【政府交渉報告:乾式貯蔵後の行先は未定/使用済みMOXは熱が下がるまで300年】

6月21日、使用済み核燃料・乾式貯蔵・リラッキング問題の政府交渉でした。
青森、茨城、新潟、静岡、関西、愛媛、佐賀の原発立地地域と首都圏の市民が集まり、原子力委員会、経産省資源エネルギー庁、原子力規制庁を追及しました。

 

今回も回答は「それは事業者のすること」「想定していない」「決まっていない」「検討中」のオンパレードで、政府の無責任ぶりがあらためて明らかになりました。そして、「乾式貯蔵後の使用済燃料の行き先は決まっていないこと」がはっきりしました。


特に、使用済みMOX燃料は発熱量が高いた乾式貯蔵施設にも入れられませんが、国は「使用済ウラン燃料の15年後と同等の発熱量まで下がるには300年かかる」と言いました(私達はこれまで科学者の試算を基に「100年以上かかる」という指摘をしてきたところでした)。その間、ずっと原発サイトのプールで保管するのでしょうか?誰がどうやって安全に保管するのでしょうか?処理方法は「研究開発段階」とのこと。玄海3号機ではもう1回運転を終えると、使用済みMOX燃料が必ず出てくるのです!


そもそも、核燃料サイクルそのものが破綻している中で、国の政策は矛盾だらけです。「プルトニウムを減少させていく」という昨年7月の「原子力委員会決定」については、「減少させていくとは書いてあるが、国として数値的なものを定めることにはなっていない。量的に削減させるということではない」などと言い、具体的な計画をまったく示しませんでした。

 

行き場のない使用済み核燃料という"死の灰"問題の解決への一歩は。原発の稼働をただちに止めること。
原発延命のための乾式貯蔵建設・リラッキングに反対しましょう!

院内集会                        終了後 規制庁前アピール行動

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質問書
◆20190621使用済燃料-質問書.pdf
PDFファイル 316.0 KB

 

以下、原子力規制を監視する市民の会より、詳細報告です。

 

<政府交渉報告>原発の使用済み燃料問題・使用済みMOX冷却に300年以上!
http://kiseikanshi.main.jp/2019/06/23/143333/
6月21日の午後、参議院議員会館において、原発の使用済燃料問題をテーマとした院内集会、政府交渉、全国交流集会が持たれ、40名ほどが参加しました。集会、交渉には原発の使用済燃料のリラッキング、乾式貯蔵、中間貯蔵の問題を抱える佐賀、愛媛、関西、静岡、新潟と青森県むつ市から参加があり、文字通り、この問題での全国の交流の場ともなりました。茨城県東海村からの参加もありました。
政府交渉の相手方は、原子力規制庁の核燃料サイクル施設の審査部門、発電用原子炉の審査部門、技術基盤部から合わせて5名、資源エネルギー庁から2名、原子力委員会事務局から2名が対応しました。福島みずほ議員も参加され、リラッキングの安全上の問題について、改めて説明を受けたいとの発言がありました。

 

★使用済MOX燃料が使用済ウラン燃料と同等の発熱量となるのに「300年以上かかるのは事実」(エネ庁)
★第二再処理工場は「目途は立っていない」「研究開発で特性を把握しながら具体的に検討していく課題と認識している」(エネ庁)

 

交渉で、参加者が一番驚いたのが、プルトニウム燃料(MOX燃料)をプルサーマルで用いた後の使用済MOX燃料の発熱量が、使用済ウラン燃料と同等になるのに300年以上かかることをエネ庁が明言したときでした。こちらで示した資料は100年までしかなく、100年以上かかりますねと聞いた答えがこれでしたのでなおさらでした。ウラン燃料ですら、使用後15年経って発熱量が下がってからでないと、乾式貯蔵に回すことはできません。使用済MOX燃料は、300年以上経たないと再処理はおろか、運搬することもできないことになります。


使用済MOX燃料の再処理については、六ヶ所再処理工場では技術的にできず、第二再処理工場で行うことになっていますが、エネ庁は、「研究開発で特性を把握しながら具体的に検討していく課題と認識している」とし、目途はあるのかと問うと「目途は立っていない」と答えました。プルサーマルにより出てくる使用済MOX燃料は、原発サイトのプールで300年以上冷やし続けなければならないことになります。原発を抱える地元の住民にしてみればたまったものではありません。交渉の場でも、各地の住民から批判の声があがりました。

 

★中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の行き先は決まっていない

 

交渉では、六ヶ所再処理工場の稼働期間について、日本原燃が40年としていることをエネ庁に確認しました。中間貯蔵・乾式貯蔵の搬出時には六ヶ所再処理工場は操業が終っています。審査中のむつの中間貯蔵施設について、申請書では搬出先について、「契約者に返還する」としか書いていないことを規制庁に確認しました。第二再処理工場の目途はたたず、中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の行き場がないことが改めて確認されました。

 

★再処理量をプルサーマルで使う分だけに制限する計画の認可は経産大臣が下す(エネ庁)
★プルトニウム利用計画「電事連は六ヶ所再処理工場竣工までに示すと言っている」(エネ庁)
★毎年度出すよう求めている原子力委員会決定に反する

 

日本のプルトニウム大量保有について国際的な批判がある中で、原子力委員会は、昨年7月31日の決定文書において、「プルトニウム保有量を減少させる」とし、「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」としています。さらに「今後、電気事業者(等)…は、今後プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度公表していく」とあります。交渉の場で原子力委員会事務局は、この文書の要求事項を関係者に求めたとし、関係者は、エネ庁、文科省、電気事業者、原子力機構などが入るとしました。エネ庁は、「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」とある認可は、再処理等拠出金法に基づくもので、認可を行うのは経産大臣であると述べました。


プルトニウム利用計画については、今年3月にも示される予定になっていましたが、いまだに出ていません。エネ庁に確認すると、出ていないことを認めたうえで、「電事連は六ヶ所再処理工場竣工までに示すと言っている」と述べました。しかし、プルトニウム利用計画は、六ヶ所再処理の稼働がなくても出さなければならないし、原子力委員会決定に従うと、プルサーマルの具体的な計画がないと、再処理量が決められないはずです。その点、原子力委員会事務局に聞きましたが、「六ヶ所再処理工場の許可も下りていない状況なので計画が立てられない」と繰り返すだけでした。国として具体的な計画はもっておらず、事業者まかせになっていることが明らかになりました。

 

★資源エネ庁の広報誌「サイクル・アイ」のウソに抗議

 

資源エネルギーの広報誌にある核燃料サイクル図について、以前には、プルサーマル後の使用済MOX燃料が、高速増殖炉用の核燃料サイクルのための再処理工場に送られるようになっていたものが、最新のものでは、高速増殖炉用の核燃料サイクルそのものがなくなりました。高速増殖炉計画がとん挫したので、それ自体は当然のことなのですが、最新のものでは、使用済MOX燃料が、六ヶ所再処理工場に再び送られ、サイクルが回っているように描かれています。しかし、エネ庁もはっきり認めているように、六ヶ所再処理工場では、使用済MOX燃料の再処理ができません。これは明らかにウソです。エネ庁に対して抗議した上で撤回するように求めました。エネ庁は部署が違うのでと逃げるだけでした。

 

★乾式貯蔵のキャスクに異常があれば原発のプールで蓋を空けなければならない(審査ガイド)
★乾式貯蔵の審査ガイドは原発の廃止措置の前のものしかない(規制庁)
★原発が廃炉となりプールがなくなれば乾式貯蔵の安全性は担保されない状態に

 

乾式貯蔵の安全上の問題について規制庁に聞きました。乾式貯蔵の使用期限については、キャスクに対して規制要求をしており、50年や60年の期限があるが、貯蔵施設に対して使用期限の規制要求はしていないとのことでした。
乾式貯蔵の審査ガイドによると、キャスクの閉じ込め機能の異常が生じた場合は、原発の燃料プールで蓋を開け、水中で修復を行うことになっていますが、50年や60年も経てば原発は廃炉になっており、燃料プールもないはずです。これでどのように安全性を担保するのかと聞きましたが、規制庁は、いまある審査ガイドは、原発の廃止措置前のもの。原発の廃炉後にどうするのかについて、規制要求を定めたガイドはないと回答がありました。目先のことしか考えておらず、これでは乾式貯蔵の安全性は担保されません。

 

★玄海原発3号機のプール容量が説明もなしに増やされていた

 

玄海原発3号機のプールの容量について、これまでずっと九電は、「1炉心+1/3炉心」の空きを除いた管理容量で説明していました。ところが最近になって、「1炉心」の空きを除いただけの「制限容量」に説明もなしに変えていました。これについて、地元から国としての責任を明らかにするよう求めましたが答えませんでした。

 

★むつ中間貯蔵の航空機落下評価は確率評価だけ

 

近くに米軍・自衛隊基地がありF35戦闘機が墜落した場所からも近いむつ中間貯蔵施設について、航空機落下について審査で考慮しているのかを聞きました。今審査中で、航空機落下も項目に入っているとの返事でしたが、実際にやっているのは墜落の確率評価であり、実際に墜落を想定しているわけではないようです。


◆報道