃料が行き場もないままに、佐賀の地にとどめ置かれようとしているのかということです。
わが国は「使用した以上のプルトニウムを生み出す“夢の原子炉”」=高速増殖炉を中核とする「核燃料サイクル」を国策として莫大な金(税金と電気料金)を注ぎ込んできました。使用済み核燃料からプルトニウムを製造する六ケ所再処理工場は、通常の原発から出される放射能1年分を1日で出すと言われていますが、1993年の着工開始から25年が経過、約3兆円をつぎ込んだものの、24回の完成延期を経て、いまだに完成をみていません。再処理工場から出される高レベル放射性廃液は処理方法も埋設場所も何も決まっていません。
高速増殖原型炉もんじゅには建設費約6000億円に加え、1日5000万円の維持費の計1兆円をつぎ込んだものの事故やトラブル続きで2016年に廃炉が決定しました。本年8月には、使用済みMOXを再処理するための費用計上を電力10社が2016年に中止していたことが分かりました。政府は同年に設立した「使用済燃料再処理機構」への拠出に制度移行したと言いますが、そもそもMOX再処理の技術は確立していません。MOX再処理のための「第二再処理工場」など世界中どこにもありません。「サイクル」と言いながら、「回らない」こと、破綻していることは、もはや誰の目にも明らかです。六ケ所再処理工場にすでに搬入された全国の原発の使用済み核燃料は「回る」ことを前提に受け入れたものであり、「回らない」のであれば各原発サイトに戻されることになります。
玄海原発においても、核燃料サイクルが「回る」ことを前提に使用済み核燃料を一時的に「保管」してきた理由が、すべて崩れ去りました。九電が検討しているリラッキングや乾式貯蔵施設建設を許して、原発の稼働を続けさせるのは、持って行き場のない使用済み核燃料をさらに増大させるものです。
そして、核のごみの最終処分について、九電の池辺社長は自らの責任を棚にあげて「みんなで努力を」と国民に押し付けました。この発言がどれほど傲慢なことかという意識さえ見受けられません。未来の世代へさらなる負担を押し付けるのは、倫理的に到底許されるものではありません。
原発の稼働を容認してきた知事と県議会の責任も重大です。こうしたことから、以下の点を要望します。
【 要請事項 】
(1)九電の「核燃料税条例案に関する意見書」について、その傲慢な姿勢を県議会として糾すこと。
(2)そもそも破綻している「核燃料サイクル」の実態を明らかにして、被害を受ける住民に対して分かりやすく説明すること。その際、原発推進の立場の専門家ばかりなく、慎重な立場の専門家の意見もじっくり聴取し、検討すること。