【4/15乾式貯蔵・リラッキングに関する九州電力本店交渉報告】

4月15日、玄海原発の使用済み核燃料の乾式貯蔵施設建設とプールのリラッキング工事について、九州電力本店と交渉を行いました。13団体、31人が参加しました。
猛毒の放射能="死の灰"が溜まり続けていくことへの住民の不安にまったく寄り添わない九電の姿勢が露わになりました。以下、概要を報告します。

●「制限容量」=土壇場にきて、1サイクル多く運転できる計算方法で説明
プールが満杯になるまでの目安として、これまで九電は佐賀県議会などで「管理容量」という言葉で説明してきたのに、突然「制限容量」を持ち出してきた問題について、「管理容量を守るという認識はない。もともと制限容量という認識だった」と言いました。今までの説明は何だったのでしょうか。設置変更許可申請書からも逸脱しています。使用済み燃料問題を考える時に基礎となる数字です。議会、住民への説明のやり直しが必要です。

 

●「貯蔵期間」を答えられず。永久保管への不安は増すばかり
住民の大きな不安は、乾式貯蔵施設ができたら、永久に使用済み核燃料が置かれ続けることになるのではないかという点です。国の審査ガイドは乾式貯蔵施設の「設計貯蔵期間」(想定される最大貯蔵期間)の明記を義務付けています。期間は何年かを問うと、九電は「キャスクの耐用年数は60年」と回答。施設全体として60年という認識でいいかを確認すると、九電は 「そうです」と答えました。
そこで、佐賀県知事からの回答で「九電は県議会において『設計貯蔵期間というものはない』と説明している」と答えたことを指摘すると、九電は「先ほどの回答は修正する。施設の設計貯蔵期間は『ない』ということ。キャスクは60年。施設の運用期間は今後検討することになる」と、知事回答に合わせて、説明を変えました。「60年」となぜ言えないのでしょうか?ひとたび施設ができれば永久に留め置かれるのではないかという不安は増すばかりです。

 

●貯蔵期間「60年」終了後には、六ケ所は寿命
九電は「2021年上期に六ケ所再処理工場が竣工するので、そこへ搬出するのが基本」と言いますが、これまでに24回の完成延期をしています。稼働しなかったら、玄海から搬出できませんが、そういう想定はしていないようでした。
仮に完成したとして六ケ所再処理工場の寿命は、国の原子力立国計画では「40年」とされています。一方で、キャスクの耐用年数≒貯蔵期間は60年です。しかし、60年後には搬出先がもう存在しないのです。六ケ所の寿命を九電に質すと、「今、もちあわせていないので、わからない」と回答を逃げました。

 

●プルトニウム余剰は世界の脅威になる
九電は、再処理工場が稼働したら玄海から毎年108体ずつ六ケ所へ搬出する計画を立てています。私たちが「全国の原発の使用済み燃料の再処理が進めばプルトニウムが余る。プルサーマル消費計画も具体的にない中、どうするのか」と質問すると、九電は「自社の分は自社で消費する。他社のことは分からない」と。「『利用目的のないプルトニウムは持たない』というこれまでの国の原則にも反するし、国際約束も破ることになる。電力事業者として無責任だ」と指摘しました。

 

●問題は放射能!
私たちが「住民が一番不安に感じていることは何かわかるか?」と聞くと、
九電担当者5人はお互いに顔を見合わせて、しばらくしてから答えました。
「・・・ずっと留め置かれるのではないかということです。しかし、2021年上期に日本原燃さんの六ケ所再処理工場が竣工するので..国の方針に沿って再処理を...」と、「原燃さんが」「国が」を繰り返しました。
私たちは「私たちがこんなに心配して言うのはなぜだと思うか?」と重ねて質問。
九電は「放射線の管理のことがあるから」と、やっとのことで答えました。
一番の問題は放射能です。
使用済み核燃料に含まれる放射性物質は200種類以上、新燃料の放射能量の1億倍だといわれています。九電に使用済み核燃料の組成や放射能量を質すと、これまた「回答を持ち合わせていない」と答えませんでした。
別の質問で、九電が売り文句にしている"フェイス・トゥ・フェイス"の住民戸別訪問で原発が生み出す放射能の危険性を伝えているかを問うと、九電は「安全対策について説明している。直接的に被ばくの危険性を伝えてはいない」と回答。原発、使用済み核燃料が有する放射能の毒性・危険性を、住民にもっともっと住民に知らせていかなければなりません。

 

●あまりに一方的な九電の姿勢
私たちが質問書を出したのは、半年前の去年10月。この間に、乾式貯蔵の申請が行われるなど、新たな状況がどんどん進行する中、やっと設定された回答・交渉の場でした。九電は紙資料を1枚も出さずに、こちらが聞いてもいない自説を延々とゆっくり述べ、それだけで1時間を費やし、再質問や追及の時間が非常に限られてしまいました。また、新たな質問は事前に通告し「可能な限り答えて」と求めていましたが、ほとんど「回答は持ち合わせていない」と、逃げました。
そして、「参加者は20人まで」「写真と動画の撮影は冒頭のみで、後は許可しない」という制約を今回も一方的に通告してきました。私たちは納得できないと、引き下がりませんでした。

 

●乾式貯蔵・リラッキング計画を阻止して、原発稼働を止めよう
行き場もなく処分方法も決まっていない 使用済み核燃料という"死の灰"=放射能がこのまま増え続けていくことを何としても止めなければなりません。
玄海の使用済み燃料プールは再来年には9割が埋まります。リラッキング工事の審査が来年度に終わらないと、プールも一杯となり、原子炉の稼働も一旦止めなければならなくなります。国の審査終了前後には知事の事前了解などの手続きがあり、一つの焦点となります。
今も動いている玄海原発3・4号機の稼働を止めるために、使用済み核燃料問題の重大さを住民に、自治体に、議会に、どんどん広報していきましょう。
全国の仲間と連携して、破綻している核燃料サイクルに終止符を打たせましょう!


乾式貯蔵施設・リラッキングに関する質問書
死の灰=放射能を これ以上増やしてはならない
玄海3・4号機の稼働中止を求める

2019年4月15日

九州電力株式会社

代表取締役社長 池辺 和弘様

 

 2月8日の佐賀県議会原子力特別委員会において、「2サイクル目の運転が終わった時に、リラッキングに関する国の審査がまだ終わっていなければ、(工事が間に合わないから)次は再稼働しないということが最良の手段ではないか」との質問に対して、参考人として出席した貴社の中村明常務は「仮定の質問でこれになったらどうなるということについては今考えてございません」と回答した。
 「仮定」というのなら、 「六ケ所再処理工場は予定通り運転開始する」「核燃料サイクルは回っている」「最終処分場は国民の責任で確保できる」「大事故は起きない」などという、すべて都合のいい仮定の下で原発を進めているのは九電自身ではないか。そして、その被害や犠牲は住民に一方的に押し付けられるのだ。
 乾式貯蔵施設建設とリラッキング工事を許せば、行き場もなく処分方法も決まっていない "死の灰"=放射能が玄海の地にさらに増え、永久に留め置かれることになりかねない。
 東京電力福島第一原発事故は8年経過した今なお収束しておらず、原子力緊急事態宣言発令中である。最大の教訓は原発事故を繰り返してはならないということだ。
 私たちは九州電力に対して、玄海原発3・4号機の即刻稼働停止を求める。
 以下の質問への回答を求める。

 

(1)使用済み核燃料
①新燃料と使用済み核燃料に含まれる放射性物質は、それぞれ何種類で放射能量はどれぐらいか。

 

(2)制限容量
 九電は、使用済み核燃料貯蔵プールがいつ満杯になるかについて、「管理容量」という言葉でこれまで説明してきた。これは電事連でも使われ、九電が佐賀県議会などで説明する時にも使ってきた。しかし、2月5日の規制委審査会合への資料で、突然「制限容量」という言葉を持ち出した。
②3・4号機再稼働の際の設置変更許可申請書や、今回のリラッキング申請においても設計方針に、管理容量を守る設計とすることが明記されているが、管理容量を超えることは違反とならないのか。
③「制限容量」について、周辺自治体や住民への説明はしたのか。

 

(3)乾式貯蔵施設
④乾式貯蔵施設の「設計貯蔵期間」は何年か。キャスクの耐用年数は何年か。
⑤搬出先とする六ケ所再処理工場はいつ稼働するのか。玄海からいつ搬出するのか。
⑥六ケ所再処理工場が稼働しない場合、どこに搬出するのか。
⑦貯蔵期間終了後はどこに移送されるのか。六ケ所再処理工場の寿命は何年か。
⑧第二再処理工場はいつどこにできるのか、具体的に示されたい。
⑨キャスク壁の腐食・ひび割れの点検・監視はどのように行うのか。
⑩キャスク内部のバスケットや被覆管の健全性はどのように検査し、保証するのか。
⑪貯蔵建屋が地震で倒れたとき、除熱機能が働くことはどのように保証されるのか。
⑫キャスクに異常があった場合、修理はどこでどのように行うのか。

 

(4)リラッキング
⑬なぜ、未臨界対策としてボロンを添加するのか。
⑭福島第一原発では使用済み燃料プールはすべてリラッキングされたものだったが、その影響について技術的分析はなされたのか。
⑮審査と工事期間をどう想定しているか。

 

(5)貯蔵プール
⑯プールが満杯となっている時に使用済み核燃料やプールの修理が必要となった場合、どのぐらいのスペースが必要と考えているか。また、どのように作業するのか。

 

(6)使用済みMOX燃料
⑰4月1日から九電は第二再処理工場事業費を原価として電気料に転嫁し始めた。具体的な説明を求める。

 

 

プルサーマルと佐賀県の100年を考える会/玄海原発反対からつ事務所
原発を考える鳥栖の会/今を生きる会/原発知っちょる会/風ふくおかの会
戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/たんぽぽとりで
東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会/あしたの命を考える会
怒髪天を衝く会/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会

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◆報道


◆関連ブログ

2018年10月19日 九州電力本店交渉

http://saga-genkai.jimdo.com/2018/10/19/a/
2019年2月4日 乾式貯蔵・リラッキングに関する九電・知事・町長要請行動

http://saga-genkai.jimdo.com/2019/02/05/a/

2019年3月15日 知事回答

https://saga-genkai.jimdo.com/2019/03/17/a/