【裁判長「九電は噛み合った主張を」~7/20玄海行政訴訟・全基差止控訴審報告】

 7月20日、玄海原発行政訴訟と全基差止裁判、福岡高裁(岩坪朗彦裁判長)101号法廷にて、14:30~、15:00~それぞれ2つの控訴審第4回口頭弁論が開かれました。

 今回は二つの法廷ともに、控訴人側が準備書面を提出、行訴では武村弁護士が(1)入倉・三宅式による地震動過小評価について、具体的なポイントであるグラフを例示として法廷のディスプレイに映し説明、(2)地震データの「ばらつき」を被控訴人は全く無視している点を丁寧に指摘し主張しました。また、第四準備書面の中で、「汚染水対策の不備と地下水流出問題」および「火山の巨大噴火問題に関する<(国民の)社会通念のあり方>」等について、争点が噛み合ってないことを裁判長も感じているのか、被控訴人・国と参加人・九州電力にしっかりとした反論を次回に要求しました。

  全基差止では、第二準備書面で避難計画の実効性欠如に関する主張を行い、石丸初美控訴人団長が、行政に対する住民アンケート調査の結果を基に避難計画の問題点について意見陳述を行いました。前回、「追加主張は予定していないが、控訴人の新たな主張を聴いて検討する」と回答した被控訴人・九電に対し、裁判長は「(避難計画について一般的なプレゼン程度なので)争点を噛み合わせるように、次の準備書面に必要と思うので、次回は、反論してください」と強く言い渡しました。被控訴人は、何も言わず了承せざるを得ないという態度でした。裁判長の指摘は、福島第一原発事故の教訓を踏まえれば当然のことですが、被控訴人の横着とも見える「暖簾に腕押し」態度を戒める訴訟指揮には少し期待ができそうな感じがあります。

 

 次回法廷への傍聴・注目をお願いいたします。

 

◆今後の口頭弁論

 2022年11月 9日(水)15:00~第5回全基差止

                     (この日は行政はありません)

 2023年 2月 8日(水)14:30~第5回行政弁論

             15:00~第6回全基弁論

 2023年 5月31日(水)14:30~第6回行政弁論

             15:00~第7回全基弁論


◆裁判書面(行政)

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20220714玄海行訴控訴人準2●.pdf
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◆裁判書面(全基)

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20220714玄海差止控訴人準4●.pdf
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20220720控訴審陳述書石丸初美.pdf
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陳述書

2022年7月20日

佐賀県佐賀市

石丸ハツミ

 

私は石丸ハツミと申します。佐賀で生まれ今も佐賀市に住む71歳の主婦です。今日は意見陳述の機会を頂きありがとうございます。

 

11年前、福島第一原発事故で突然避難を余儀なくされ、各地へ多くの人々が避難しました。私の住む佐賀県にもおられます。何の落ち度もない人々は、東京電力の原発事故のために突然家族や友と別れ、ふるさとを去ると言う辛い決断だったと思います。放射能からの避難です。住民には被ばくの科学的証明など不可能です。

原子力規制庁は「新基準に適合しただけ、安全とは言わない」と再稼働を許可し、事故が起きたときの原子力避難計画は自治体に押しつけています。理不尽な原発政策と福島原発事故をみて、安心できるくらしを守るために、これまで私たちにできる活動をしてきました。

 

仲間で「玄海の避難問題を考える連絡会」をつくり、アンケート調査を実施しました。避難は受入先があって初めて成り立つもの、玄海原発で事故が起きれば、避難元と共同作業となる避難受入自治体全てを対象としました(4/8~6/3で実施)。3県39市町のうち37市町(95%)から回答を得る事ができました。(避難先・佐賀県:17市町、福岡県:16市町、長崎県:6市町)。 ※アンケート結果詳細はコチラ

 

質問は「コロナ禍等での感染症対策を実施した場合」について4つです。①避難所のマッチングはできているのか?②避難所は足りているのか?③濃厚接触者の別室は確保しているのか?④避難者受入のマニュアルは策定しているのか?等です。

①のマッチングについて「神埼市」はできていないと回答。また②の避難所は「足りている」が22市町、「足りない」が13市町です。うち佐賀県は「足りている」が4市町(25%)に止まっています。神埼市は回答欄に「その他」とした理由を「実際に何名が避難してくるかで避難所の対応が変ってくるため」としています。また、基山町は「避難者(3500人)を一定の間隔を開け滞在すると仮定すると、町の避難所全て使用しても困難と考えられ、町営住宅の空き家や民間施設などの活用等状況に応じた対応が必要」と問題点を述べています。そして、約5万人弱を受入れる佐賀市(人口230,334人/2021.12末)は、意見欄に「大規模災害が起こり、佐賀市で被害が発生した場合には、原子力災害による避難者の受け入れは出来ない。その点を踏まえた広域避難について国、県に検討していただきたい」と要望事項を述べています。原子力災害避難計画は未だに整っていません。

 

アンケート調査は2014年4月にも実施し、佐賀県の避難元3市町と受入自治体17市町の全県下を訪問し要請行動をしました。全自治体から回答を頂き、伊万里市の避難先である太良町は私たちとの面談で、町の人口(9550人、住民基本台帳)の81%(避難者数7774人)を受け入れると知り、担当者は「桁が1つ違っていませんか?」と事実を知って驚いていました。佐賀県や伊万里市との具体的な話し合いがされず、机上の空論で計画がつくられてきたのを目の当たりにしました。その後も、太良町の受け入れ人数はほとんど変わっていません。

政府は玄海の避難計画を「合理的」として了承(2016年12月9日)しましたが、実際現場で仕事に当たる自治体の声が組み込まれているとは思えません。

 

昨年、唐津市(30キロ圏)とその受入12市町でつくる「唐津市原子力災害時広域避難対策協議会」(2021年4月26日)で、避難先自治体から「最大の避難者数を出して欲しい」と要望が出されました。私たちはこの件について佐賀県へ要請・質問書を提出しました(2022年2月15日提出/同年3月17日県より回答)。佐賀県の回答は「原子力災害の状況はその時々で変化するものであり、最悪の想定を示すことは困難です」と無責任なものでした。ささやかなくらしを犠牲にし、被ばく前提の原子力避難計画なのです。最悪を想定できない原発は止めるべきです。「想定もせず、実効性もない避難計画」では、住民の命は守られません。

 

私たちが、九州電力と佐賀県にそのことを何度質問しても、原発災害時のリスクを本当に避けようとする誠意ある説明はありませんでした。

国民のせめてもの権利として「命とくらしを守るための訴え」です。

裁判官のみなさま、どうぞ私たちのこの訴えを裁判で受け止めて頂き、「未来」を守ってください。


◆報道