【屋内退避/コロナ禍での原発避難 10/23唐津市長要請行動報告】

屋内退避→大多数の住民は内部被ばくを避けられない

コロナ対策→避難所はまだ確保できていない

原発事故は被ばくも新型コロナウイルス感染も覚悟の避難になる!

 

10月23日、原発避難時における新型コロナ感染症対策、屋内退避時の内部被ばくなど原発避難計画の問題について、玄海原発30キロ圏に12万市民を抱える唐津市長に対して要請質問書を提出しました。市民11人が集まりました。

 

12日に佐賀県知事宛に提出した要請と同じ趣旨です。

 https://saga-genkai.jimdo.com/2020/10/12/a/

 

内閣府がレポートで「木造家屋の自然換気の下では3割しか内部被ばくを防げない」と記した点について、対応した危機管理防災課長は「レポートは承知している。佐賀県からメールで送られてきたが、よく検討していない。確認したい」と回答。

陽圧化された施設は現在市内で16カ所だけということなので、「大多数の市民は屋内退避しても内部被ばくしてしまいますよね?」と質すと、「そうですね」で認めざるをえませんでした。

 

コロナ対策では、密を避けるために避難所の居住スペースを2倍の4平米確保しなければならないということですが、新たに確保できたかを質すと、「5キロ圏について調査中であり、今後検討していく」と。つまり、まだ確保できていないということでした。30キロ圏は何も着手していないということでした。

私達は「コロナ対策で窓を開けろと言い、放射能対策で窓を閉めろという。矛盾している。無理なら無理だと、原発を止めてくださいと、現場から声をあげてほしい。市長には守るべき住民がいるのだから」と求めました。

唐津市担当者は1時間15分、答えられるものについては率直に答えていただきました。

11月7日の避難訓練前までの回答を求め、「今後も市民と一緒に検討する場をぜひつくりましょう」とこちらから呼びかけて、要請行動を終えました。


  要請・質問書  

私たちは「被ばくしたくない」 すべての生きものを「被ばくさせたくない」

屋内退避では内部被ばくを防げない

原発事故は被ばくも新型コロナウイルス感染も覚悟の避難になる

2020年10月23日

唐津市長 峰達郎 様

玄海原発反対からつ事務所

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会

 

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、今年6月に内閣府から原子力災害が発生した場合のコロナ感染症対策を踏まえた防護措置の基本的な考え方が出されました。指定避難所で屋内退避を行う場合において、また移動時の車両の中で、コロナウイルス感染対策として人と人との距離の確保、感染者とそれ以外の人との分離、マスク着用、手洗いなど手指衛生等の実施が要求されています。

 

 今、日本全国で想定できない災害が多く発生しています。近いところでは9月8日の台風10号。九州の約42%の自治体で収容人数を超えた避難所があり(内閣府調査)、足を運んだ避難所からの移動を余儀なくされるなどの事態が起こるべくして発生し、原発災害とコロナ禍が同時に発生した時の恐ろしさが露わになりました。

 

 政府はこれまで「屋内退避が安全への第一歩」として、避難よりも屋内退避に力をいれ、被ばくを防げると宣伝してきました。

 しかし、今年3月発行の内閣府「原子力災害発生時の防護措置―放射線防護対策が講じられた施設等への屋内退避―について[暫定版]」をよく読むと、「陽圧化された建物内」ではない屋内退避は内部被ばくの3割程度しか低減しない、言い換えれば約7割は被ばくすると書かれています(p.15)。屋内退避では被ばくは防げない、と内閣府は認めたのです。屋内退避で被ばくし、逃げる時も高線量の中を逃げなければなりません。事故があれば被ばくからは逃れることは困難だと住民は我慢しなければいけないのでしょうか?

 

 以下の要請と質問に対して、今年の原子力防災・避難訓練実施前の回答を求めます。

 

【要請事項】

新型コロナウイルス感染症対策と原発事故時の避難は両立しません。屋内退避では内部被ばくを防げません。

(1)住民の命、健康を守るため新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている間は、玄海原発3号機及び4号機の運転を止めるべきと表明し、九州電力に要求すること。

(2)原子力防災避難計画を住民が被ばくしない計画に抜本的に改訂すること。それらが現実的に機能するまで九州電力に玄海原発3号機及び4号機を止める要求をすること。

 

【質問事項】

(1)屋内退避について

 内閣府「屋内退避について[暫定版]」では、「屋内退避は原子力災害時に比較的容易に実施出来る有効な防護措置の一つです。・・・避難のための移動・搬送により健康リスクが高まるおそれのある住民は、避難よりも放射線防護措置を講じた建屋へ屋内退避することが優先される場合があります。屋内退避は全面緊急事態発生時の防護措置の一つです。・・・内部被ばく線量については、陽圧化等の放射線防護対策が講じられた建屋に屋内退避する場合には、屋外滞在時に比べて99%低減することが分かりました。」しかし、「陽圧化しない場合(自然換気)では3割強の低減にとどまっています」とあります。

 「陽圧化」は、フィルタを設置した吸入装置を使って建屋の内部に空気を送り込み、建屋内の圧力を高めて放射性物質の侵入を低減するものです。1施設で2億円かかるといわれています。

 

①「陽圧化でない住居に屋内退避すると、"屋外滞在時の約7割を内部被ばくする"」いう前提を知った上で、市の避難計画を作ったのか。

②県発行「原子力防災のてびき」では、「木造家屋では内部被ばくを1/4程度に抑えることができる」とあるが、具体的な根拠を示されたい。

③陽圧化した鉄筋コンクリート造建屋は唐津市内のどこにあり、何か所あるのか。

④原子力規制委員会が策定している原子力災害対策指針(19年7月3日)では、屋内退避について「UPZにおいては、段階的な避難やOILに基づく防護措置を実施するまでは屋内退避を原則実施しなければならない」と明記されている。指示があるまで逃げていけないとなるなら、12万人の30キロ圏内の住民すべてが陽圧化した建屋に屋内退避できるのか。

⑤風向きによって放射能はどこにでも飛んでいく。OILにもとづく段階的な避難はできるのか。 

 

(2)コロナ禍での避難所について

⑥「密集を避け、極力分散して退避すること」とされているが、一時集合場所に指定されている小さな公民館などでは、具体的にどのように密集を避けるのか。

⑦指定避難所の許容人数超過や集合場所が変更になったなど、住民に対して、いつどのように周知するのか。

⑧「放射線防護能力を低下させるような行動はとるな」ということは換気するな、ということである。感染症対策に反するのではないか。

⑨避難所で屋内退避する場合も、換気は行わないのか。

⑩「感染者とそれ以外の者とは隔離するため、別施設や個室等に避難、また、密集を避ける」とされているが、指定避難所の新たな施設や個室等はどう手配するのか。

⑪別施設の避難所は確保と、受け入れ市町との調整はできているのか。

⑫スクリーニング会場にて分散して検査する場所や人員はどう確保するのか。

⑬マスクや消毒液等の備品はどのくらいの人数分、期間分備蓄しているのか。それらの管理体制は把握しているか。

 

(3)コロナ禍での避難移動手段について、「バス等で避難する時は密集を避け、極力分散して避難」とされている。

⑭分散避難できるバスや福祉車両は何台追加手配するのか。

⑮運転要員と、車両の要請事業所を具体的に示されたい。

⑯移動車両内の換気はどのように行うのか。

 

(4)コロナウイルス感染者(軽症者・重症者)に対して

⑰軽症感染者が避難先の体育館等で「個室」に避難した場合に、これらに対応する体制は確保できるのか。

⑱避難所で感染者が出た場合、被害が拡大しないような体制は確保できているか。

⑲人工呼吸器やECMOを装着した重症者が避難できるのか。

⑳重症者の避難手段はシミュレーションしているのか。

㉑避難先としての「感染症指定医療機関」とはどこを予定しているのか。そことの合意はできているか。

 

(5)コロナ禍での住民への安定ヨウ素剤の配布について

㉒一時集合場所での配布か。

㉓一時集合場所では検温等も実施されることになり、一層時間と手間がかかる。それを避けるためにも、安定ヨウ素剤は事前配布するべきではないか。

 

(6)原子力防災・避難訓練について

㉔国は原子力災害時にSPEEDIを使わないこととしたが、全国知事会からの要望に対して2016年3月に「自治体の責任において活用することを認める」と回答した。今年6月には、京都府がSPEEDIを使った高浜・大飯原発の放射性物質拡散予測を行っている。玄海原発においても避難時に被ばくの可能性を少しでも低減するため、福島原発事故並みの放射能放出率でSPEEDIの活用をすべきではないか。

㉕SPEEDIを災害時の運用訓練やその評価のために、訓練時にも活用すべきではないか。

㉖スクリーニング場所で放射線量を測定する時、被測定者に対して被ばく量の確認できる証明書は発行するのか。発行しない場合は、なぜ発行できないか理由を提示されたい。

㉗避難時のすべての業務は市町の職員のみが担う事になっている。コロナ禍での避難先の住民の対応や施設の手配など人数は足りるのか。

㉘訓練時の避難所での講話・説明などの記録公開はしないのか。

㉙避難計画に対して住民合意はいつどういう形で得られているのか。住民、区長、公民館長、医師会、看護協会、漁協、農協、バス・タクシー協会、学校・幼稚園・保育園・福祉施設など避難元・先の施設長などからの同意は得られているのか。

㉚七山村経由の避難者の数は多いと聞いているが、どの地区で何人か。住民が糸島市方面に避難する可能性があるが、糸島市内で渋滞発生可能性がある時は唐津市民を通さないと聞いた。それは本当か。どう対処するのか。

 

(7)離島7島のPAZ認定について

㉛馬渡島、向島、加唐島、松島、小川島、神集島、高島の7離島はPAZから外されている。原子力避難計画は住民の命と健康を守るためのものであり、距離を正確に守ることより住民を被ばくさせないよう、一刻も早く逃げてもらうことが最優先ある。7離島をPAZに入れるべきではないか。

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◆回答書(11月7日付)

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◆報道