【「子どもが健やかに生きていけるために」2/8控訴審口頭弁論報告】

2月8日、福岡高裁(久留島群一裁判長)にて、玄海原発控訴審口頭弁論(全基差止第6回と行政訴訟第5回)が開かれました。

門前集会では各地から集った仲間たちが、それぞれ心に響くアピールをしました。

法廷では、国が基準地震動に関する準備書面を提出。

控訴人側からは、江口美知子・本会副事務局長が意見陳述を行いました。

 

報告集会で江口副事務局長は、裁判運動を続けてこられた原動力は「怒り」だけでなく、「仲間」、「一緒に行動してきた人たちの言葉」だとして、「がんばらないけど、あきらめない」という仲間の松原学さんの言葉を紹介しました。「皆さんがおられたからこれまでやってこられたんだなーって、再度思うことができて、すごく嬉しい。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と述べました。

集会では、玄海の避難訓練の監視報告や、美浜の会の小山さんからMOX燃料や六ケ所再処理等の問題についての報告をいただきました。

 

2010年2月21日は、裁判を決意し運動をスタートした日(決起集会)です。2月で14年目に入ります。

長い年月の裁判闘争になりましたが、みんなで少しずつ力を合わせて、諦めないでいこうね、と声かけながらやってきたことの結果にほかなりません。

そして、裁判傍聴したくてもできない支援者の方々が全国に大勢おられます。

みなさんのお陰で今日まで裁判運動を続けてくることができました。

横断幕の「命の事だから 諦める訳にはいきません」「犠牲の上にしか成立たない原発はいりません」の言葉は私たちの運動の大事な基です。

 

次回以降も傍聴・注目をよろしくお願いいたします。

◆今後の口頭弁論

 2023年 5月31日(水)14:30~第6回行政弁論

             15:00~第7回全基弁論

 2023年10月4日(水)14:30~ 

 2024年1月17日(水)14:30~


◆裁判書面(行政)

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20230201玄海行訴被控訴人準2.pdf
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20230208控訴審陳述書江口美知子●.pdf
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陳 述 書

2023年2月8日

佐賀市川副町

江口美知子

 

本日は陳述の機会をいただきありがとうございます。

 

私はこの裁判の会の立ち上げメンバーの一人で、原発のない世の中を目指しています。

2、30代の頃の私は海外への好奇心しかなく、社会の事など考えてもいませんでした。そんな私に一人の友人が原発問題を話してくれました。私は何も考えられず「事故が起こったら外国に逃げるからいい」と安易に答えました。「あなたみたいな人がいるから日本はだめになるのよ」と怒られました。その言葉は社会に目を向けるきっかけになりました。1986年チョルノービリ原発事故当時、私は初めての息子の母乳育児中でした。息子が被ばくしないか、とても不安でした。そんな経験からどこの原発が事故になっても、私たちの生活は原発から出る放射性物質で簡単に壊されてしまう、と知りました。その後、生協運動、図書館運動、不登校の居場所の運営などに関わり、子どもが健やかに生きていける為の大人の責任を意識するようになったのだと思います。

そして2011年3月11日の福島原発事故が起こってしまいました。

取り返しのつかない災禍を起こす原発は、私たちの生きている間に廃炉にし、跡形もなく片付ける事は出来ない事が分かっています。せめて原発運転停止、廃炉に続く道を作っておかなければ子ども達に申し訳が立たない気持ちで活動を続けています。

 

2021年水戸地裁は避難計画の実行性がないとして原子力発電所の運転を認めない判決を下しました。2022年12月1日福井県原発7基差止訴訟で、米原市長平尾道雄氏は「避難計画の策定は困難」「避難計画の実行性は、住民を被ばくさせないで避難させることだ」と、住民の命、健康を護る事を考えての証言がありました。片や、佐賀県民を護るはずの山口祥義佐賀県知事は原子力災害避難計画の「県としての最悪のシミュレーション」についてどう考えるかの私たちの質問に、「具体的な想定はありません」と回答しました。最悪の想定もしないままに、原発の稼働を容認しているのです。佐賀県発行の「原子力防災のてびき」では原発30キロ圏内(UPZ)の住民はまずは屋内退避せよ、とあります。屋内退避しても、放射性物質を完全に遮断できないと「てびき」にも書いてあるのにです。避難計画に実行性がなく被ばくありきで、まして具体的な避難計画が考えられないなら、少なくとも実行性のある本当に住民のための避難計画ができるまで原発は止めなければいけないと考えるのが安全優先の考えなのではないでしょうか。

 

原発の安全性を求める規制目標についても、福島事故時のセシウム137の放出量10000Tbqのたった100分の1の100Tbqが規制委員会審査基準目標値なのです。規制委員長は「審査はしますが、安全だとは絶対に申し上げません」とも公言しています。九州電力は「万が一の事故でも放射性物質の放出量は4.5Tbq/1基である」と説明しましたが、4.5Tbqは覚悟してくださいと言っているのです。その対策の一つが格納容器が損傷し放射性物質が外部に漏れたら「放水砲で打ち落とし」、海に流れ出た汚染水は「シルトフェンス(水中カーテン)」で拡散を防ぐというもので、規制委員会が許可した対策は、愚策としか思えません。

納得のできない原発運転に対して、私たち裁判の会は要請、抗議などをしてきました。不安が解消される回答はありません。

 

私たちは住み慣れた家から逃げたくありません。被ばくしたくありません。子どもたちに微量な被ばくもさせたくありません。この当たり前の望みは間違っていますか?原発は止めることができます。法律の存在意義は、私たち国民の生命、身体、財産を護ることだと思います。司法は今の、また将来世代の生命、生活、人生にも想いを馳せ、子どもたちの目をしっかり見て、判決を出してください。よろしくお願いいたします。


◆報道