【2/26玄海避難訓練を前に知事に質問書】

佐賀県・福岡県では2月26日に玄海原発原子力防災・避難訓練が予定されています。

昨年までも対象地域住民の1%未満の人しか参加しない小規模な訓練でしたが、今年はコロナ禍のため住民は避難移動しないなど極めて小規模なものとなりました。

訓練を前に、2月15日、県に対して、私達住民の目線での原子力災害避難計画に対する不安と質問を30項目列挙した要請・質問書を提出しました。

避難計画への根本的な疑問、避難訓練で検証すべきこと、蚊帳の外とされた30キロ圏外での避難計画・避難訓練が必要なことなどを質しました。

最悪の事態を想定し実効性のある避難訓練をすべきであり、それを踏まえた私達住民を被ばくから守る避難計画が確立できないなら、原発の稼働を即止めるべきだと求めました。

佐賀県が毎年全戸配布している「原子力防災のてびき」の中に「訓練が大切――災害時には、普段やれること、訓練でやったことのあることしかできません」という記述があったのですが、昨年度版から「訓練が大切」の項目が丸ごと削除されました。なぜでしょうか?<質問(1)⑥>。

実質的な訓練もできないようなコロナ禍です。

 

不要不急の原発の稼働こそ止めるべきです。


来たる2月26日の佐賀県原子力防災訓練 及び

原子力災害避難計画 に対する要請質問書

2022年2月15日

佐賀県知事 山口祥義 様

玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会

玄海原発反対からつ事務所

原発を考える鳥栖の会

 

 毎年玄海原発の事故を想定し、地域住民を含めた「原子力防災訓練(以下、避難訓練と記す)」が行われているが、九電が起こす原発事故のために逃げなければいけない理不尽な訓練である。2017年4月24日山口知事は再稼働同意の際、「何よりも大切なのは県民の安全である」「玄海原子力発電所が稼働している、していないに関わらず、現状においても使用済核燃料が現に存在しており、原子力災害対策は常に極めて重要である」と発言している。しかし、私たちはこれまで避難訓練に参加してきたが、私達のための避難訓練と感じた事はない。最悪を無視した実効性に欠ける避難訓練だ。

 原子力災害対策指針の前文によると、「住民の視点に立った防災計画を策定すること」となっている。最悪の事態を想定し実効性のある避難訓練をすべきである。私達住民を守るための原子力災害避難計画が確立できるまで、原発は動かすべきではない。稼働原発は即止めるべきである。

 以下、私達住民の目線での原子力災害避難計画に対する不安と質問に具体的な回答を求める。

 

1)原子力災害避難計画に対する質問

① 最悪のシミュレーション

 2021年4月26日、唐津市と県内の受け入れ先12市町でつくる「唐津市原子力災害時広域避難対策協議会」の会合が開かれた。避難先市町からは「最大の避難者数を出してほしい」と意見が出され、唐津市担当者は「全市民が避難する最大リスクに加え、具体的に事故の事例を考え、避難計画の議論を進めたい。そのためには事故進展スピードや事故パターンを出す必要があり、国に示してもらいたい」と述べた。避難元自治体の抱える不安の実態が明らかになった。

 佐賀県はこのような問題を避難元自治体と協議し、国に対して最悪のシミュレーションを出すようにと要請はしてきたのか。したのであればその回答はどうだったのか回答を求める。

 また、これまでの私たちの質問に佐賀県からの回答は、「国が前面に立って」と繰り返すが、私達住民の命とくらしを守る立場の佐賀県としての「最悪のシミュレーション」についての考えと行動を具体的に示されたい。

 

② 感染症対策を踏まえた避難所スペース

 感染症蔓延下で緊急事態になった場合、感染者とそれ以外の者を隔離するための新たな施設など2倍近い避難所スペースの確保が必要とされているが、足りているのか。足りているのであればその根拠となる資料の開示を求める。また、その避難所の広さは支援物資等の置場を確保されたものなのか。

 

③避難退域時検査場所の線量が高く移転せざるを得ない場合の移転先の事前公表

 2021年12月20日の政府交渉での政府の回答は「避難退域時検査場所の線量が高い場合は、線量の低い地域で検査等を実施する」とのことだった。

 緊急避難で混乱している中、車の渋滞等が起こりうる事も考え、避難退域時検査場所の移転先候補地を事前に住民にわかりやすく公表をするべきではないか。

 事前公表の際、HPだけでなく直接住民に説明の場を校区単位のような小地域で設けるべきと思うが、開催の用意はあるのか。

 

④検査場所に寄れなかった人への対処

 行った先で検査場所の変更が告げられて次の所に行くのをためらう人や、一刻も早く避難したい人等、検査場所に寄らない住民がいた場合、検査済の証明書類を持たずに避難した人たちは、避難所に入れないなどの不当な扱いを受けることはないのか。この具体的な法律や基準を明らかにすること。また、この問題で福島原発事故時の教訓はどう生かされているのか。

 

⑤安定ヨウ素剤の事前配布

 甲状腺に対してのみだが、放射性ヨウ素から身を守るすべがあるのは安定ヨウ素剤を事前に飲むことである。規制委員会の「安定ヨウ素剤の配布・服用に当たって」*1によれば、「放射性ヨウ素にばく露される 24時間前からばく露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる」とある。住民としては、ばく露後2時間までに服用する事は必須となる。

a. 安定ヨウ素剤未受領者への配布は、PAZ、UPZ地域及び、UPZ以外でも放射線量が高い場合、いずれも原発事故発生の知らせを聞いてからの配布となるが、自治体によりどのように行われるのか?

b. 玄海町PAZ内の配布状況は、40歳未満の内の26.7%、325人のみ、UPZに至っては、2021年までに17人しか事前配布されていない。この現状で2時間以内に配布を終了させる方法はどのような方法か。

c. 最悪の事態を想定すれば、ばく露され最低2時間後までに服用するには「事前配布」が必須であるのは明らかだ。UPZ圏内でも、規制委員会は郵送配布することは否定していないのに、なぜすべてのUPZ内住民に事前郵送しないのか。

d.希望者の申請を待っている現状のようだが、これら低配布率は放射性物質及び放射線の特性(有害性)に関する正しい情報*2を住民に伝えていない結果である。規制委員会の原子力災害対策指針は「平時からの住民等への情報提供」*3を謳っているが、放射性物質がどのように身体に有害な作用をするのか、何故服用するのかの理由等は住民には正しく届いていない。安定ヨウ素剤配布に関する地域説明会を小学校区ごとに行う計画はあるのか。ないのなら実施を求める。

 

⑥「原子力防災のてびき」2018年度版には、「13 常に『もしも』と考えて」の項目に、「訓練が大切――災害時には、普段やれること、訓練でやったことのあることしかできません」の記載があった(p.16)。しかし、「てびき」2020年度版から「訓練が大切」の項目が削除された。なぜ削除したのか。

 

2)佐賀県原子力防災訓練(2022/2/26)についての要請・質問

 以下、原発と隣り合わせの暮らしを強いられている立地県民として避難訓練で是非検証してほしい点を記載した。今回の避難訓練で是非実行し、結果を公表することを求める。今回の訓練で検証できなかったことについては、後日対策を公表することを求める。

 

①放射能が放出され、私達住民が避難行動を取らざるを得ない時、風向き及び放射線放出量の情報が必須である。これらの情報を私達住民はどのようにタイムリーに知ることが出来るのか、自治体の広報手順・タイムテーブル、私達住民のアクセス場所を避難訓練で明確に示すこと。

②内閣府はSPEEDI(放射性物質拡散予測システム)のシミュレーション結果を避難訓練で利用し、避難計画に反映させることを認めている。佐賀県の避難訓練と避難計画においてSPEEDIを活用すること

③避難指示が出た時の私達住民への告知手段(テレビ、ラジオ、携帯、防災無線、その他)をすべて訓練で実施する事。

④UPZ内の行政機関や医療機関が退避する場合、そのことをどのように私達住民に周知させるのか、具体的に告知方法の訓練をすること。

⑤在宅の要支援者について、何日間の医療・介護スタッフ等の支援体制が可能なのかを訓練で明らかにすること。

⑥病院や福祉施設の避難において福祉車両や救急車両の台数が足りていない場合、県、国の援助がどのように確保できるのか、訓練で明らかにすること。

⑦原発事故が起こった時、UPZ内の子どもたちが通う保育園、幼稚園、学校への保護者の迎えの具体的な手順はどうなっているのか。迎えに行けない保護者との話し合いはできているのか。すべての施設で訓練はできているのか。

⑧佐賀県内各市町において、自然災害時の避難者受け入れ人数は、受け入れ自治体の全住民の何%程度となっているか。原発事故時の他の市町からの避難者受け入れ数は、97%にもなる太良町はじめすべての県内市町において到底受入可能な数ではないと考えられるが、どのような対応を考えているのか。

⑨佐賀県内の避難所は一人2㎡で計画されているが、全収容人数が入り、荷物も持ち込んだ形で2㎡がどのくらいの生活環境になるかの検証を訓練の中に入れること。

⑩ペットの避難方法、避難所での保護運営管理の方法を訓練すること。

⑪避難退域時検査は、実際の事故時には人は「代表者」のみ検査することとなっている。しかし、事故後に何の疾病にかかるか、放射線証明書は自分の履歴を証明するものとして必須である。権利として私達住民全員を検査するのが自治体の仕事である。避難訓練においても、すべての地区の検査場所と避難所で、一人一人に実施し、放射線測定結果を配布する訓練を行うこと。

⑫避難退域時検査場所での車の除染は、訓練に参加した全車両に対して行い、問題点をあぶり出せる訓練を行うこと。

⑬避難退域時検査場所の除染で出た放射性物質の管理方法を訓練すること。

⑭避難者の放射線測定で高線量が出た時の対応の手順、機材の準備、記録の残し方、記録の管理方法の確認を訓練に入れること。

⑮PAZ,UPZ内の安定ヨウ素剤の配布が完了していない私達住民に対して、どのように届けるのか、具体的に訓練をすること。

⑯離島では原発事故時に悪天候が続けば島外への避難は困難。高線量下で1人2㎡のシェルターや蛇腹式テントなどの密閉空間での暮らしを強いられる。こうした場所での数日間の訓練を行い、状況を確認すること。

⑰7離島が同時に避難することを想定した訓練を行い事故時の問題点をあぶりだすこと。

⑱3離島(加唐島、松島、向島)の飲料水は島内自給体制をとっており、過酷事故直後から放射能汚染が始まり飲料不可になる。また、離島でなくても、河川、浄水場、山林、地下水の放射能汚染が始まり、低線量内部被ばくの恐れがある。避難時の飲料水確保や長期滞在を強いられた時の飲料水確保はしているのか。こうした事態を想定した訓練を行うこと。

⑲訓練に参加した島民の率直な声を聞き、公表し、国や九電に伝えること。

⑳訓練に際して行う講話においては、福島原発事故の放射能被害の実態、避難者や被害者の声を正しく伝えること。見解が分かれるものについては、両論を伝えること。

㉑原発が存在し、事故は起こる事を否定できない現状では、私達住民の避難訓練参加は必須だが、過去の避難訓練において事前広報が私達住民へ届いていない。避難訓練は佐賀県民全員が知るところとなるような広報を行うこと。

 

3)30キロ圏外の住民の避難についての要請・質問

①県発行の「原子力防災のてびき」には、「UPZ外の住民も状況に応じて屋内退避、放射線が高くなればUPZの住民と同じように避難」(7P)と記されている。そうであればUPZ外の17市町の住民も避難訓練をすること。

②私達全県民に対する避難指示の告知訓練と、どこにどう逃げればいいのか場所を公表すること。

③UPZ内外を問わず、玄海原発で事故が起きれば避難当事者となり得る可能性があることや、自然災害の避難と違って「被ばくから逃げなければならない」ということが平時から私達全県民に周知徹底されていない。「てびき」を全世帯配布しただけでは周知徹底したということにはならない。自治体はそれぞれの家庭に情報をどのように届けるのか、具体的に示すこと。

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20220226知事避難訓練要請書●.pdf
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20220226知事避難訓練要請書参照●.pdf
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◆報道


<追記>

知事回答が3月17日付で届きました。

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20220317知事回答避難.pdf
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