【“今日死ぬかもしれない覚悟で毎晩就寝...”聴覚障害者が訴え~7/3控訴審報告】

◆10/2、上岡直見さん尋問決定!

7月3日、福岡高裁(久留島群一裁判長)にて、玄海原発控訴審口頭弁論(全基差止第11回と行政訴訟第10回)が開かれました。

福岡市は梅雨の晴れ間の厳しい暑さとなりました。

今回も大阪の弁護団と補佐人の小山英之さん(「美浜の会」代表)をはじめ、九州は鹿児島、熊本、大分、佐賀、福岡、遠くは神奈川から、原告や支援者の皆さんが集まりました。

 

法廷では、「さがUDトークサークル」代表の古賀道子さんが意見陳述をされました。古賀さんは人工内耳を装用されており、UDトークを活用しながら、共生社会の実現を目指して活動されています。(UDトークとは音声を即座に文字化するスマホアプリです。)薬害難聴になられた幼少期のことや当時の暮らしを振り返りながら、現在の「不安と紙一重の生活」と根底にある原発の問題について話されました。

就寝時、古賀さんは人工内耳を外すので音が聞こえません。そのような時に原発事故が起きたら逃げ遅れます。「今日死ぬかもしれないことを覚悟で毎晩就寝しています」との言葉は大変重く、はっとさせられました。身体が不自由で歩けない方なども逃げ遅れる可能性があり、共生と次世代への責任という視点から、脱原発を訴えられました。

また、弁護団からは、原発の基準地震動に関して、入倉・三宅式では過小評価になること。国は正面から反論していないこと。「ばらつき」を考慮する必要があり、「不確かさ」の考慮では不十分であることなどがあらためて主張されました。

全基差止訴訟では、こちらが申請していた上岡直見さんの本人尋問が行われることになりました。避難計画の実効性のなさが立証される予定で、勝訴への大きな一歩になると確信しています。

 

福岡県弁護士会館での報告集会は、石丸初美原告団長から古賀さんへのお礼の言葉で始まりました。

「古賀さん、今日は本当に有難うございました。私達(健聴者)には分からない、分かったつもりで分からないことがいっぱいあるんだなーと思いました。意見陳述を書いていただいたときに面談して、ゆっくりお話を聴かせてもらいました。知らないことだらけの人生なので、やっぱり人の話を聴くってことが大事だなーと思っております。」

 

石丸団長からは、玄海町「核のごみ」文献調査に関する詳細な報告もありました。玄海町での文献調査は、町内3団体による請願を契機とするものでした。しかし、3つの請願は最終処分場の誘致を要請するものではなく、文献調査によって地質の安全性や原発の耐震性を確認することに主眼が置かれていました。そもそも文献調査の目的は「放射性廃棄物の最終処分の検討」であるにもかかわらず、玄海町では原発の安全確認にすりかえられていたのです。しかし、この点はマスコミに取り上げられることもなく、報道されませんでした。

また、議会での実質審議はわずか2日間。審議は尽くされず、民意が全く反映されませんでした。玄海町民への電話アンケート(4/28~5/1実施)では111名が回答。次の結果が得られました。

・「住民に知らされていない」80%、「わからない」19%

・最終処分場に「反対」70.9%、「わからない」25.6%、「賛成」3.4%

住民に知らされないまま、重大なことが簡単に決められる実態が浮かび上がりました。

なお、佐賀県知事は文献調査受け入れ反対の意思を示していますが、前言を翻してオスプレイを受け入れた前例があり、決して安心できません。今年も12月2日「反プルサーマルの日」に、玄海町の皆さんに働きかけていくことが提起されました。

 

その後は活発な意見交換となりました。一部ご紹介します。

・地方自治法「改正」により国の指示権が強まり、国と自治体との関係が対等でなくなる。これは、文献調査や最終処分場選定、「特定利用空港・港湾」指定や日米安保にも関わる重大事。国が一方的に決めるやり方には、私達の「人権」を基礎に反対していく必要がある。

・国の言う「有事」や「国防」という視点で考えても、佐世保基地に近く、中国や朝鮮からも近い玄海町に最終処分場をつくるという選択はあり得ない。防衛大臣なら「そんな所につくるのはやめてくれ」という話。国の政策は破綻している。

・最終処分場をつくる気もないのに文献調査を受け入れるだけで20億円というのは、詐欺ではないか。一般的な感覚からすれば、紛れもない詐欺。法的に追及できないか。

・被曝の健康影響に関して、これまで100mSV以下は影響ないとされてきたが、昨年発表されたインワークス(INWORKS:国際核施設労働者調査)は、50mSV以下でもがんのリスクが上昇することを示している。この調査は米英仏3か国の原発労働者約30万人を対象とし、70年余にわたるデータを解析したもので、これ以上詳しい調査はない。従来の100mSV基準が崩れたら、避難計画も根底から崩れる。この情報を広く共有する必要がある。

・糸島市では7月に市民主催で、糸島市避難計画や玄海町文献調査に関する学習会、そして、糸島市長への質問書の提出も検討している。

 

なお、この日(7月3日)、最高裁判所が旧優生保護法を違憲とする画期的な判決を出しました。福岡県弁護士会館の大ホールが報告集会Zoom会場となっており、そちらにも多くの方が集まり、喜びを分かち合っておられました。

「命の事だから諦める訳にはいきません!玄海原発廃炉まで!」―私達の横断幕に書かれている言葉です。旧優生保護法裁判や門前集会で一緒だった「いのちのとりで裁判」(生活保護基準引き下げ違憲訴訟)も、「命の事」という点では共通しています。どれも重要な課題であり、学ばせていただくことが沢山あります。

団長の言われる通り、「知らないことだらけの人生」です。出会いと学びの機会に感謝しながら、多くの人達と共に歩んでいけたらと思います。諦めることなく!(O)


◆裁判書面(行政)

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20240701行政控訴人準備書面6.pdf
PDFファイル 428.3 KB

◆裁判書面(全基)

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20240626全基被控訴人証拠申出に対する意見書.pdf
PDFファイル 215.2 KB

◆控訴人意見陳述

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20240703意見陳述行政古賀道子●.pdf
PDFファイル 607.5 KB

陳 述 書

2024年7月3日

佐賀市

古賀道子

 

 私は佐賀で生まれ育ち、ずっと佐賀市に住んでいる古賀道子と言います。

 戦後の結核が流行っている頃、兄が小児結核に罹り亡くなり、私はそれがきっかけで予防注射を打ったところ、薬害難聴になりました。父の勧めで普通校へ通い、補聴器、読唇、口話で暮らしてきました。

 20年近く前から人工内耳を装用していますが人工内耳を外したら全く聞こえない聾です。

 2018年に難聴者がスマホのアプリである音声認識を文字幕表示するUDトークを使ってコミュニケーションができるようにと、「さがUDトークサークル」を立ち上げました。

 

 私がプルサーマル原発に関心を持ち、プルサーマル裁判で原告になったのは、子供達や孫達に将来、安心安全な暮らしを送ってほしいと思ったからです。

 まだ子育てにかかりっきりの50年位前玄海原発ができて、当時は安全で安価な電気エネルギーとして大々的に広まっていました。絶対事故も起きない、という触れ込みで当時は安心しきっていました。

 ところが東日本大震災で世界最悪レベルの福島原発の爆発によって原発は大変危険なものとして知れ渡りました。それまで安全だと思っていただけに国や電力会社に騙されたんだと思いました。周辺地域の森林、田畑、住宅などに放射能が拡散し、直接的な影響を及ぼしたことで日本中が大騒ぎしたことは強く記憶に刻まれています。

 

 仮に地震だけなら、長期の避難などせずに済んだはずです。原発周辺に放射能が拡散した後、安心して日々の暮らしを営んでいた方が土地に住めなくなり多くの住民たちが家や田畑を失い、海産物も汚染されてしまいました。風評被害で生活の糧を無くし、県外に避難したまま戻ってこない方、人生を翻弄された方は沢山います。

 福島原発が爆発した当時から、私は「こんなに危険な原発は国がもう今後は絶対動かさない」と信じきっていました。ところがいつの間にか原発は稼働されてしまい、とても驚きました。あれほどの被害がありながら稼働させること自体、国や電力会社が信じられなくなりました。「事故の発生を常に想定し再稼働云々」などと万が一の事故を前提とした対策云々の再稼働なんてありえません。だったら原発を稼働しなければいいのです。

 

 私が小さい頃65年以上前は、よく停電していました。それも当たり前で不自由とも思っていませんでした。懐中電灯やろうそくで家族が集まって電気が復旧するのを待っていました。もちろん原発もありませんでした。ちょっと不自由だけど台風や地震などの天災を除けば不安も全くない日々を送っていました。原発事故が起きることやそれによって放射能を拡散したり、白血病が増えたりするよりずっと安心、安全な生活を過ごしていたと今は思えるようになりました。

 時代も変わり、電化製品を使うことも多くなり日本中が贅沢になりました。でも現在は、もしかしたらいつか原発事故が起きるかもしれない、という不安と紙一重の生活です。便利さと引き換えに原発稼働で放射能を拡散し続けている現在がよほど怖いです。

 

 原発の運転時には必ずトリチウムが外部に放出されており、内部被曝が問題となっています。原発近くの住民は白血病が多発していると言われていますが、情報が開示されず、住民には根拠を示すことが困難です。

 現在でも原発が稼働されている間、核のゴミはたまり続けていることが不安でたまりません。核のゴミを生活圏から隔離し続ける期間は気の遠くなるような10万年以上かかるといわれます。未来の子供たちにあまりにも多大な負担を残し続ける原発は即刻止めるべきです。

 

 私が気になるのは私と同じく聴覚障害者が聞こえなくて万一の時に逃げ遅れることです。

 に東日本大震災で障害者の中でも聴覚障害者で亡くなった方の被害が他の障害者の二倍と言われています。歩ける、動けるけど、緊急を知る方法がないと逃げられません。特に一人暮らしの聴覚障害者は家の外の緊急マイクも聞き取れない、TV等付けていなかったら被害を知る術がないので逃げられません。私自身は人工内耳を外して就寝するので全ての音が聞こえません。消防車やパトカーの音も聞こえない私は逃げ遅れる、今日死ぬかもしれないことを覚悟で毎晩就寝しています。幸い隣の家の方に佐賀市に緊急支援者として登録してもらっているので万一の時は窓ガラスを破っても可、と約束しています。

 玄海原発の近くに住んでおられる聴覚障害者の方もこのような連携の確認が必要ではないでしょうか?これは聴覚障害者に限らず体の不自由な歩けない方も日頃の繋がりが必要なことは言うまでもありません。このような不安な日常を減らすためにも原発を止めるべきです。

 そんなに大事な必要な原発なら沢山電気を消費する大都会に原発を作っていたらよかったのです。

 

 何故、国が原発を進めるのか?ということは火力発電で二酸化炭素の排出量が増え地球温暖化が促進されるため、火力発電を減らさないといけないと国は言っていますが、原発に頼らず、太陽熱や水力発電や風力発電など再生可能エネルギーを生かしてください。

 

 将来、子供や孫たちが安心して暮らせる社会になっていてほしい、それが一番の願いです。