【全住民に安定ヨウ素剤事前配布を!唐津市長要請】

全国各地のみなさんが安定ヨウ素剤事前配布を求める取り組みが続けられていることに学び、
11月29日、全域が玄海原発30キロ圏となる唐津市に対して、12万全市民に対して安定ヨウ素剤の事前配布を求める要請を行いました。
市民6人と議員1人が参加しました。

私たちはこれまで何度も事前配布を求めて要請を行ってきましたが、今回は--

・東海第二原発が立地する東海村に隣接する茨城県ひたちなか市が「薬局配布方式」で全市民への安定ヨウ素剤配布を行っていること、
・福島第一原発UPZ圏を含む福島県いわき市では「郵送方式」で全市民に配布していること、
・国が今年7月の指針改正で、「薬局方式」を認めたこと、
--などを踏まえて、

 

(1)市全域において、薬局方式や郵送方式等により事前配布を行うこと
(2)前回までと同様に、40歳以上も対象とすることを原則とすること
(3)「副作用の可能性は極めて低く、ちゅうしょすることなく服用を」と、周知徹底すること
(4)離島、学校・幼稚園・保育所、病院、福祉施設等へは最優先で事前配布を行うこと
を求めました。

 

市保健福祉部長は「文書で回答したい」とだけ述べて、要請書を受け取りました。
今回、会議室も用意されず、立ったまま短時間でしたので、文書回答と対話のできる場をの設定を求めました。

 

薬局方式について「UPZではまだ何もしていないが、PAZでは検討している」と事前に聞いていたので、進捗状況を聞いてみたところ
「佐賀県と玄海町で協議を進める方向だ。具体的にまだだが、その方向で協議をしましょうという話になっている」と回答。
協議はまだ始まっていないことが分かりました。

 

国が指針に書いている地域の医師会や薬剤師会との協議は進んでいるのかを聞いてみたところ、
「まず、国が全国の薬剤師会と話をされているので、そこから今度は県が県の薬剤師会と話をして、そこから降りてくる形になる。いきなり市と唐津東松浦医師会ということではない。(今年度中には進むのか?)そこまではまだ。」
と、どこまでも「国」の指示待ちの姿勢でした。

 

原発事故が起きれば、住民は一方的に放射線被ばくという犠牲を受けることになります。
原発を容認し住民に押し付けてきた国や自治体は、最低限の責務として、安定ヨウ素剤を全住民に配布すべきです。
「住民からの希望を待って」という「待ち」の姿勢ではなく、市自らが積極的に取り組むべきだと強く訴えました。

新聞社3社が取材に来たので、要請終了後、記者室にて国の指針改定や各地の動き、住民側の動きなどを説明しました。


要請書
原発事故時の放射線被ばくから住民を守るのは自治体の責務
安定ヨウ素剤の全住民への事前配布を求めます

2019年11月29日

唐津市長 峰 達郎 様

玄海原発反対からつ事務所
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会

 

 九州電力は現在、玄海原発3・4号機を稼働させている。行き場のない使用済み核燃料という"死の灰"も増やし続けている。原発はいつ事故が起きるか分からず、私たちは常に不安と恐怖の中にいる。

 

 原発事故時には多くの放射性物質が放出されるが、放射性ヨウ素については事前に安定ヨウ素剤を服用することで甲状腺の内部被ばくを予防することができる。
 今年7月に改正された原子力規制委員会「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」では、「放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる」として、タイミングが重要だと記されている。
 しかし、事前配布の対象は原発5キロ圏(PAZ)住民としており、30キロ圏(UPZ)については希望者のみとなっている。UPZ圏の避難基準は放射線実測値で500マイクロシーベルト/時で即時避難、20マイクロシーベルト/時で1週間以内の避難となっており(この基準自体が容認できるものではない)、高線量の中、避難途中に配布場所でヨウ素剤を受け取ることになる。これでは、被ばく前の服用は困難だ。

 

 佐賀県のUPZ圏人口約17万5千人のうち、2017年度から始まった希望者へのヨウ素剤配布は18年度末までに262世帯651人、人口比でわずか0.3%にすぎない。今年度の申請は48世帯133人(唐津市36世帯100人、伊万里市12世帯33人、玄海町0人)だったという。
 私たちは離島をはじめ各地で原発の危険性についてのチラシを配布し、話をしてきたが、安定ヨウ素剤とは何か、なぜ飲まなければいけないのか、どこで配布しているのか、ほとんどの住民が知らない。
 しかし、原発事故が起きれば、住民は一方的に放射線被ばくという犠牲を受けることになる。原発を容認し住民に押し付けてきた国や自治体は、最低限の備えとして、安定ヨウ素剤を全住民に配布すべきである。

 

 東海第二原発が立地する東海村に隣接する茨城県ひたちなか市(一部がPAZ圏、全域がUPZ圏)は、これまで「薬局配布方式」で全市民への安定ヨウ素剤配布を行ってきた。国は上記改正指針において、この「薬局方式」を認めた。
 また、福島第一原発UPZ圏を含む福島県いわき市では「郵送方式」で全市民に配布している。
 原発50キロ圏にありながら、住民への事前配布を実現した兵庫県篠山市は「憲法で保障された人格権を守るために原発事故に備えています」と原子力防災ハンドブックに明記している。安定ヨウ素剤の事前配布は憲法で保障された住民の権利である。

 

 全域が玄海原発30キロ圏となる唐津市が、先進事例に学び、12万全市民に対して、「住民からの希望を待って」という「待ち」の姿勢ではなく、市自らが積極的に安定ヨウ素剤を事前配布するよう求める。住民の命を守ることが自治体の最大の責務である。
 以下の要請と質問に対して、回答を求める。

 

 

【要請事項】

(1)市全域において、薬局方式や郵送方式等により、事前配布を行うこと

①ひたちなか市の薬局配布方式
 ひたちなか市は「緊急時に,安定ヨウ素剤を全ての市民に混乱なく配布することは,事実上不可能」だとして、全市民を対象に「市医師会やひたちなか薬剤師会と検討した結果,市独自の『薬局配布方式』で事前配布」している(市ホームページより)。これによって3歳以上では全住民の27.58%、3歳以下では53.2%が受け取った(1歳半健診時に配布)。
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◆ひたちなか市ホームページ
 本市は東海村に隣接し,一部の地域が東海第二原子力発電所のPAZ圏に,全域がUPZ圏に含まれる地域です。 本市としては,福島第一原発事故を見ても,万が一,原子力災害が発生した場合,事故の影響はPAZ圏だけにとどまる問題 ではないことは明白で,PAZ圏とその他の地区の間に線を引くことは意味のないものと考えています。
 また,避難においては想像を絶する困難が想定され,緊急時に的確に受けとることができず服用時期を逃してしまう恐れ や,放射性物質が外部放出された後,配布場所に向かうことによって被ばくするリスクも考えられ,事故発生後の避難等を要する緊急時に,安定ヨウ素剤を全ての市民に混乱なく配布することは,事実上不可能だと考えています。
 本市域は,PAZ圏と同様の予防的防護措置を実施する可能性の高い地域であり,事故発生時に即座に服用できるよう,全市民を対象として安定ヨウ素剤を事前配布する必要があると考えています。
 また,国の指針に基づく説明会と配布会を開催しての事前配布は,市民の手間や会場の問題等から現実的に困難であると考え,全ての市民を対象としたより効果的で合理的な配布方法について,関係団体であるひたちなか市医師会やひたちなか薬 剤師会と検討した結果,市独自の「薬局配布方式」で事前配布をすることとしました。
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/soshiki/6/2/2/2071.html
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②国の指針改正
 国は7月の指針改正で、PAZ圏では説明会に参加できない住民は保健所・病院・薬局でも受け取れるようにしたが、UPZ圏でも「地方公共団体が必要と判断する場合」は、「前述のPAZ内の住民に事前配布する手順を採用して、行うことができる」としている。指針には「地域の医師会・薬剤師会による配布フローチャート」まで掲載している。
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◆原子力規制委員会「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」 (p.8)
PAZ
地方公共団体は、住民への説明会を定期的に開催することを前提とした上で、地域の実情を踏まえ、地域の医師会及び薬剤師会と具体的な配布方法等を協議の上、薬剤師会会員が所属する薬局等を指定し、その薬局等で、安定ヨウ素剤を配布することもできる。地方公共団体は、住民への説明会に参加できない住民に対して、地方公共団体が指定する薬局等に住民が出向き、薬剤師等による説明を受けた上で安定ヨウ素剤を受領できるよう対応する必要がある。
UPZ
PAZ 内と同様に予防的な即時避難を実施する可能性のある地域、避難の際に学校や公民館等の配布場所で安定ヨウ素剤を受け取ることが困難と想定される地域等においては、地方公共団体が安定ヨウ素剤の事前配布を必要と判断する場合は、前述の PAZ 内の住民に事前配布する手順を採用して、行うことができる。
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③いわき市の郵送方式 
 福島第一原発30キロ圏を含むいわき市は1999年、50キロ離れた東海村JCO事故をきっかけに、安定ヨウ素剤を備蓄した。
 2011年"3.11"では、緊急配布を行った。大混乱の中で配布準備に3日を要し、震災後の他業務に人員を取られ、配布時には市民が窓口に押し掛け、長時間屋外に並ぶ状況が続くなど、パニックの中での対応となり、配布率90%に達するまで2週間、99%に達するまで1カ月かかったという。
 2011年12月に有効期限が切れた。有事の際、パニックを避け、迅速に服用してもらうため、必要とする人に確実に届ける手法として郵送を採用し、40歳未満全員に郵送した。
 現在、人口34万人のうち40歳未満12万人全員と、2017年からは40歳以上の希望者にも郵送している。
「大切なのは、行政からアクションを起こして "受け取ってもらう" 方法で実施することであり、市民が取りに来るのを "待つ" 方法では、特に対象者が多い市町村では高い配布率の達成は見込めない」。
「いざという時に、手元にあってほしいということです。」(市の説明文要約と、市放射線健康管理センターへの聞き取りから)


(2)前回までと同様に、40歳以上も対象とすることを原則とすること

 今年度の配布申請書には「原則40歳未満が対象です」と記載された。但し書きで「40歳以上であっても、同様の理由により事前配布を希望する方には配布します」となっているものの、40歳以上も原則として事前配布対象とすべきである。
 規制委は指針改正のパブコメ案で「40 歳以上は服用する必要はない」 としていたが、市民からの意見等により、その考えは否定され、「40歳以上は服用する必要性は低い」に修正された経緯がある。

 パブコメ意見としては、以下のようなものがあった。
・チェルノブイリ原発事故被ばく者の調査:被ばく時 40 歳以上でリスク上昇が明らか。
・原爆被爆者の調査:被ばく時 40 歳以上でリスクが上昇。
・WHOガイドライン 2017:40 歳以上の者は服用する必要はない、とは書いてない。


(3)「副作用の可能性は極めて低く、ちゅうしょすることなく服用を」と、周知徹底すること

 改定指針は、以下の点で住民への周知徹底を求めている。広報誌やホームページに分かりやすく掲載し、また、マスコミ各社に対して積極的な報道を要望すること。
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「安定ヨウ素剤の服用効果を十分に得るためには、服用のタイミングが重要であり、平時から住民に適切な服用のタイミングについて周知する必要がある」(p.3)
「安定ヨウ素剤の服用で副作用が生じる可能性は極めて低く、服用指示が出た際に、服用を優先すべき対象者である妊婦、授乳婦、乳幼児を含む未成年者の保護者等が服用をちゅうちょすることがないよう、安定ヨウ素剤を服用することによる副作用のリスクよりも、服用しないことによる甲状腺の内部被ばくのリスクの方が大きいことについて、平時からの周知が必要である。」(p.5)
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(4)離島、学校・幼稚園・保育所、病院、福祉施設等へは最優先で事前配布を行うこと

 唐津市には7つの離島があるが、いずれも5キロ圏外ということで、安定ヨウ素剤は事前配布されておらず、診療所等に備蓄されているだけである。医師が常駐していない島もある。
 2017年3月31日、国は市民との交渉の場で「離島や避難困難地域では、自治体が必要性と判断すれば事前配布できる」と回答、これを受けて私たちは同4月7日、市長に対して離島などでの事前配布を求める要請を行った。市長からの回答(11月1日付)は、「要望を受けて、離島の区長と協議し、まずはヨウ素剤の説明のお知らせを島民にしたところだ。その後、事前配布の希望はいただいていない」とのことだった。
 原発事故からの避難に際して最も困難な状況を強いられる離島住民や要援護者、放射線への感受性の高い子ども達への事前配布は絶対必要である。

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20191129唐津市長安定ヨウ素剤要請●.pdf
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