2月2日、玄海原発避難訓練の見学・監視行動をみんなで手分けして行ってきました。
玄海原発周辺では30キロ圏に全国最多の17離島があります。そこに19000人が暮らしています。離島住民の避難は最も困難な問題の一つです。以下、離島避難訓練の様子を紹介します。その他の各現場の報告もおいおい紹介していきます。
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私は原発から5.8キロ、海のすぐ向こうに原発が見える向島にKさんと前夜から上陸しました。
「全島民規模」といいつつ、島民の避難は54人中13人。あとは「ダミー」の市職員。
知事、唐津市長、職員、マスコミ一行がたくさん上陸しました。
訓練前後で島民の方たちとたくさん話をできましたが、話を聞いたすべての人が「行政の用意する船など待ってられない」「自分の船で逃げる」「風向きで考えるのが普通だ」「海が時化たら逃げられない」と言っていました。
では、今日の「計画」に基づいた訓練に何の意味があるのでしょうか!
20マイクロの被ばくは人体に影響がない、たいしたことはないというすり込みを行い、
安定ヨウ素剤実物は目の前にあるのに、説明・問診後は、結局あめ玉を配布。こんな時に、配布したらいいではないか?5キロ圏外ということで、あくまで事前配布しないつもりです。ヨウ素剤の保管されている診療所は2週に1回しか医師が往診に来ません。市職員ももちろんいません。区長は診療所のカギを持っているだけで、配布方法などはまったく分からないと言っていました。
市長は「え、ヨウ素剤は住民に配布していないの?」と、向島の置かれた状況を知らないようでした。
避難集合場所であり放射線防御施設となっている向島分校が土砂災害特別警戒区域にあることを、崖を見せながらマスコミや市長に伝えました
(危険区域問題:https://saga-genkai.jimdo.com/2018/12/28/a/)。
市長は部下にすぐ伝えるなど、気にしているようでしたが、私が区長にもそのことを資料を見せながら話していると、市長から「今日はそういう話をする場ではない。やめてくれ」と怒られました。
ヘリで駆けつけ、避難船で住民と一緒に移動するというパフォーマンスを演じた“VIP(唐津市実施計画の表記)”知事は、住民の思いをどう聞いたのでしょうか。事後の囲み取材で知事は、住民の思いに関する記者からの質問に対して、ヘリ訓練のことを誇らしげに語るなど、話題をすり替えて、逃げていました。
住民は「みんな原発いらないと思ってるよ」とはいうものの「なかなかそれが難しい」「そんなことを言ったら、他の補助金がカットされないか心配」などの声も。どこでもそうですね。
住民自身が声をあげなければ何も変わらない。
そのために、私たちが粘り強く働きかけていくこと、また、住民の声を拾ったらそれを知事や九電などに伝えていくことしかないとあらためて思いました。
以上、向島のとりいそぎの報告でした。
玄海原発避難訓練の日の朝、「全島避難」を行う予定の向島全景と 5.8キロ先にある玄海原発
(主なニュース)
◆原子力防災 向島で全島避難訓練 NHK02月02日 16時06分
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20190202/5080002354.html
◆原発事故想定 全島避難も~3県合同で訓練 RKB 2月4日(月)
19時50分
https://rkb.jp/news/news/46593/
◆原子力防災訓練 国と3県連携 課題はー STS 2019/02/04
(月) 19:02
https://www.sagatv.co.jp/news/archives/29823
【追記】 以下、『玄海プルサーマル裁判ニュース25号』より
◆離島避難訓練の問題点-唐津市向島 (K.K)
今回の訓練重点項目の一つ、離島避難訓練が唐津市肥前町向島で行われた。私たち2人は前夜から島に入り、訓練に立会ったので以下、報告します。
玄海原発30km圏(UPZ)には17離島、19,000人が暮らしています。架橋で繋がる3島を入れると、20島26,000人を数え災害時は多くの難題を抱えている。
向島は玄海原発西方約6Km(UPZ圏)に位置する面積0.3?、人口54名の漁業を生業とする島。原発が目の前に見える。電気は本土から海底送電、水は島内溜池利用。小学校分校があるが在籍児童無く閉鎖中。診療所は月に2回開設。要介護者はほぼ全員島外施設に入所。高齢化、過疎化が進む島の一つ。
本土の肥前町星賀港から定員12名の連絡船で約10分の地。1日3往復しかない。
<訓練概略>
訓練当日、定刻に家屋内避難勧告放送、追って避難所への集合放送。
避難所集合
・地元消防団、防災つなぎ着用
・住民、住民ダミーの市職員 普通服装
避難所(廃校の体育館2階)注1
・訓練統括官:「被曝線量はレントゲン撮像に比べ非常に低く安全」発言
・保健師によるヨウ素剤説明と個人面接後ヨウ素剤ダミー(あめ玉)交付。注2
島外避難開始(島民13名と住民ダミー市職員31名)
自衛隊ヘリ注3、自衛隊艦艇注4、他島からの小型フェリー他。
要介護者はヘリで付き添いと唐津市へ。フェリー乗船避難者は星賀港解散
<感想>
・17離島同時対応は不可能であり具体性に欠ける絵に描いた餅。
・悪天候、救援体制を考慮して燃料、食料、水など備蓄日数を増やす必要あり。
・被曝からの避難という認識が実施者にも住民にも希薄。
・訓練直前の放射能学習必須。
・ヨウ素剤全島事前配布必須。
・より安全、確実に避難するために離島はPAZ圏に組み入れる検討必要あり。
<島民談>
・自己判断で自分の船を使い逃げる、財産じゃもん。
・放射能降る中、(原発の)ドーム目がけて行きとうなかね。
・放射能のふゆっまで、こらえっきるじゃろうか。
・わが身んことだけで人助けのでくっじゃろうか。
・脚の不自由かけん夫婦で家におるよ。
・2人以上子供産んで、分校ば再開したかと(妊婦さん。訓練不参加)・・・・。 以上
注1.裏の崖は土砂災害危険指定地域であり、海底送電線、電話回線取り入れ口も隣接。もし崩落すれば施設1階の空調及び与圧システム、非常用電源設備機能不全の恐れがあるが、指摘に対しこれ以上の代替施設がないとの県の回答。当日、その場で唐津市長に指摘。当日取材の報道関係者も報道せず。
注2.医師の常駐していない診療所1か所だけに備蓄。またとないヨウ素剤配布の機会であったがその認識欠如。保健士に指摘。
注3.悪天候運航不可。
注4.港湾関係者の話では、荒れると入港不可で艀(はしけ)渡し必要。
◆糸島市の住民避難 (T.M)
福岡県糸島市で行われたUPZ住民避難訓練(中継所方式によるバス避難)見学したので報告します。
① 中継所に設定された糸島リサーチパークは、玄海原発から34キロしか離れていない。ここに放射能は及ばないのか?風向きや放射能濃度を無視した訓練はおかしい。
② 訓練想定は「地震が発生し、・・・全ての交流動力電源が失われ、炉心を冷却する全機能を喪失し炉心損傷に至り、放射性物質が放出された」というもの。自衛隊の責任者に「メルトダウンですね?」と尋ねると、あくまでも炉心損傷であるとし、メルトダウンであるのかないかについては回答しなかった。メルトダウンを想定した訓練を市民に知られるのが怖いのか、他に言質を取られてまずいことがあるのか。理解できなかった。
③ 8時30分にテレビ3局が中継所に来所。8時50分県職員10人が到着。9時35分に自衛隊のトラック3台が到着。糸島市の職員は37名が参加。
④ 糸島市二丈松末と同祇園の住民33人は10時40分に現地集合し、2台のバスに分かれて避難。11時頃リサーチパークに到着し、スクリーニングを行った。バスの運転は市職員とバス会社社員が行った。市職員12名は大型バスの免許を公用で取得している。職員に、現実に事故があった時には原発20キロほどの所を往復する可能性があると伝えたら当惑していた。避難民に対しては訓練の状況説明が不十分だった。11時55分に避難先の宇美町民センター向けて出発した。
⑤ 住民の集合する公民館とバスの中で安定ヨウ素剤の説明・配布があった。地区によっては説明もなく配布されただけの所もあったという。
⑥ 福島の現実を見ると、避難する時点で長期間になることが想定されるので、長期避難も同時に計画すべきである。また、市役所が汚染されて業務ができなくなった時の対応も計画すべきである。
⑦ 今回の訓練は、訓練参加者以外の糸島市民、糸島市議会議員に知らされていない。市は「原子力災害対策計画の中で防災訓練の実施を、市民の防災意識の高揚を図るため」としている。しかし、ホームページに訓練の記事が掲載されているものの、ほとんどの市民は見ていない。区長や自主防災会にも原子力防災訓練を告知していない。また、訓練総括についても公開の予定がないとのこと。
意図的に情報を小出しにすることにより、市民が問題意識を持つことを妨げようとしていることを確信した。こうした市民への広報の問題や、モニタリングポストのデータ解析、スピーディの有効活用、原発事故時にオフサイトセンター(原発14㎞地点)に職員を派遣することは可能なのかなど、糸島市役所に対して情報公開請求をするつもりである。
◆障がい者グループホームの避難 (T.H)
原発から10キロにある障がい者施設「からつ学園」。60人の入所者がいる。そのうち26人が入居するグループホームで、隣の施設で生活介護を受けている時に事故が起こったという想定の下、避難訓練が行われた。
ホームから数人の利用者が、隣接する生活介護棟へ移動している。服装はたぶんいつもと同じ。マスクもなければ、帽子や手袋もなし。
訓練のタイムテーブルに沿って施設職員はその役割を演じ、11名の代表参加者が誘導されていく。避難用のバスは、かなり早めに到着して、訓練実施を待つ。実際放射能で汚染された中を本当にバス会社の運転士はここまで来るのだろうか?平常時にこの施設や地域避難者の全員を移動させるためのバスは確保できるの?などと次から次に疑問は出てくる…ま、いいか、避難訓練といったところで、屋内退避が基本なのだから、移動することになるなんて万が一にもありえないという想定なのか…と納得をしてみる。
施設から出てきたある男性に声をかけたところ、その方は利用者を送迎する車の運転士で「事故が起こったらどうしようもない、逃げられん」と話し出された。その方は、原発ができる時に右翼の宣伝車まで引っ張り出して、反対を表明したのだそうだ。「あんたたちにできるか?」と迫られた。(一瞬たじろぎ、黙って聞く私たち)そして、原発が動いてしまった今、もうどうしようもないことを何度も言われた。私たちが反原発の立場で訓練を見守っている旨を伝えると、最後には「がんばってください」と言われた。
そして、いざ避難先の施設へ!
受け入れた施設も、食糧の備蓄・夜具などの余分は自施設分で精一杯で、エアマットと寝袋は5セットだけという。移動してきた入居者も食料は持参していたし、ちゃんと防護もしていた。でもちょっと待てよ。ここに着くまでにスクリーニング・除染したか?してないよね。汚染された中を来て、汚染されたまま受け入れてもらって、いいんですかね?天山が防護壁になって汚染を阻止してくれてるなんて想定でもないよね。ヨウ素剤の配布はなかった。
原子力防災って言うけど、放射能を放出するのって災害じゃなくって事故じゃないですか!原子力防災訓練じゃなくって、放射能放出事故に対する防護訓練(いや被曝訓練?)とでもしないと、何から避難するのかわかりません。でも、そういうことにしたら他の自然災害と並べて防災訓練なんて言えなくなりますね。最後まで『放射能』の見えない訓練でした。