“私たちは「被ばくしたくない」 すべての生きものを「被ばくさせたくない」
屋内退避では内部被ばくを防げない
原発事故は被ばくも新型コロナウイルス感染も覚悟の避難になる!”
11月7日の玄海原発避難訓練を前に、本日10月12日、原発避難時における新型コロナ感染症対策、屋内退避時の内部被ばくなど原発避難計画の問題について、佐賀県知事に対して要請質問書を提出しました。市議3人を含め、12人が集まりました。
「3密」を避けなければならないコロナ感染症対策と、放射能から逃げるために「密」を強いられる原発避難計画は相反しており、原発事故時には被ばくもコロナ感染も覚悟の避難となります。
対策はどうなっているかを質すと、県の担当係長は「訓練ではコロナ対策を盛り込んでいるが、避難計画全体では細かいことまで決まっていない。これから反映させていく」と回答。
私達は「原発は今も動いているのだから、対策は今決まっていなければいけない。そうでないなら、運転停止を求めるべきだ」と求めました。
また、今年3月に内閣府が公表したレポートの中で「屋内退避した時に、陽圧化した建物では99%被ばくを防げる」が、「木造家屋の自然換気の下では3割しか防げない」つまり「7割は内部被ばくする」と国が認めていることについて、県としての受け止めを質しました。
国・県はこれまで「屋内退避は安全への第一歩」と強調、県が全県民に配布した「原子力防災のてびき」にも「木造家屋では屋内退避することで、内部被ばくを1/4に減らすことができる」と記述されています。これらと大き矛盾する内容だからです。
担当副課長は、しばらく無言で何も答えられずにいました。
私達は待ちました。
やっとのことで、「国から照会があった」ということだけが分かりました。しかし、県としては内容の検討をまったく行っていないようでした。
原発避難時の最大の問題、「被ばく」をどう避けるかについて、危機意識を持たず、県民からの質問に何も答えられない県の姿勢にあきれ返りました。
国からどんな指示がきたのか、県として何を議論し、国に何かものを言ったのか、市町に対して情報を知らせたのかなどの事実確認と、
住民が被ばくしないような避難計画ができないのなら原発の運転停止を九電に要求するよう求めました。
その他にSPEEDIの活用や住民への説明と同意など、避難計画・訓練に関する質問などもあわせて計30問の質問をし、避難訓練前の回答を求めました。
報道7社が取材に来てくれ、屋内退避問題については初耳のようで、ある記者は「避難計画の根底を覆す問題ですね」とびっくりしていました。
県議会議員全員にも要請質問書を配布しました。
「屋内退避では内部被ばくを避けられない」。
全国のみなさんと連携して、引き続き玄海でも問題にしていきたいと思います。
★11月7日(土)玄海原発避難訓練8:00~
各地の訓練の見学・監視行動をともに行いましょう!
◆参照:原子力規制を監視する市民の会「屋内退避では内部被ばくは防げない!」
要請・質問書
私たちは「被ばくしたくない」 すべての生きものを「被ばくさせたくない」
屋内退避では内部被ばくを防げない
原発事故は被ばくも新型コロナウイルス感染も覚悟の避難になる
2020年10月12日
佐賀県知事 山口祥義 様
あしたの命を考える会/今を生きる会/風ふくおかの会/玄海原発反対からつ事務所
原発知っちょる会/原発を考える鳥栖の会/さよなら玄海原発の会・久留米
戦争と原発のない社会をめざす福岡市民の会/脱原発電力労働者九州連絡会議/たんぽぽとりで
怒髪天を衝く会/東区から玄海原発の廃炉を考える会/福岡で福島を考える会
プルサーマルと佐賀県の100年を考える会/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、今年6月に内閣府から原子力災害が発生した場合のコロナ感染症対策を踏まえた防護措置の基本的な考え方が出されました。指定避難所で屋内退避を行う場合において、また移動時の車両の中で、コロナウイルス感染対策として人と人との距離の確保、感染者とそれ以外の人との分離、マスク着用、手洗いなど手指衛生等の実施が要求されています。
今、日本全国で想定できない災害が多く発生しています。近いところでは9月8日の台風10号。九州の約42%の自治体で収容人数を超えた避難所があり(内閣府調査)、足を運んだ避難所からの移動を余儀なくされるなどの事態が起こるべくして発生し、原発災害とコロナ禍が同時に発生した時の恐ろしさが露わになりました。
政府はこれまで「屋内退避が安全への第一歩」として、避難よりも屋内退避に力をいれ、被ばくを防げると宣伝してきました。
しかし、今年3月発行の内閣府「原子力災害発生時の防護措置―放射線防護対策が講じられた施設等への屋内退避―について[暫定版]」をよく読むと、「陽圧化された建物内」ではない屋内退避は内部被ばくの3割程度しか低減しない、言い換えれば約7割は被ばくすると書かれています(p.15)。屋内退避では被ばくは防げない、と内閣府は認めたのです。屋内退避で被ばくし、逃げる時も高線量の中を逃げなければなりません。事故があれば被ばくからは逃れることは困難だと住民は我慢しなければいけないのでしょうか?
以下の要請と質問に対して、今年の原子力防災・避難訓練実施前の回答を求めます。
【要請事項】
新型コロナウイルス感染症対策と原発事故時の避難は両立しません。屋内退避では内部被ばくを防げません。
(1)県民の命、健康を守るため新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている間は、玄海原発3号機及び4号機の運転を止めるべきと表明し、九州電力に要求すること。
(2)原子力防災避難計画を住民が被ばくしない計画に抜本的に改訂すること。それらが現実的に機能するまで九州電力に玄海原発3号機及び4号機を止める要求をすること。
【質問事項】
(1)屋内退避について
内閣府「屋内退避について[暫定版]」では、「屋内退避は原子力災害時に比較的容易に実施出来る有効な防護措置の一つです。・・・避難のための移動・搬送により健康リスクが高まるおそれのある住民は、避難よりも放射線防護措置を講じた建屋へ屋内退避することが優先される場合があります。屋内退避は全面緊急事態発生時の防護措置の一つです。・・・内部被ばく線量については、陽圧化等の放射線防護対策が講じられた建屋に屋内退避する場合には、屋外滞在時に比べて99%低減することが分かりました。」しかし、「陽圧化しない場合(自然換気)では3割強の低減にとどまっています」とあります。
「陽圧化」は、フィルタを設置した吸入装置を使って建屋の内部に空気を送り込み、建屋内の圧力を高めて放射性物質の侵入を低減するものです。1施設で2億円かかるといわれています。
①「陽圧化でない住居に屋内退避すると、"屋外滞在時の約7割を内部被ばくする"」いう前提を知った上で、県の避難計画を作ったのか。
②県発行「原子力防災のてびき」では、「木造家屋では内部被ばくを1/4程度に抑えることができる」とあるが、具体的な根拠を示されたい。
③陽圧化した鉄筋コンクリート造建屋は佐賀県内のどこにあり、何か所あるのか。
④原子力規制委員会が策定している原子力災害対策指針(19年7月3日)では、屋内退避について「UPZにおいては、段階的な避難やOILに基づく防護措置を実施するまでは屋内退避を原則実施しなければならない」と明記されている。指示があるまで逃げていけないとなるなら、19万人の30キロ圏内の県民すべてが陽圧化した建屋に屋内退避できるのか。
⑤風向きによって放射能はどこにでも飛んでいく。OILにもとづく段階的な避難はできるのか。
(2)コロナ禍での避難所について
⑥「密集を避け、極力分散して退避すること」とされているが、一時集合場所に指定されている小さな公民館などでは、具体的にどのように密集を避けるのか。
⑦指定避難所の許容人数超過や集合場所が変更になったなど、住民に対して、いつどのように周知するのか。
⑧「放射線防護能力を低下させるような行動はとるな」ということは換気するな、ということである。感染症対策に反するのではないか。
⑨避難所で屋内退避する場合も、換気は行わないのか。
⑩「感染者とそれ以外の者とは隔離するため、別施設や個室等に避難、また、密集を避ける」とされているが、指定避難所の新たな施設や個室等はどう手配するのか。
⑪別施設の避難所は確保と、受け入れ市町村との調整はできているのか。
⑫スクリーニング会場にて分散して検査する場所や人員はどう確保するのか。
⑬マスクや消毒液等の備品はどのくらいの人数分、期間分備蓄しているのか。それらの管理体制は把握しているか。
(3)コロナ禍での避難移動手段について、「バス等で避難する時は密集を避け、極力分散して避難」とされている。
⑭分散避難できるバスや福祉車両は何台追加手配するのか。
⑮運転要員と、車両の要請事業所を具体的に示されたい。
⑯移動車両内の換気はどのように行うのか。
(4)コロナウイルス感染者(軽症者・重症者)に対して
⑰軽症感染者が避難先の体育館等で「個室」に避難した場合に、これらに対応する体制は確保できるのか。
⑱避難所で感染者が出た場合、被害が拡大しないような体制は確保できているか。
⑲人工呼吸器やECMOを装着した重症者が避難できるのか。
⑳重症者の避難手段はシミュレーションしているのか。
㉑避難先としての「感染症指定医療機関」とはどこを予定しているのか。そことの合意はできているか。
(5)コロナ禍での住民への安定ヨウ素剤の配布について
㉒一時集合場所での配布か。
㉓一時集合場所では検温等も実施されることになり、一層時間と手間がかかる。それを避けるためにも、安定ヨウ素剤は事前配布するべきではないか。
(6)原子力防災・避難訓練について
㉔国は原子力災害時にSPEEDIを使わないこととしたが、全国知事会からの要望に対して2016年3月に「自治体の責任において活用することを認める」と回答した。今年6月には、京都府がSPEEDIを使った高浜・大飯原発の放射性物質拡散予測を行っている。玄海原発においても避難時に被ばくの可能性を少しでも低減するため、福島原発事故並みの放射能放出率でSPEEDIの活用をすべきではないか。
㉕SPEEDIを災害時の運用訓練やその評価のために、訓練時にも活用すべきではないか。
㉖スクリーニング場所で放射線量を測定する時、被測定者に対して被ばく量の確認できる証明書は発行するのか。発行しない場合は、なぜ発行できないか理由を提示されたい。
㉗避難時のすべての業務は市町の職員のみが担う事になっている。コロナ禍での避難先の住民の対応や施設の手配など人数は足りるのか。
㉘訓練時の避難所での講話・説明などの記録公開はしないのか。
㉙避難計画に対して住民合意はいつどういう形で得られているのか。住民、区長、公民館長、医師会、看護協会、漁協、農協、バス・タクシー協会、学校・幼稚園・保育園・福祉施設など避難元・先の施設長などからの同意は得られているのか。
(7)玄海町のみらい学園のPAZ認定について
㉚玄海町のみらい学園は、5キロを僅かに過ぎているだけでPAZから外されている。原子力避難計画は、住民の命と健康を守るためのものであり、距離を正確に守ることより子どもたちを被ばくさせないよう、一刻も早く逃げてもらうことが最優先ある。みらい学園をPAZに入れるべきではないか。